合宿
それから王子達は、オリーブに感化され鍛錬に明け暮れメキメキと腕を上げていきました。
そして時は過ぎオリーブとアイザックは2年へと、アリシアとウォルターは3年に進級しました。
今は皆で昼休み屋上へ集まっています。
「オリーブ!オリーブが好きそうな話を持ってきたわ!」
「んっ?なに〜?アリシア」
「合宿よ!」
「合宿?」
「そう合宿!」
アリシアはオリーブに合宿の話をしてきました。
「あ〜、あれか」
「去年は中止になってしまったんだよね」
「中止?」
「そう去年は大雪でなかなか雪が溶けなくて中止になっちゃったけど、今年は雪が少なくてすぐ溶けたらしいわ」
「それがどうかしたの?アリシア」
「フッフッフ〜ッ、体を動かすのが好きなオリーブにはきっとピッタリな合宿よ!」
「本当??」
「ノッてきたわね、オリーブ」
「何をするの?て言うか、どこで?」
「ネージェ山よ!」
「あの高い山?」
オリーブは屋上から見える高い山の方を見ながら言いました。
「そう!内容は行ってからのお楽しみよ!」
「え〜〜!!」
「というか毎年内容が違うから、分からないのよ」
「何だ、分からないのね」
「でも大丈夫よ!毎年皆んなヘトヘトになって帰ってくるから、きっとオリーブは好きなことよ」
「うん分かった参加するわ。アリシアも参加する?」
「私はいいわ、そう言うの苦手だから」
「そっか…」
「代わりに王子達に一緒に行ってもらいなさい」
「えっ?」
「はっ?」
「何とぼけてるの。オリーブが行くって言ってから自分も行こうと思ったでしょ。合宿は2泊3日よ、後で希望出しといてあげるわ」
「うん、ありがとうアリシア」
こうしてオリーブと王子2人は合宿へと行くことになりました。
そして当日、学校の校庭に集められた参加者達は先生の話を聞いていました。
「この合宿はあなた方が思っているよりもとても過酷です。途中脱落しても構いませんが、希望したのに覚悟が足りぬとみなし成績を落とします。王侯貴族だからと特別扱いは一切いたしません。
まずはここからネージェ山、山頂を目指してもらいます。移動は歩きのみです。タイムリミットは日が沈むまで、それではスタート!」
皆それぞれリュックを背負い、オリーブはアリシアの下に行きました。
「アリシア、行ってくるわ」
「行ってらっしゃい、オリーブ!気を付けてね」
出発を見に来ていたアリシアにオリーブは声をかけ、オリーブは学校を出発していきました。
オリーブはネージェ山を見上げながら、さっそく側にいた王子達に話かけました。
「今から、あの山に行くのね」
「そうですね」
「そうだな」
「楽しみだわ」
「オリーブは楽しそうですね」
「今だけだろ」
そして数時間後、参加している者の中で先頭はオリーブでした。
「2人とも早く〜!」
「オリーブ、早いです…」
「待てって…、おいっ」
オリーブは1人ずんずんと楽しそうに山道を歩いて行き、その後ろを少し離れて王子達がついて行きました。
オリーブの背中を見ながら王子達は2人で話していました。
「あいつ、何であんなに元気なんだよ」
「分かりません、ですが最近オリーブは私達にも素を見せるようになってきましたね」
「何だよ兄さん、こんな時に」
「やはりエルフの事など、実力を隠していたのが、後ろめたかったのかなと思っただけです」
「俺は最初の方から何か隠してると思ってたぞ」
「そうなのか?!アイザック」
ウォルターは驚いて隣にいたアイザックに聞きました。
「あぁ、最初の模擬戦からだ。そのあとオリーブに、本当のお前を出せって言ってから教室でも話すようになったかな」
「お前にだけは負けんぞ、アイザック」
「はっ?」
ウォルターはアイザックを抜きスピードをあげ山道を登り始めました。
『兄さんは、負けず嫌いだな』
そう思ったアイザックも負けじとウォルターのあとを追いました。
そしてお昼頃3人は頂上に着いてしまっていました。
「着いた〜!」
「着きましたね…」
「着いた…」
そして3人でお昼に持ってきたお弁当をを食べ、午後になり到着する人も増えてきた頃、先生が人を集めて言いました。
「では、今着いているものにだけ今後をお話します。今目の前に見える奥の森、あの中に魔物を放ちました」
「えぇ〜〜〜!!!」
先生は振り返りながら森の方を見て言い、話を聞いていた生徒達は魔物と聞き悲鳴をあげました。
「魔物は近年出現率が増え、我が国も対処に追われています。今後皆さんが魔物と遭遇し戦闘になることも十分考えられます。そして我が国では魔物を捕らえ研究し増やすことに成功しました。よって皆さんにはこれより魔物を退治してもらいます。
あの森には複数の魔物がうじゃうじゃいます。今から渡す剣で魔物を倒して下さい。倒した数の数字が剣に刻まれます。
結果は合宿最終日、学校に戻ってから発表します。それでは皆さん各自テント、ポーション、食料等を持ち2日後の朝ここへ集合してください。集まったら下山しますので、遅れないで来てください」
すると生徒の1人が先生に話かけました。
「先生!夜はどうするんですか?」
「テントを持っていく意味が分かりませんか?」
「森の中で、魔物と一緒に一晩と言うことでしょうか…?」
「もちろんそうです、正確には2晩です」
「えぇ〜〜〜!!!」
また生徒達から悲鳴があがりましたが先生が遮って言いました。
「脱落しますか?」
それを聞いた生徒達は何も言えなくなってしまいました。
「先生!」
「はい、オリーブさん」
するとオリーブが先生に言いました。
「魔物全部倒しちゃったら、追加とかしてくれるんですか?」
「えっえぇ…、大丈夫です。減った分は明日の朝に追加します。その後はしません」
「魔法とか精霊とかも使っていいんですか?」
「はい、特に問題ありません」
「分かりました!」
オリーブの突拍子もない発言に、生徒や教員が若干引きながらオリーブを見ました。
「おい、オリーブ魔物全部倒す気か?」
「それは危険なのでは?」
「ただ聞いただけだよ、2人共心配しないで」
「まぁ、オリーブならいけるか…」
「そうですね…」
王子達はオリーブの心配をしましたが、オリーブなら大丈夫だろうと納得し話をやめました。
そしていよいよ合宿での魔物退治がはじまりました。
一人一人別々に森へ入らないといけないと言う事で、オリーブは1人で森の中へ入りました。
オリーブはすぐに重い荷物を精霊に預け剣だけを持ち地面に手を付き、心の目で森の中を見ました。
『結構いるじゃない魔物!もう王子達には私の実力バレちゃったし、遠慮いらないよね?』
そう思ったオリーブは次々と魔物を斬って行きました。
大方倒し少し一息ついた所で後ろから声をかけられ、オリーブは振り返りました。
「オリーブ?」
「えっ?ウォルター!」
声をかけてきたのはウォルターでした。
「良かった、オリーブに会えて」
「探してたの?」
「あぁ、無茶をしてるんじゃないかと思って」
「大丈夫よ、そんなに心配しないで。無茶してないわ」
「そうか、ならいいんだが」
ウォルターはオリーブが森に入った方向を探り出し、見つけて安堵した表情をしました。
「魔物は倒した?」
「あぁ、何匹かは」
「強くなったわね、ウォルター」
「オリーブのおかげだよ」
「私の?」
「オリーブに少しでも追いつきたいからね」
「ウォルターは、負けず嫌いよね」
「そうですか?」
「そうよ。人一倍努力しているって私、分かってるわ」
「何だか恥しいな。だけど少しでも見合う男になりたいからね」
「見合う男に?」
「あぁ、オリーブ」
2人で笑い合いながら見つめ話をしていた時、わきの茂みからアイザックが現れました。
「何で、2人でいるんだよ!」
「アイザックか…」
「残念そうな顔するな」
「アイザックも魔物倒した?」
「あぁ、何匹か倒した」
「アイザックも強くなったわね」
「まぁな、ところでオリーブ荷物どうした?」
「そうですね、何処かに置いてきたのですか?取りに行きますか?」
「違うわ、ちゃんとあるわ」
剣以外を持っていないオリーブに2人は気付き聞いてきました。
するとオリーブは精霊に預けていた荷物を取り出し、そしてまた精霊に預け荷物を消しました。
「たまげたな」
「そんなことも出来るのか」
「精霊に預けてるの。2人は預けないの?」
「いや俺たちはそんなこと…」
「お前みたいに何でも出来ねーよ」
「えっ?」
「んっ?」
「はっ?」
「もしかして気付いてないの?」
「何がだい?」
「何がだよ」
「2人には精霊が側に沢山いるよ?」
「えっ?」(王子2人に同時に)
オリーブに精霊がたくさん側にいると言われ、王子2人はポカンとした顔をしました。
「たぶんそれは…、水の精霊だと思う」
「おい、アイザック気付いてたか?」
「いや全く、兄さんは?」
「俺もだ…」
「知らなかったの?!」
「あぁ…」(王子2人揃って)
オリーブは精霊がいる事を知らないと言った2人に、精霊の事を説明してあげました。
「そっか見えないから分からなかったのね、精霊に荷物預かってって言えば預かってくれると思うよ」
「そんなことでいいのかい?」
「それでいいのか?」
「うん大丈夫、2人は精霊に好かれてるから。取り出したい時はまた頼めば出してくれるよ」
2人はさっそく精霊に頼み荷物を預けました。
「出来た!」
「出来たぞ!」
「ありがとう、オリーブ教えてくれて」
「ありがと、オリーブ」
王子2人はオリーブにお礼を言いました。
「私はただ精霊が見えただけ、戦闘とか魔法とかやる前に精霊に力を貸してってお願いすれば、きっとこれから身体強化とかして力を貸してくれると思うわ」
「そんなことも出来るのか」
「すげー」
「きっとこれから2人は、もっと強くなるわね」
オリーブはこの日、王子2人の成長がこれから楽しみだと思いました。
そして今日はここでテントを張ろうという事になり、皆でテントを張りその前で焚き火をしながら3人で話していました。
「この際だオリーブ、聞いてもいいかい?」
「何を?ウォルター」
ウォルターはオリーブに聞きたかったことを、この機会に聞いてみました。
「オリーブはどうしてそこまで強くなろうと思ったんだい?」
「それは…、最初はただ強くなりたくて、頑張って剣も魔法もやって、そしたらある日、城に魔物が現れてアイリが倒されたの。それで誰かを守れる強さが欲しいって思ったわ」
「そうかそうだったのか、じゃあなぜエルフに?」
「それはたまたまなの。母様の祖先がエルフだって話してくれて、まぁその話の次の日にエルフ探しに森に1人で行って…」
「オリーブの親は大変だな」
「そうかもね(笑)」
「それで会ったのかいエルフに?」
「えぇ、会ったわ。エルフの里で沢山の事を学んだわ」
「それでエルフの格好、はじめたのか」
「エルフの長老さんが変装した方が何かと便利だって、教えてくれたの」
「そうか、オリーブの強さはエルフ達が教えたのか」
「そうかもしれないわ」
「そういえば草原で俺ら見て逃げだろ?お前」
「えっ?」
「もう1人、エルフの女と手合わせか何かしてた時」
「あぁ、バレてた?」
「そりゃあんだけ急いでればな?兄さん」
「あぁ、そうだな」
「あれは思わず逃げちゃったと言うかビックリしたというか、特に意味はないわ」
「ふ〜ん」
「もうひとりのエルフの女性は誰だい?」
「あれはアイリよ、アイリはエルフなの」
「マジかよ」
「驚いたな」
オリーブ達3人は、今まで事をそれぞれたくさん話をしました。
「何か眠くなってきたし、そろそろ寝ようかな」
「そうですね、寝ましょうか」
「そうだな、寝るか」
夜も更けた頃、焚き火を消しそれぞれのテントへと入り、その日は眠りにつきました。
『オリーブが近くに寝ている…』
『オリーブが近くで寝てて寝付けるかよ…』
どうやら王子2人は、なかなか寝付けない夜を過ごしたようです。




