留学
そして月日は巡りオリーブは中等部を卒業する事となり、まもなくシンシアでの留学が終了します。
アリシア、ウォルター、アイザックはそれぞれ今後どうするのか、どうしたいのかを考えていました。
ですが3人の心はもう既に決まっていました。『オリーブと離れたくない!』この思い一心でヘイデンへと留学を決め、ヘイデン城での3人の暮らしが始まりました。
そして今初めてのヘイデン城へ足を踏み入れ、オリーブがシンシアから来た3人に城の案内をしていました。
「ここがヘイデン城?」
「そうよ、これから3人が住むところよ」
「シンシアとは、また違いますね」
「だな」
その時です、オリーブはカインに声をかけられました。
「オリーブ!」
「カイン!来てたのね」
カインはオリーブが来るのを城の中で待っていました。
オリーブはカインを見つけるとすぐに側に駆け寄っていき、2人は親しげに話しを始めました。
そんな2人をシンシアから来た3人は少し冷めた目で見ていました。
「あのイケメン誰?私のオリーブに何故あんなに馴れ馴れしいのかしら」
「そうだな、少し腹立つな」
「兄さんでも怒るんだな。気持ちは分かるが」
「カイン、また少し背が伸びたんじゃない?」
「オリーブこそ、とても綺麗になったよ」
「ありがとう。昔はあんなに大人しかったのにいつの間にこんなに話すようになったのかしら、カインは」
アリシアは我慢できなくなり2人の側に行き話しかけました。
「オリーブ、この方は誰?紹介してちょうだい」
「アリシア。この人はカイン、幼馴染なの」
するとカインはシンシアから来た3人に丁寧に挨拶をしました。
「申し遅れました皆様方、初めまして、私はカイン=ジェへロス。オリーブとアイザック様と同じ学年です。今後ともよろしくお願いします」
「俺の名前知ってんのか」
「えぇもちろんです、父から聞いております」
「カインのお父様は、この国の宰相なの」
「私はアリシア=スニァシオ、オリーブの親友よ」
「オリーブから聞いています。仲の良いい友達が出来たと。よろしくお願いします」
「初めまして、私はウォルター=ヴィエフルです」
「王子お2人にも大変お世話になったとオリーブから聞いております。よろしくお願いします」
「とりあえず行きましょ。父様達が待ってるわ!」
挨拶が終わると、オリーブは楽しそうに皆の先頭立ち歩き出しました。
「全く、2匹いや3匹も虫を連れてくるとは…」
「アナタ今何かいいました?」
「いいえ別に、アリシア様」
「虫がどうとか聞こえたが?」
「気のせいか?」
「さぁ?何のことやら」
オリーブの後を歩く4人の攻防戦は既にはじまっていました。
そして王の間へとオリーブ達はやってきました。
そこには王カーティス、王妃ナディア、そして次期王のウィリアム、甥っ子の『クリス』がいました。
クリスはナディアの側にいましたが、オリーブを見るなり走って近付いてきました。
「姉様!」
オリーブはその場にしゃがみ、自分へと向かってきたクリスを抱きとめました。
「会いたかった姉様」
「私もよクリス。元気にしてた?」
オリーブは抱き締める手を緩め、クリスと目を合わせました。
「うんとっても元気!姉様も元気そうで良かった!」
「クリスまた背が伸びたわね?」
「そうかな?早く姉様に追いつきたい」
「クリスならすぐに大きくなるわよ」
「絶対、兄様を超えるんだ」
「ならきっともうすぐね」
それを少し遠くで聞いていたウィリアムは、ちょっとだけ苦笑いをしていました。
クリスは亡き母クレアの子ですが、クレアに代わりナディアが母としてクリスを育てていました。(※クリスはこの時5歳)
そしてウォルターから挨拶を初めました。
「初めてお会いいたしますカーティス陛下、ナディア妃殿下。シンシア王国から参りましたウォルター=ヴィエフルと申します。お会い出来光栄でございます」
「初めまして弟のアイザック=ヴィエフルです。今後ともよろしくお願いいたします」
「初めまして、シンシア王国侯爵家アリシア=スニァシオと申します。オリーブ様とはとても親しくさせて頂いております。お会い出来光栄です」
「よく参られた。オリーブとシンシアではとても仲良くしてもらっていたそうで、ありがとう」
「私からも感謝いたします」
「オリーブから聞きました。魔法のこと黙っていてくださり感謝しています」
「いえ当然です」
一通りの挨拶を終えたあと後は若い人達でとナディアが気を利かせ、カーティスを連れて出ていきました。
「ウォルター、よく来た」
「ウィリアムさん、お久しぶりです」
ウィリアムはウォルターへ近寄り話しかけました。ウィリアムは今年からヘイデンの大学へ通っています。
ウォルターはここへ来るなり、オリーブと親しく話すクリスを見ながら思っていました。
『この子がウィリアムさんの弟のクリスか。確か母さんに顔が似てるって1度だけウィリアムさん言ってたっけ』
そうウィリアムは父と母を13歳の時に亡くしました。
ウィリアムは深く傷付いた心の傷を癒やすため、しばらく学校を休み夏休みが開けてからシンシア王国へ行き、また留学を続けたのです。
ウィリアムは次にカインへ話しかけました。
「聞いてるぞカイン。中等部じゃ成績トップで生徒会長もしたらしいじゃないか。頭もいいのに剣も魔法も凄いって皆が噂してたぞ」
「そうなんですか?それは嬉しいです」
「凄いじゃない、カイン!」
「たまたまだよ、オリーブ」
すると側で聞いていたクリスがオリーブが話しかけました。
「姉様!」
「なぁに?クリス」
「姉様の彼氏はどの人?」
クリスの発言を聞き、その場にいた皆がオリーブに注目しました。
「えっと、いないわクリス…」
「カインと兄様も違う?」
「違うわ、クリス…」
「てっきりカインだと思ってたけど、たくさん連れてきたから別の人かと思って聞いたんだけど違うんだね。じゃあ僕が姉様の彼氏になる!」
「…そっ、そうね」
「いいの?やったー!」
「ダメよ!クリス!」
「えっ?」
「オリーブは私のよ!」
「えっと、アリシアお姉ちゃんのなの?」
「そうよ!」
「そっか、じゃあ僕は2番目ね?アリシアお姉ちゃん!」
「それでいいわ、クリス」
「さすがアリシア」
「だな」
そのまましばらく皆で雑談をしながら、楽しい時を過ごしていた時でした。
『何故だ!何故私が王ではなく、あんなよく分からん魔法を持った奴が王なのだ!私の方がふさわしいと言うのに!カーティスめ覚えておけ!お前の幸せ全て踏み潰してやる!』
すると突然オリーブが振り返り、扉の方を向きました。
「どうしたの?オリーブ」
そんなオリーブにアリシアが話しかけました。
「向こうから嫌な気配がするわ。そうだった忘れてたわ。すぐに結界を張ならなきゃ…」
そう言うとオリーブは結界を張るため急いで走り、城の中庭へと行きました。
「フォーレ!」
「任せなさい!」
中庭へ着くなりオリーブはフォーレと共に、大きな結界魔法に取りかかりました。
オリーブが目を閉じると目の前に沢山の蔦が生え、蔦は他の蔦と絡み捻れながら見る見る上へと成長し伸びて行きました。
そして1つの束となった蔦はやがてとても大きな巨大な木となり、ヘイデン王国の皆に暖かな緑の光を与え木の葉となって消えました。
「出来た…」
オリーブは終わると気が抜けてしまい、その場にペタンと両膝を付きました。
オリーブを追いかけ後ろで見ていたアリシアは、そんなオリーブに近付き声をかけました。
「オリーブ大丈夫なの?!」
「大丈夫。これで闇は消えたわ」
「違うわ、オリーブが大丈夫かって聞いてるの?」
「大丈夫よ、急に魔力を大量に使ったから疲れちゃっただけ」
そういうとオリーブは立ち上がりアリシアにお礼をいいました。
「心配してくれてありがとうアリシア。そうそうここが城の中で私が1番好きな場所なの」
「全く心配させないで。確かに綺麗な場所ね」
「そうだ、オリーブ」
「なぁに?カイン」
「こっちへ来て」
すると近くにいたカインは、オリーブの手を取り中庭の奥へと連れて行きました。
「オリーブの好きなチューリップを植えたんだ」
「カインが植えたの?」
「そうだよ」
「まぁ凄く綺麗だわ!ありがとうカイン!」
カインが連れて行った場所には2人が初めて会った日のように、綺麗なピンク色のチューリップの花がたくさん咲いていました。
それを見たアリシアと王子達はヒソヒソと話していました。
「強敵だわ、あの男」
「えぇ、間違いないですね」
「あぁ、モタモタしてたら取られる」
「何?オリーブの話?妹は誰にもやらん」
「ウィリアムさん、相変わらずですね」
『やっぱり姉様の彼氏はカインじゃないのかな?』
クリスは仲の良いオリーブとカインを見ながら、心の中でそう思っていました。
そしてオリーブ達4人は、ヘイデン王国のフリュエール王立学院の高等部へと入学しました。
「オリーブ、今日から一緒だね」
「そうね、カイン」
入学して数日、いつも仲睦まじいオリーブとカインの2人を同じ教室のアイザックは見たくないと思い、授業をサボり何処かへといなくなりました。
そしてお昼休み、オリーブは学校の屋上へと行きましたが誰もいません。
『てっきりアイザックここだと思ったのにいないわ。まっ、いいわ。後でお城で会ったら説教しなきゃ。シンシアよりは劣るけど、ここもこんなに綺麗だったのね』
オリーブは屋上からの景色を堪能した後、誰もいない事をいい事に上着を脱ぎ、穿いていた膝の下まであるスカートの裾を少し上へたくしあげ、雷樺のもふもふなお腹に寝そべりながらお菓子を片手に本を読み始めました。
するとどこからともなくハトが現れ、オリーブの近くへと寄ってきました。
「あらっ、アナタ前にも来たわね」
「ぽっぽっ」
「可愛いわ、アイリのお菓子が欲しいの?」
オリーブは身体を起こすと食べていたお菓子をハトにも差し出し、ハトは喜んでお菓子を食べはじめました。
オリーブはそんなハトに話かけました。
「アナタどこから来たの?」
「ぽっぽっ」
「お名前は?」
「ぽっぽっ」
「名前がないなら、つけてもいい?」
「ぽっぽっ」
「う~ん、そうね、『ペネ』なんてどう?」
「ポッポッ!」
「気に入ったの?良かったわ」
屋上には時計台があり実はアイザックはそこにいたのです。
アイザックは昼寝をしていましたが目を覚ますと、少し動き誰の声だと下を覗きました。
『うるせぇな、たくっ…誰だよ。ってオリーブ!何でここに!つかアイツ、無防備すぎだろ…』
オリーブのスカートの裾がいつもよりもめくれ、長い足が見えている事にアイザックはすぐに気付きました。
アイザックは少しだけ嬉しくなりましたが、注意をしようとすぐに下へおりていきました。
「オリーブ」
「えっ?あっ、アイザック。って今までどこにいたの?」
「そこの時計台」
「何だ、あそこにいたのね」
「つかお前そう言う姿、誰にも見せるなよ」
「上着を脱いでただけじゃない」
「寝そべってたろ?」
「あっ、見てた?」
「あぁ」
「たまにはいいでしょ、アイザックも同じでしょ」
「だったら足出すな、ちゃんと見えないようにしろ」
「えっ?足?これくらい別にいいじゃない」
「よくねぇ、それより授業始まるから行くぞ」
「ちょっと、何よ今までサボってたくせに」
2人は会話をしながら階段を下り教室へと入りました。
教室へ入ってきた2人を見たカインは驚きました。
今まで自分だけと仲良く話していたと思っていたオリーブは、アイザックと屈託のない会話をしています。
『本当に仲が良いんだな。僕の知らないオリーブをあの3人はたくさん知ってるんだろうな。負けられない…!』
カインはそんな仲良く話す2人を無視し、無言の表情で机に向かうと次の授業の本を開きました。




