オリーブの木々の側で
『エイレーネ、どうやら悪を消し去ることが出来なかったようですね…。仕方がありません、こうなってしまった以上彼等の進行を何としてでも食い止めねばなりません。私の力を受け継ぐ者よ、この先いくつもの試練がアナタを待ち受けているでしょう。ですが、そんな困難を乗り越えられたアナタならばきっと…。信じています…』
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冬の寒さが増し雪でも舞いそうな年の暮れ、2人はオリーブの木々達の側で、澄んだ夜空に光り輝く美しい星空を見上げていました。
「今年もあと数日で終わるわね」
「そうだな。無事に収穫も終わったし、来年もたくさん実がなるといいな」
「えぇそうね。あっ、そうだわ!」
「んっ?どうした?」
「来年もたくさん実が取れるように、この子の名前、オリっ…」
「どうかしたかい?」
「痛い…」
「えっ?」
「産まれる…」
「はっ?えっ?」
「家の中に…、連れって…、早く…!」
「あっ…、……はい!!」
「マルクス!!」
「どうしたの?父さん」
「母さんが産気づいた!街に行って医者を呼んできてくれ!」
「えっ…、はい!」
「家についたぞ、さぁベッドに横になるんだ」
「ありがとう…」
「かあさん…」
「ミスティお前は母さんの側についててやれ。私は湯を沸かしてタオルを用意してくるから」
「うん分かった。かあさん頑張って…、そばにいるよ」
「ミスティ…、ありがとう…」
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「は〜い皆んな!お話の途中だけど私は天使のエルリアだよ。女神様のお使いで、このお話のカギカッコの会話以外の部分は私がアナタに直接語りかけるよ。とっても可愛い女の子の声だって想像して読んでね。あっ、でも読む時はちゃんと真面目に語りかけるから、会話の時とはテンションが違くなるよ、ごめんね。ちゃんとしないと女神様に怒られちゃう。それから私はもうちょっと後からの登場になるから、私の存在はまだ口外しちゃダメだよ。よろしくね☆それでは第三部のはじまり〜、はじまり〜」
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アルテミアとハディシスのいる星、ルチアから数百光年離れた場所にある星『ノエル』にある女の子が誕生しました。
女の子が産まれた場所はアダマス王国という豊かな国、その中の郊外にある小さな街『キズア』でした。
そしてキズアの街外れには大きなオリーブ農園があり、その農園を営むロートサンという一家がありました。
女の子はその家族の3番目の子として生まれ名を『オリビア』と名付けられました。
その後さらに2人産まれたので5人の兄弟姉妹になります。
家族構成はまず7つ年上の兄マルクス、次に3つ年上の姉ミスティ、そしてオリビア、次に2つ年下の弟コディ、さらに5つ年下に妹ジゼル。
父スティーヴ、母カイラも合わせ7人の大家族です。
そうオリビアはごく一般家庭の普通の庶民でした。
と言っても、オリビアの家族はオリーブ農園でそれなりに収入を得ていたので、家の中はかなり潤っていました。
なので街の中では裕福な家庭だったのです。
しかしオリビアが生まれた頃、アダマス王国は隣国イグナシオ王国に攻められ、戦争状態でした。
このごく一般の庶民として生まれたオリビアはこの後、戦乱の中へと翻弄されてゆくのです…
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アダマス王国はかつて世界でも有数な、宝石の一大産出国でした。
たくさんの様々な宝石や天然石が採れ、その中でも特に上質な天然ダイヤモンドの採掘がされると世界的に有名になりました。
国内はもちろん海外からも宝石を買い求める人が後を絶たず、国はとても豊かになっていきました。
それを機にアダマス王国の王サルテは我が国は偉大だと調子にのり、即位してすぐに少しずつ隣国へ攻め入り領土を広げていったのです。
ですが宝石を買う人が多くなると、今度は採掘や加工を施す労働者に負担がかかります。
加えて領土を拡張するための兵を出したりと、徐々に至るところで人手が足りなくなっていきました。
国民たちは沸々と国への不満をつのらせていき、鉱脈を掘りつくし宝石の採掘量が減ってきた事も重なった事で、とうとう国内で紛争が起こりました。
そしてそれを知った隣国イグナシオ王国は、この機会にとアダマス王国へと攻めてきたのです。
首都やオリビアの住む街キズアは国の中心にあったので、被害は今の所はありませんでしたが、ゆっくりと国は衰退していきました。
そんな戦乱の最中、紛争へと翻弄されてゆく人がもう一人王族に産まれました。名を『ブライアン』。
彼はオリビアの運命を大きく変える人物となるのですが、それはまだ先の話…
ブライアンはアダマス王国を治めるカルボディア家、サルテ王の第3王子としてこの世に生を受けました。
オリビアと同じように彼も5人兄弟の真ん中で、兄弟は皆男だらけでした。
そして第3王子と言う事で王位の座も薄い事から物心がついた頃、城の家族から離され1人ビジュヘレ大聖堂へと預けられました。
そこでは王族と言う事で特別な待遇を受けていましたが、自身を腫れ物に触れるような扱いをする大人だらけの教徒達に、ブライアンは疎外感を抱きながら生活していました。
ブライアンが大聖堂へと預けられた背景には戦争が関係していました。
イグナシオ軍はますますアダマス王国へと進行を進め、それを焦ったサルテ王が『神への貢ぎ』とし我が子を要は差し出したのです。
大聖堂の教徒達も急に小さな子供の王子を預けられた事でとても戸惑い、どうしたらいいのかと扱い方にひどく困っていました。
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そして話をオリビアの方へと戻します。
オリビアは5歳になり、弟のコディと妹ジゼルの面倒を忙しい母に代わりよく見ていました。
「オリビア、いつも2人の世話をしてくれてありがとうね」
「それはいいのよ、母さんは農園の方の手伝いもあるし」
「オリビアは本当にいい子ね。だけど大変な時はすぐに言うのよ?」
「大丈夫よ。2人共すごく可愛いし」
「無理はしないでねオリビア、本当にいつもありがとう」
「うん!」
家のお手伝いを進んでやる、そんなとてもいい子のオリビアには1つだけ、奇妙なことがありました。
「うふふ、そんなことしたらくすぐったいわ。えっ?明日は雨が降るの?分かったわ、教えてくれてありがとう」
オリビアは何故か誰もいない所を見ながら、いつも独り言を言うのです。
「母さん、明日は雨が降るって。洗濯物には気を付けた方がいいわ」
「そう…、でもどうしてそんなことが分かるの?オリビア」
「精霊さんが教えてくれたの」
「精霊?精霊が見えるの?」
「うん!いつも側に沢山いるの」
そしてオリビアが言ったことは必ず現実となり当たるのです。
「雨降ってきたわ。昨日オリビアが言った通りになったわ…」
「また当たったのか?オリビアの話」
翌日オリビアの両親は農園で作業をしていました。すると昨日オリビアの言っていた通り雨が降ってきたのです。
カイラはすぐ側で作業をしていたスティーヴに話かけました。
「えぇ、そうなのよスティーヴ。他にも精霊がたくさん見えるとか言うのよ」
「そうか。この間は俺が怪我するって言ってたんだが、怪我の場所まで言い当てたぞ」
「あの子このままでいいのかしら…」
「どう言う意味だ?」
「精霊がたくさん周りに見えるとか何かを言い当てるだとか、そんなのまるで聖人様…、いいえ聖女様みたいだわ」
「……あの子を教会にでもやるって言うのか?」
「そんな事したくないわ…、娘を手放すなんて絶対に嫌よ」
「俺だって嫌だ。なら、このまま黙っておこう。なっ、カイラ?それでいいだろ?」
「えぇもちろんよ。このままここで皆で幸せに暮らしましょ、スティーヴ」
「あぁ、オリビアはちょっと変わってるだけだ。決して聖女様じゃない」




