もしもの世界 ―風Ver.彡―
「皆様お久しぶりでございます、平和を司る女神エイレーネです。また作者様の方から、この物語のナレーションをして欲しいと頼まれてやって参りました。
こうして皆様にまたお会い出来、とても嬉しく思います。今回もアナタの心の中に直接語りかけてまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。
それではさっそく『もしもの世界 ―風Ver.彡―』です。どうぞ!」
(※『彡』これは風の流れを表しています。深い意味は特にないです)
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この物語は、もしもオリーブの依り代が森の精霊女王フォーレではなく、風の精霊王シルフだったらというお話です。
(※ただし結末は変わりませんのであしからず…)
とその前に、まずはこの物語に欠かす事の出来ない存在である『精霊王』の詳細についてから、話を進めていきたいと思います。
この世界に生まれて間もない精霊王はとても小さく、人の目に触れる事はありません。
依り代になった人物や依り代同士でしか、精霊王を見る事は出来ないのです。
森の精霊女王フォーレと、光の精霊女王ミエールはここに当たります。
そして何十万年の時が経ち、人間の子供くらいの大きさとなり実体化出来るようになります。
これは水の精霊女王ウンディーネと、地の精霊女王ノームです。
その後、何百万年の時を過ごし大人の姿となったのが火の精霊王サラマンダーと、風の精霊王シルフです。
では最初にこの世界へ出現した原始の魔法である『火を司る精霊王サラマンダー』、彼はケツァール皇国を守護とし、精霊王の中で最も多い魔力量を保有しています。
彼の性格はとても情熱的でエネルギッシュ、派手好きで目立つ事も大好きな精霊王です。
サラマンダーが出現してから数年後に誕生したのが『風を司る精霊王シルフ』、彼はヘイデン王国を守護とし、サラマンダーに次ぐ魔力量を有しています。
性格は冷静沈着、知識も豊富で1つの事にこだわらない自由な考えの精霊王で、サラマンダーとは違い目立つ事はあまり好みません。
次に生まれたのは『水の精霊女王ウンディーネ』、彼女はシンシア王国を守護し魔力量もそれなりに多い方なのですが、誰も信頼しない性格ゆえ自身の精神世界へどっぷり浸かり、オリーブ以外は何にも興味がありません。
次は『地の精霊女王ノーム』、彼女は登場の機会が少なく皆さんもよく分からない存在かと思います。
ノームはバレーヌ島と言う小さな島を守護し、堅実で真面目な性格をしています。そして大地の豊かさを思わせるように、穏やかでどこか憎めないほっこりするような印象の精霊女王です。
そして次に『森の精霊女王フォーレ』、『光の精霊女王ミエール』と続きます。
この2人の精霊女王は何処かを守護しているというわけではありませんが、フォーレはニール森林を、ミエールはシンシアの王都を見守っています。
魔力量は他の4人に比べれば劣ってしまいますが、その名に相応しく力はかなりあります。
それでは今回なぜ『風Ver.』を語るに至ったか、それは以前サラマンダーがオリーブに言っていた事「どっちが依り代になるかシルフと喧嘩になった」と言う話をしていましたね。
時を遡りサラマンダーとシルフが喧嘩をしていたその時、フォーレがオリーブを依り代にしてしまった物語が前作でした。
ではもしもその時シルフがサラマンダーとの勝負に勝利していたら?
フォーレがオリーブの依り代になってしまうのを未然に防ぎ、シルフが代わりに依り代になっていたら?
物語の舞台は1番最初へと戻ります…
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ここはヘイデン王国、緑豊かな場所で風の精霊王シルフが住むと言われている場所です。
そんなこの国に可愛らしい1人の女の子が誕生しました。名はオリーブ=ゼラファーガ。
オリーブはヘイデン王国の王女としてこの世に生を受けました。
オリーブはすくすくと成長し少しずつですが歩けるようになってきた頃、誰もいない所を見上げながら笑ったり、言葉を発したりする事が増えていき大人達はとても不思議に思っていました。
さらに不思議なことは続き、今度はオリーブの周りを囲むように風が吹くようになりました。
そしてその風はどうやらオリーブ自身が発生させているようです。
ヘイデンは風属性の魔法を使う者が多い国なので、魔法自体は特に珍しい事ではないのですが、まだ幼い子供が自我で訓練もせずしかも無詠唱で発動する事などありえない事です。
ですがオリーブの両親は、いつかその意味が分かるだろうと信じ受け入れました。
オリーブの風魔法は精霊王であるシルフがオリーブを依り代にしたからでした。
彼は実体化も出来る程の実力を兼ね備えていますが、人前に姿を現すことはなく依り代のオリーブにしかその姿は見えません。
そしてオリーブが3歳になる頃、ヘイデン王国の宰相を務めるヒューストンが息子の『カイン』を連れオリーブの父カーティスを訪ねてきました。
この2人は学生の頃から親友でとても仲がいいのです。
オリーブは同い年のカインを見るなり、手を取りお城の中庭へと連れて行きました。
まだ幼い子供2人はどこか大人びていて、そんな2人を中庭に咲いたピンク色のチューリップの花が、優しく見つめるようにユラユラと風になびいていました。
そんなある日オリーブは父カーティスに呼び出され城の中の訓練場にいました。
そしてもう1人、ヘイデン王国の王の息子である『ウィリアム』の姿もありました。
ウィリアムはオリーブよりも3つ年上で、お互い一人っ子ということもあり兄妹のように仲良しです。
ウィリアムは王の仕事で忙しい父ポールに代わり、叔父のカーティスに剣術を教わっていました。
そしてオリーブも加わり一緒に剣術を習うことになったのです。
これをきっかけにオリーブは、自ら精霊王のシルフに頼み魔法を教わることにしました。
庭のオリーブの木の側でオリーブはシルフに言いました。
「シルフ、魔法を教えて?」
「魔法を?いいよ。じゃあまずは、風の流れを感じ取るんだ」
「風の流れ?」
「そうだよ。さっ、目を閉じて。風の流れを読むんだ」
オリーブはシルフに言われた通りに目を閉じると心の中で考えました。
『風の流れ…。私の頬を、優しく撫でる風…』
オリーブは目を開け、手を少しだけ開いて前に出しました。
『指の隙間を、軽々とすり抜けて行く風…』
「風の流れ、何だか分かった気がする!」
「そうだね、オリーブは優秀なようだね」
「本当??」
「あぁ、その今感じたのが風の流れだよ」
こうして剣をウィリアムと一緒にカーティスに教わり、風の魔法をシルフに教わりそんな日々を過ごしていたオリーブが4歳になった頃の事です。
ある日オリーブは城の中庭で土いじりをしていました。
するとどこからか小さな鳴き声が聞こえ、声のする方へ行ってみると可愛らしい白い子猫がいました。
子猫はとても怯え体も汚れていました。
子猫は初めて見たオリーブに驚きすぐに離れて行きましたが、どうやら寂しいのか少し離れた距離からこちらの様子を伺っています。
ですがその後少しずつオリーブに慣れていき、子猫を抱っこしたオリーブは子猫の汚れを落とし、母ナディアの部屋へ連れて行きました。
「まぁ、お空の色のように青く澄んだ、とても綺麗な目だわ」
「毛並みも真っ白で綺麗なんだよ」
その後ナディアは子猫が『精霊獣』という、とても珍しい生き物だと教えてくれました。
自身の部屋へ戻ったオリーブはシルフに話しかけました。
「シルフ、この子は本当に精霊獣なの?」
「そうだよ。白獅子の精霊獣さ。精霊獣の中でもあまりいないんだ」
オリーブは精霊獣に雷樺と名をつけ、あっという間に成長し大きくなった雷樺はオリーブを母の様に慕い、それはまるでホワイトライオンのように成長しました。
そして自在に猫のように小さくなったり身を隠したり出来るようになり、力をどんどんつけていきました。




