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えっ、私がこの世界を守るの?  作者: 藤崎七奈
第一部 【愛と平和】
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エルフの里

次の日オリーブは、まるで大きなホワイトライオンのように成長した雷樺の背中に跨って乗り、さっそくエルフの里を目指しました。


「雷樺とっても早いわ!」

「怖い?」

「いいえ全然平気よ。ありがとう」


雷樺は風を切って走り、時々自身の背に乗る大好きなオリーブを気遣い話しけました。


そしてオリーブもそんな雷樺の気遣いに気付き、ありがとうと背中を撫でました。


エルフの里までの道案内は森を知り尽くしている、森の精霊女王フォーレです。


エルフの里はヘイデン王都から南西に行きニール森林の奥深くにありました。


エルフは人間との交流を断ち、いわゆる鎖国状態です。


雷樺の背に乗ったオリーブは森の奥深くへと、あっという間にたどり着きエルフの里へとやって来ました。


「ここがエルフの里よ」

「ありがとうフォーレ。本当に森の中なのね」


雷樺はオリーブが降りやすいようにしゃがみ、オリーブは雷樺の背中から降りました。


「結構近いのね、雷樺ありがとう。小さくなっててね」

「分かった」


雷樺は猫の姿になりオリーブの横に着きました。

オリーブはエルフの里の入口、大きな門の前に立つと叫びました。


「こんにちは〜〜!!誰かいますか〜〜??返事して〜〜!!ここ開けて〜〜!!」


その頃エルフの里の中では大騒ぎになっていました。


「長老大変です!人間の子供が来ています!」

「人間の子供?そんなの追い返せばいいじゃろ」


エルフの長老、里の首長を務める『ヘデラ』は家へ慌てた様子で駆け込んできた同胞の話を、適当に受け流して聞いていました。


「それが見た目はただの人間の子供なのですが魔力が物凄いのです!そしてどうやら精霊獣を連れています!」

「精霊獣を連れた魔力が凄い人間の子供じゃと?」

「そうです!」

「お主は何を言っておるのじゃ?そんな人間の子供がいるわけないじゃろ」

「それがいるんです!門の所で開けろと騒いでいます!」

「だいたい人間の子供がこんな森の奥へ来れるわけないじゃろ、それはお主の見間違いじゃ」

「見間違いでございません!」

「はぁ…、よかろう。ここへ連れて来るのじゃ」

「いいのですか?」

「お主の言う事が本当なら、そのままにしておけないじゃろ」

「分かりました」


ヘデラの言葉を聞いたエルフの同胞は、急ぎオリーブのいる門へと急ぎました。


そしてしばらくしてから大きな門の扉が開き、オリーブは中へと通されました。


まだ幼い人間の子供と白い猫は、エルフの里の長老の下へと案内されました。


その道すがらオリーブを見たエルフ達は、驚き怯えた表情をしている者が何人もいました。


『そんなに人間の子供が珍しいのかしら?』


オリーブは不思議に思いながらも、特に気にもせず長老の下へ向かいました。


家へ連れて来られたオリーブを見てエルフの首長ヘデラはオリーブを見た途端、驚きひっくり返りそうになり同胞の話が嘘ではなかったのだと思いましたが、平然を装ってオリーブに話しかけました。


「よく来た、人間の子よ。さぁそこへ掛けるのじゃ」


オリーブはヘデラに言われた通りに椅子に座り、猫の雷樺はオリーブの足元にちょこんと座りました。


そしてオリーブはさっそく目の前の長老に話しかけました。


「こんにちは!あなたが長老さん?」

「そうじゃ、わしがエルフの首長ヘデラじゃ」

「私はオリーブ。今日はお願いがあってきたの」

「お願いじゃと?」

「うん!ここで戦い方を教えてほしいの!」

「戦い方?」


急なオリーブの申し出に、ヘデラは首を傾げて聞いていました。


「母様がね、エルフはとっても強いって言ってたの」

「ほう、お主の母がか?」

「そう!でね、父様に時々剣術は教わってるんだけど、お仕事が忙しくっていつもは教えてくれないの」

「だからここで教えてほしいと?」

「うん!」

「そうか、話は分かった。じゃがエルフはずいぶんと人間と関わりをしてない、何故お主の母はエルフは強いと言ったのじゃ?」

「あっそれはね、母様のずっとずっと前の母様がエルフだったって言ってたからだと思う」

「ほう、お主の母が…」

「ダメ?」


ヘデラはオリーブの話を聞き一瞬考える素振りを見せましたが、すぐにまた話し出しました。


「ところで戦い方と言っているが、何を教えてほしいのじゃ?」

「剣を教えてほしいの」

「剣だけでよいのか?」

「うん剣だけでいい。魔法はフォーレが教えてくれるから」

「そうか、そっちは教えてくれる者がおるのじゃな。ではまず、お主の剣の腕を見よう。それから決めようかの」

「分かった!」


そう言って2人は長老の家から外の通路に出てきました。


するとヘデラは部屋の隅でずっと2人の様子を黙ったまま伺っていた『ロニセラ』と言う孫に話し掛けました。


「わしの孫ロニセラと戦うのじゃ、練習用の剣を貸してやるのじゃ」

「はっ?何で俺がこんなチビと…」

「いいから、やるのじゃ」

「分かったよ…、たくっ、ほらよ」


文句を言いながらもロニセラはオリーブに練習用の剣を取り出し渡すと、自分は短剣を取り出しました。


「お互い魔法は禁止じゃ。では、初め!」


ヘデラの合図とともに剣のぶつかり合う音が響き渡りました。

ヘデラはオリーブを見ながら思っていました。


『あの膨大な魔力は一体なんなのじゃ。魔法属性は地と風か、母の祖先がエルフと言っとったな。確かにエルフの魔法属性は地じゃ。じゃが人間にも属性が地を持つものはおる、一概にエルフとは言えないか。

もう1つの属性は風、ということはヘイデン王国からきたのじゃな。あの身なりどこぞのボンボンの娘だとは思ったが、あの剣の型、あれは確かヘイデン王家に伝わる型じゃ。

そういえばヘイデンの城に潜入させている者から王族に女の子供が1人おるとあったな、あやつのことか』


「そこまで!どうやら引き分けのようじゃな」


ヘデラは2人の戦闘を止め、ロニセラとオリーブは互いに相手が強いと心の中で思っていました。


『このチビ強すぎだろ…、何なんだコイツ…、本当に子供か?』

『この人、短剣なのに凄く強い!何であんなに動けるの!教えてほしい!』

『うっ、すっげぇキラキラした目でこっちを見てる…』


そして戦い終わったオリーブにヘデラが話しかけました。


「オリーブお主、精霊に好かれておるようじゃな」

「えっ?分かるの?」

「お主から精霊の気配を感じる。お主の強さは精霊の身体強化のおかげのようじゃ」

「そんなの反則じゃねーか!」


それを聞いたロニセラは興奮したように声を荒げました。


「いいや、ワシは魔法は禁止と言ったが精霊の力を禁止とは言っておらん。それに精霊は自らオリーブに力を貸しておるようじゃ」

「ちっ」

「そうなんだ!じゃあきっとそれはフォーレのおかげね」

「フォーレ?先程も魔法はフォーレとやらに教わっとると言っとったが?」

「うん!森の精霊女王フォーレだよ」

「森の精霊女王がおるのか?」

「うん、いるよ!」


それを聞いたヘデラは、驚きのあまり言葉が出なくなってしまいました。


「んなわけ、ねーだろ!」


すると突然ロニセラがオリーブに怒って言いました。


「本当だもん!」

「こんなチビな人間なんかに森の精霊様がつくわけねーだろ!」

「いるもん!」

「じゃあ見せてみろよ!」

「分かった!」


オリーブはロニセラに精霊女王はいないと言われムキになり目を閉じ「精霊よ…」と唱えました。


すると地面からオリーブを優しく包み込むように数本のツタが生え、小さな花が咲きほこりました。


「これは緑の魔法…、なのか…?」

「そう。緑の魔法だよ」


ヘデラはオリーブの魔法を見ながら、昔父に言われた事を思い出していました。



__________________



「ヘデラよく聞くんだ」

「なぁに、父さん?」

「この森は昔はただの砂漠だったんだ」

「砂漠って?」

「木や花や緑が何もない、ただの砂の大地のことだよ」

「えっ?砂だけ?」

「そうだ、砂だけだったんだ」

「じゃあ、どうして今は木が沢山あるの?」

「それはここに最初に住んだエルフが、木を植えたからだよ」

「木を植えたの?1人で?」

「そうさ、1人で植えたんだ」

「1人でどうやってたくさん植えたの?」

「それはな、緑の魔法を使ったからさ」

「緑の魔法ってな~に?」

「緑の魔法は木や花を使う魔法だよ」

「じゃあその魔法で木をたくさん植えたの?」

「そうだ、そしてこの森が出来たんだ」

「へ〜!」

「そしてこの森のどこかに森の精霊女王フォーレ様がいると言われている」

「森の精霊女王?」

「あぁフォーレ様だ、この森を見守っていらっしゃるんだ」

「見たことあるの?」

「いや、見たことはない」

「えぇ〜、ないの〜?」

「ないな。だが蔦の花の中にいると言われているぞ」

「蔦の花の中?」

「そうだ、蔦だ」

「僕探す!蔦の花たくさん探す!」

「あぁ、見つかったら父さんにも見せてくれよ」

「うん!」



__________________



「オリーブ、お主の話を信じよう」

「爺ちゃん!何言ってんだ!」


オリーブの魔法を目の前で見たヘデラはオリーブの話を信じると言いました。


「ロニセラは黙るのじゃ。オリーブお主の実力は分かった。戦い方を教えてやろう」

「ホントに?やったー!」

「じゃが1つ条件がある」

「条件?」

「ちゃんと親に言うことじゃ」

「親?」

「お主、親に言わずにここへ来たのではないか?」

「えっ、うん…」

「やはりな。エルフの里に行くと言われ行ってよいと言う親は、恐らくおらんからの」


ヘデラはオリーブが誰にも言わずにエルフの里へ来たと見抜いていました。


「親にちゃんと言えば、また来てもいいの?」

「あぁ、よいぞ」

「分かった!」

「それから、お主のその膨大な魔力をしまうのじゃ」

「魔力をしまう?」


オリーブはヘデラに魔力をしまえと言われ、いったい何の事なのかと首をかしげました。


「お主のその魔力を皆怖がっておる」

「えっ、怖いの?」

「エルフは人間の魔力量が見えるのじゃ、お主のは大きすぎじゃ、そのままだと誰も近寄れん」


オリーブはヘデラの言葉を聞き、ここへ来る時のエルフ達の反応を思い出し、納得しました。


「そうなんだ。でもどうすればいいの?」

「お主なら精霊に頼めば大丈夫じゃ。やってみなさい」

「うん分かった。精霊よ…」


オリーブはヘデラに言われた通り、精霊に頼むため目を閉じ唱え始めました。


「こんな感じ?」

「さすがじゃ、消えておる」

「やったー!出来たー!」


それを側で見ていたロニセラは思っていました。


『こいつ剣だけじゃなく、魔法も凄いのかよ…』


出来たと喜ぶオリーブを見ながら、ヘデラは思い出したようにオリーブに聞きました。


「ところでお主、ここへはどうやって来たのじゃ?さすがのお主も、ここまで1人では来れまい」

「雷樺に連れてきてもらったの」


そう言うと長老の家の玄関の前で、暇そうに寝転がっていた白猫の雷樺をオリーブは抱き上げました。


「それは、精霊獣じゃな」

「そうだよ。名前は雷樺ライカ

「雷属性とは珍しいの」

「お城の中庭で出会ったの」

「お城?やはり王族じゃったか」

「えっ、バレてた?」

「その身なりと剣の型を見ればの」

「やっぱ長老さんは凄いんだね!」


ヘデラはオリーブに褒められ、素直に嬉しそうに微笑みました。


「その精霊獣がお主をここへ連れてきたのか?」

「うん!背中に乗せてもらったの」

「ほう?」


不思議そうな表情のヘデラをよそに、オリーブは雷樺に話しかけました。


「雷樺、元の大きさに戻って」


すると雷樺はオリーブの手から下におりると、元の大きな姿になりました。


「でっか!!!」


ロニセラが大きいな声を張り上げて言いました。

ヘデラも驚きながらオリーブに話しかけました。


「大きいのう…」

「うん、あっという間に大きくなっちゃったの」

「そうじゃオリーブ」

「な~に、長老さん?」


するとヘデラは、1つ気になっていたことをオリーブに聞きました。


「1つ聞きたいのじゃが、お主の母の祖先がエルフと言ったな」

「うん、言ったよ」

「その祖先のエルフの名は分かるか?」

「え~っと確か、『ラリア』って母様言ってた」

「ラリアか…」

「うん!じゃあ私そろそろ帰るね、父様と母様に早く言わなきゃ!」

「おう…、気をつけるのじゃよ」

「うん、またね〜」


オリーブはそういうと雷樺の背中に乗り手を振りながら去って行きました。


ヘデラはオリーブが消えた方向を見ながら、側にいたロニセラに話かけました。


「嵐のような娘じゃ…」

「爺ちゃん、あれってまさか」

「あぁ、あれは白獅子じゃ」

「マジかよ!」

「女神よ凄いものを連れてきたのぅ…」

「女神?何言ってんだ爺ちゃん。つかアイツまた来るようなこと最後言ってたが親に言ったらフツーに反対されんだろ」

「いいや、縁は出来た。またすぐに来るじゃろ」


そして家の中へと入ったヘデラはオリーブの事を考えていました。


『あの地の属性、まさかラリアがもたらしたとは。言われてみればあの笑顔、どことなくラリアに似ていたの。まさかまたその名を聞くとは…』


そう思ったヘデラの目線の先には、庭にある大きく立派なオレンジの木がありました。

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