ケツァールの闇
その頃、宮殿の食堂では皆でテーブルを囲み食事をとっていました。
「オリーブ、全然来ないわね」
「そうですね、遅いですね」
「確かに、遅いですねオリーブ」
「あぁ、そうだな兄さん」
「精霊王が申し訳ないです」
「あなたの依り代でしょ?依り代が側を離れるなんて聞いたことないわ」
「そうなんですが、彼は魔力もありますから…」
メアリーがサラマンダーの魔力の話をすると、アリシアは側にいたミエールに聞きました。
「そんなに強いの?ミエール」
「強いわ、私とフォーレ2人でも勝てるかどうか…」
「そんなに?!オリーブ脅されて変なことされてないわよね?」
「それは大丈夫よ。オリーブの方が強いわ」
「なら、良かったわ」
「そちらの精霊女王は、とても可愛いですわね」
「まぁ可愛いなんて言われちゃったわ、どうしましょう(照)」
ミエールが可愛いと褒められ照れていたその時、オリーブが食堂へと顔を出し中へと入ってきました。
アリシアはオリーブを見るなりすぐに側へ駆け寄りました。
「オリーブ!どこへ行っていたの?あの精霊王は?」
「自分は食事はいらないって」
「そう、まぁいいわ。さっ、食べましょ?」
アリシアはまた同じ席に座り、オリーブも席につき食事をすることになりました。
アリシアは隣に座ったオリーブにさっそく話かけました。
「何もされなかった?オリーブ」
「えぇ大丈夫、ちょっと肩を寄せられたくらいよ」
「馴れ馴れしいわね、あの精霊王…」
「私の精霊王がとても失礼なことをし、申し訳ありません。オリーブ様」
「いえ、気になさらないで下さい。悪いのはサラマンダーですから」
食事も終わり今日は疲れただろうと言うことで、各自与えられた部屋へと入りました。
外は既にもう真っ暗となっていました。
オリーブはアリシアと一緒の部屋にりました。というかアリシアが部屋に押しかけてきました。
ベッドも一部屋に4つあるので問題はありません。
「それで、本当に大丈夫なの?オリーブ」
「何が?アリシア」
アリシアはオリーブが本当にあの精霊王に何もされていないのか、疑問に思っていました。
「あの精霊王よ!図々しいわ!」
「大丈夫よ。何もされてないわ本当に」
「ならいいけれど。あっ、そうだわオリーブ」
「なぁに?アリシア」
するとアリシアはオリーブに話そうと思っていたことを言い出しました。
「疲れてなかったらでいいんだけど、メアリーの所へ行ってみない?」
「メアリーの所へ?」
「あの子、同い年の子と話したの初めてらしいの。それに友達もいないんですって。だから私達が友達になるわって言ったら凄く喜んだの。だからさっそく話に行ってにない?」
「そうね。ちょうど私も、もっと話してみたいと思っていたの」
「なら行きましょっ!」
オリーブとアリシアはさっそくメアリーの部屋を訪ねようとしましたが、メアリーの付き人に今は忙しく会えないと言われてしまいました。
「残念ね、話したかったのに」
「そうねアリシア。とても残念だわ」
その時です、遠くの廊下の先を歩いているメアリーをアリシアが発見しました。
手に何かを持ち運んでいるようです。
「あっ、いたわ!メアリーだわ追いかけましょ!」
「えっ?アリシア待って!」
オリーブとアリシアは遠くにいたメアリーを追いかけ近くへ行きました。
するとメアリーは人目を気にしているのか、何故かキョロキョロと辺りを見渡しています。
それを見たオリーブは小声でアリシアに話しかけました。
「隠れましょ、アリシア」
「えっ?なぜ隠れるの?」
「何だか様子がおかしいわ。見て」
「本当だわ。何だか挙動不審ね」
オリーブとアリシアはメアリーからは見えないよう影へ隠れ、メアリーの行動をそのまま見ていました。
するとメアリーは地下へと下りていったのです。
「地下?なぜ地下へ?」
「分からないわ。でも何が気になるわ。アリシア私から離れないでね」
「分かったわ。このまま追いかけましょう」
「えぇ」
オリーブとアリシアは地下へとおり、薄暗い廊下の先をメアリーが進んでいくのを見ていました。
「宮殿の下はこんなふうになっていたのね」
「えぇ薄暗いわね。あっ、どこかの部屋に入ったわ」
オリーブ達はすぐに追いかけ、メアリーの入った部屋の中をそっと覗きました。
するとそこにはベッドがあり、綺麗な女性が横たわっていました。
「母様、食事を持ってきたわ。起きれる?」
「まぁ、ありがとうメアリー。美味しそうだわ、ゲホッ、ゲホッ」
「母様大丈夫?お水よ」
「大丈夫よ。少し気分が悪いだけ」
女性はどこか具合が悪いのか、顔色があまり優れていませんでした。
「あれってメアリーのお母様なの?なぜこんな地下に?」
「そうかもしれないけど、でもあれは…」
「どうしたの?オリーブ」
オリーブは何かに気付いた様子で口ごもりました。
「アリシアにも分かるはずよ。あの気配は魔物よ」
「えっ?本当だわ!でも、どうして魔物を母様と呼んでいるの?」
「恐らくメアリーのお母様に化けているんだわ」
「だからメアリーは気付いていないのね?」
「いいえ、気付いてなかったら、こんな地下に置かないと思うわ」
「てことは、メアリーは分かってるの?」
「えぇおそらくは。魔物自体は小物、だけど倒せない。だからここへ置いてるのかも」
「そんな…、酷いわ!でもそしたら本物のお母様は?」
「う〜ん、考えたくはないけれど、状況から考えると既に亡くなってるんじゃないかしら…」
「そんな…、だから余計に倒せないのね…、どうする?オリーブ」
「見てしまったものを、このままにはしておけないわ」
「そうね。だけどどうしたら」
「えぇ、どうしようかしら…、困ったわ…」
「だったら直接聞いちゃえば?」
「えっ?ちょっとアリシア!」
アリシアはズカズカと部屋の中へと入り、声を出して言いました。
「そこの魔物!正体を現しなさい!」
「ちょっといきなり、アリシア!」
オリーブも慌ててアリシアの後を付いていきました。
「どうして2人がここに?私をつけてきたの?」
メアリーは驚いて2人に言いました。
「そうよ!部屋に行ったら会えないって言われて。そしたら廊下でアナタを見つけたから追いかけたら、何だか様子がおかしかったからついてきたの」
「そう…」
「メアリーこの方達は?」
「母様、この方々はえっと…」
するとメアリーと一緒にいた女性が、急に部屋へ入ってきたオリーブ達が誰なのかとメアリーに聞き、メアリーは何て答えようかと戸惑いました。
「友達よ!あんたの正体も私知ってるわ!メアリーを返してもらうわ!」
「私の友達…」
「そうでしょ、オリーブ?」
「えぇ私達の友達よ。メアリー魔物の話なんか信用しちゃダメ」
「でも、これは母様だわ…」
「魔物がメアリーのお母様に化けてるだけよ!騙されちゃダメ!」
「母様だもん!これは母様だもん!」
「じゃあ何故こんな薄暗い地下の部屋に閉じ込めてるの?本当は分かってるんでしょ?大丈夫よメアリー、これからは私達がいるわ。必ずまた会いに来るわ」
「そうよ、オリーブだったらすぐ来るわよ?本当よ」
「だけど…」
「じゃあ、いつまでもこのままでいいの?メアリー」
「良くはないけど、でも母様を倒すなんて…」
「あれはお母様じゃない!よく見なさいあの目!魔物の目よ!」
「本当に友達になってくれるの?こんな私の…」
「なるわ。メアリーがいいわ。ずっと友達よ」
「そうよ、ずっと友達よ!だからこれからは何でも私に話しなさい!」
「オリーブ様…、アリシア様…、分かったわ倒すわ」
すると魔物の女性はメアリーに言いました。
「メアリー、私を倒すのですか?母ですよ?」
「違う!母様はそんな目じゃない!火の鳥よ、魔物を倒して!」
「グワッ!」
メアリーは魔法で鳥を出し魔物をあっという間に倒しました。
魔物が消えるとベッドの上にはネックレスが1つだけ残されました。
「あれを依り代にしていたみたいね」
「母様のネックレス…」
「ルビーかしら?綺麗だわ」
メアリーはルビーのネックレスを両手で胸に抱いたまま、その場に泣き崩れました。
その後オリーブは雷樺を出し3人で乗ると、宮殿のオリーブの部屋へと連れていきました。
そしてメアリーは自身の生い立ちをオリーブとアリシアに話し始めました。
「私が7才の時に父様と母様は亡くなったの。視察に行った鉱山で事故にあってしまって。それで私が皇帝に即位して。
その後すぐにあの魔物が現れて、寂しくて誰にも何も打ち明けられなかった悩みとかあの母様はいつも聞いてくれて最初から分かってた魔物だって。でも倒せなくて…」
「そう、辛かったのねメアリー」
「メアリー、私も親がいない寂しさ分かるわ。私も両親がほぼ家にいないの」
「アリシア様も?」
「アリシアでいいわ」
「私のこともオリーブでいいわ」
「でも…」
「友達なんだから呼び捨てでいいのよ!」
「分かったわアリシア…、オリーブ…」
3人は抱き合い、メアリーの孤独で寂しかった心はこの夜から少しずつ溶けていきました。
そしてその夜、メアリーはそのままオリーブの部屋で眠りにつきました。




