ケツァール皇国
朝になりオリーブは目を覚ましました。
『今の夢は…?それに私は誰と話ていたのかしら…?』
そんな事を考えながら寝返りを打つと、枕元に赤い綺麗なトカゲいることに気付きました。
『んっ?トカゲ?どこから入ってきたのかしら』
オリーブは起き上がりながらトカゲを手の平の上に乗せました。
するとトカゲはオリーブの手の平を一舐めし消えてしまいました。
その後ほのかな温かさを手の平から感じました。
「今のはいったい…」
「オリーブ?どうかした?」
そんなオリーブに隣で眠るアリシアが目を覚まし声をかけてきました。
「アリシア、起こしちゃった?」
「いいのよ、別に気にしないで。もう朝だし」
「今、トカゲがいたの」
「えっ!トカゲ?どこ?いやだ!」
「消えちゃった」
「消えた?」
「うん」
「なんだ寝ぼけてるのね、ビックリしたわ…」
「違うわ、本当よ」
「はいはい、着替えて早くご飯食べに行きましょう」
「本当なのに」
アリシアはオリーブが寝ぼけておかしなことを言ったんだと思い、話を信じてくれませんでした。
2人は着替えを済ませテントの外へと出ると、何と昨日まで吹いていた砂嵐が収まっていました。
そしてようやく砂漠を進むことが出来たオリーブ達一行は、ケツァール皇国へとその後数日かけ移動しやっと到着する事
が出来ました。
ケツァール皇国は温暖な地域で鉱山が複数あり、砂漠の中にありながらとても栄えている国です。
火の精霊王サラマンダーが住むと言われ、火属性の魔法を得意とする者が多くおり『グレフラム家』が治めています。
突然来たオリーブ達でしたがすぐに宮殿の中へと案内され、皇帝と対面することになりました。
と思いましたが、途中の廊下で日焼けした長身の男性が近付いてきました。
「オリーブ!ようやく来たんだね!オリーブ!」
「えっ?」
「誰?知り合い?オリーブ」
「いいえ、分からないわ。アリシア」
「忘れてしまったのかい?この間の夜はあんなに楽しかったのに」
「お前、何を言ってる!」
「そうよ!オリーブはずっと私と一緒にいたわ!」
「あなたは誰ですか?」
「いきなり失礼だぞ!」
オリーブの側にいた皆は邪険な顔をしながら、急に近付いてきた男に言いました。
目の前にやってきた男性を見ながらオリーブは考えていました。
日焼けした肌の妖艶な男、馴れ馴れしい話し方そうそれには覚えがありました。
「サラマンダー…?」
すると男性はオリーブの手を取って言いました。
「思い出してくれたんだね!オリーブ!」
「…この間の夢の人?」
「そうだよ。オリーブ!」
オリーブはもし違っていたら恥ずかしいなと思いながら、恐る恐る聞いてみました。
「もしかして、…アナタが精霊王?」
それを聞いた目の前にいた男性は、オリーブに跪いて言いました。
「私が火の精霊王サラマンダー。ようこそ姫、わがケツァール皇国へ」
「精霊王だと?」
「あんた精霊王なの?」
「驚いたな」
「本当か?」
サラマンダーの発言を聞き、側にいた皆が驚きました。
「恐らく本当よ。凄く力を感じるわ」
「言われてみればそうかも」
「ところで、姫って私のこと?」
「えぇ、もちろんです」
「アナタの姫になった覚えはないわ」
「私は姫がずっと来るのを待ち続けていました。そこのフォーレにも用があったもので…」
「ギクッ」
サラマンダーはオリーブの肩付近にいたフォーレを、鋭い目つきで見つめました。
「フォーレ、何かあったの?」
「さぁ?何か分からないわ…」
「それよりサラマンダー、皇帝に挨拶に行きたいんだけど」
「分かりました姫。仰せのままに」
サラマンダーは立ち上がると後を振り返り、皆の先頭を歩き出しました。
歩きながらオリーブに皆がコソコソと話しかけてきます。
「オリーブ、あの人やっぱり知り合いなの?」
「いいえ初対面よ、アリシア」
「だけど、お互い知ってる感じで話してたろ?」
「夢であったの、カイン」
「それだけ?」
「えぇそれだけ。夢の中でもやたらと距離が近くてそれで思い出したわ」
「夢であったとは?」
「夢の中で会話をしたの、ウォルター」
「どんな?」
「それがあまり覚えていないの、アイザック」
「こちらです姫」
「ありがとう、サラマンダー」
少し進むとサラマンダーが扉の前で立ち止まり、オリーブ達は中へ通されました。
中には八角形の広い大きな台座があり、その上に豪華な玉座が1つだけありました。
そしてその玉座に座っていたのは、何とオリーブ達と同い年くらいの少女でした。
「よく参られたヘイデンの方々、私がケツァール皇国皇帝メアリー=グレフラムです」
「初めましてメアリー陛下、私はヘイデン王国から参りました。オリーブ=ゼラファーガです。お会い出来光栄でございます」
「姫、彼女が僕の依り代だよ」
サラマンダーはそう言いながら、メアリーの方に顔を向けました。
「サラマンダー、連れてきてくれてありがとう」
「どういたしまして、メアリー」
「じゃ、挨拶も終わった所で、姫この国を案内してあげるよ!」
「えっ、待って、ちょっと離して」
サラマンダーはオリーブの手を取り勝手にその場から連れ出し、扉から出て行ってしまいました。
するとメアリーがすぐに申し訳なさそうに謝りました。
「…申し訳ありません、精霊王はとても勝手な方で…、危害は加えませんのでご安心を」
「あんたも苦労するわね、メアリー」
「はい…」
「アリシア、いきなりそんな馴れ馴れしく失礼だろ!」
「あっ、そうねウォルター。申し訳ございません」
アリシアの発言をウォルターが注意しました。
「別にいいのです。こうやって同い年くらいの方と話すのも初めてですし」
「初めてなの?」
「はい、私は小さい頃から大人に囲まれ育ったので友達と呼べるものもおりません」
「なら私が友達になるわ、メアリー」
「えっ?本当ですか?」
「オリーブと私それからメアリー、きっと仲良くなれる、何だかそんな気がするわ」
アリシアとメアリーが見つめ合いながら微笑んでいた時、オリーブは大きなドラゴンの背中に乗っていました。
「凄い!こんなに高くまで飛べるのね!」
「姫、やっと笑ってくれたね」
「えっ?」
「夢の中ではあんなに笑ってくれたのに、今日は1度も笑ってなかった」
「それはサラマンダーが変なことするからでしょ」
そしてドラゴンは地上へと降り、元の人間のサラマンダーの姿に戻ると宮殿のある部屋へと案内しました。
「さっ、こちらへどうぞ」
「ありがとう」
「ここは私の部屋さ、そこへ掛けて」
「えぇ」
拒否しても面倒だと思い、オリーブはとりあえずサラマンダーに従っていました。
するとオリーブの座ったソファーにサラマンダーは隣に座ってきました。
「で、私に何か聞きたかったんだろ?姫」
「その前に、どうしてすぐ宮殿に入れてくれたの?まるで来るのが分かっていたようだったわ」
「それは私が姫が来ると分かったから、事前にメアリーに言っていたのさ」
「そうだったのね。所でアナタはどうして実体化しているの?フォーレは皆んなには見えないのに」
オリーブは気になっていたことをサラマンダーに聞きました。
「私はずっと何百万年も生きているからね。フォーレはまだ数千年しか生まれてから経っていないから魔力も私より少ないのさ」
「そうなのね、分かったわ」
「なっ?フォーレ」
「はいそうです、サラマンダー」
「何かあったの2人は?さっきから何かおかしいわよ、フォーレ」
オリーブは精霊王2人の様子が先程からおかしい事を言いました。
「フォーレは私から姫を奪ったのさ。だからバツが悪いんだよ」
「奪った?フォーレがサラマンダーから私を?」
それを聞いたオリーブは驚いてサラマンダーに尋ねました。
「話せば長くなるが、姫の依り代を私は最初に狙っていた。カーティスに火の魔法を施したのも私。いずれ産まれてくるカーティスのを子を依り代にしようと考えていたからね。それをこのフォーレが横から割り込んできたのさ」
「あはは、そうだったかなぁ…」
「私もいけなかったのさ、シルフと喧嘩していたからね」
「シルフ?」
「シルフは風の精霊王、アイツも姫を狙っていてね。どっちが依り代になるかで喧嘩になったのさ」
「そうだったのね」
「その間にフォーレはあっという間に姫を依り代にしてしまったのさ。だが姫はこんなに綺麗になった。それだけで私は十分だよ。フォーレ」
「怒ってないの?サラマンダー」
「怒ってないわけないだろ、だが姫がここまでになったのは君のおかげだろう。だからフォーレ君に感謝する、私なら出来なかった」
「分かればいいのよサラマンダー!オリーブに魔法入れたのも許してあげるわ」
「私に魔法入れたの?」
「あぁ、私の火の魔法を少しだけね」
「もしかして、この間の朝のトカゲ?」
「そうだよ、あれは私の分身さ」
「すぐに消えたからビックリしたわ」
「ビックリさせて悪かった。だけど火の魔法がないと砂漠は通れないんだ」
「だからくれたのね。ありがとうサラマンダー」
「姫が喜んでくれて嬉しいよ。話を戻すが私はその後メアリーに会えた、だからフォーレ君を憎まないよ」
「ならよかったわ、サラマンダー」
「それで、姫はなぜここへ?だいたいの想像はつくが」
オリーブは改まった感じでサラマンダーに言いました。
「魔物の件でサラマンダーに聞きたいことがあって来ました」
「そうか」
「魔物がなぜ出るようになったか、ご存知ですか?」
「それは私にも詳しい事は分からない。ただ」
「ただ?」
「何者かが魔物を世界に出現させ、この星を狙っている。それは間違いない」
「何者かがこの星を狙っている?」
「あぁ、この世界に魔物を発生させ人間を消そうとしている者がいると言うことだよ」
「そんな者が…」
「きたるべき日に備え共に戦うこと、それが私達精霊王が女神から言われた言葉さ」
「女神?」
「この星を見守っている女神エイレーネだよ」
「いつも私達を見守っている女神様がいらっしゃるのですか?」
「そうさ、常に見ている」
「まぁ、素敵!」
「そんな事で喜ぶなんて姫は本当に可愛いんだね」
可愛いことを言うオリーブの肩を、サラマンダーは思わず抱き寄せました。
「やめて、大声出すわよサラマンダー」
「あぁ、すまない。分かったよ」
オリーブに怒られサラマンダーは肩から手を離しました。
「姫、申し訳ないが1つ私の願いを聞いてはくれないだろうか?」
「変なことは嫌よ」
「そうよ!オリーブに変なことさせないで!」
「まだ何も言ってないじゃないか…」
「何?サラマンダー」
「メアリーと友達になってはくれないか?」
「メアリーと?」
「あぁ、あの子はずっと1人で生きてきた。友達もいない。だから姫にお願いしたいんだ」
「分かったわ。とりあえず後で話してみる。まずはどんな子が知らないと」
「あぁ、頼む」
「任せて」
話が終わりオリーブが部屋を出た後、サラマンダーは部屋の中で呟きました。
「これでこの国の闇も姫が片付けてくれればいいが…」




