怒らせてはいけない
「兄さん、今日はいいのか?オリーブ達と出掛けなくて」
「あぁ、たまには女同士の方がいいだろう。それに俺は、もっと強くなりたいしな」
「そうだな、俺も強くなりたい」
「早く行こう」
王子2人は強くなりたいと思い、馬に乗り草原へ鍛錬に行きました。
するとそこには学校の3年生の先輩である、ギブソンがいました。
「ギブソンさんが、いるな」
「ヒュール伯爵家の?」
「あぁ、そうだ」
「確か、あんまいい噂聞かないな…」
「確かにな」
「どうする?」
「素通りも出来ないだろう」
「だな」
無視も出来ないと思い、ウォルターとアイザックは馬から降りギブソンに話しかけました。
「ギブソンさん!」
「やぁ、ウォルターくん、アイザックくん」
「どうしたんですか?1人ですか?」
「あぁ、君達を待っていたんだ」
「俺達を待ってたんですか?」
「君達の動向を数日間調べ、ここに来るだろうなと思って、待ってたんだよ」
「動向を調べた?」
「あぁそうだよ。君達には、おとりになってもらう」
「おとり?何のですか?」
「もちろん、オリーブを呼び出すためだよ!!!」
闇の力を発揮したギブソンに2人はあっという間にやられ、草原へ投げ出されてしまいました。
王子2人は怪我を負い、うつ伏せに倒れ起き上がれなくなりました。
「もう終わりかい?弱いな〜、君達」
「何でそんなに強い?」
「お前、何をした!」
「君達には関係ないよ」
「オリーブをどうするつもりだ!」
「オリーブを、呼び出すのか?」
「あぁそうさ。君達がとても邪魔だったからね。いつも僕のオリーブの側にいて、近寄れなかったんだ。僕にこそオリーブはふさわしい!」
「何を言っている!」
「オリーブがお前を相手にする訳ない!」
「あぁ?何か言ったか?腕をもぐぞ、アイザックくん!あっそうだ、その前にもう1人邪魔者がいたな。少し待ってろ」
そう言うとギブソンは闇の力を使い姿を消すと、またすぐに現れました。
「キャッ!痛った〜、何すんのよ!」
「威勢がいいな、アリシアちゃん」
「アリシア!」(王子2人揃って)
ギブソンはアリシアを連れて来ると、草原に突き飛ばしました。
「えっ?王子達何してるの?って、怪我してるじゃない!」
「コイツらの側によるな!」
王子達の側に寄ろうとしたアリシアにギブソンは蹴りを入れました。
そしてギブソンは消えると、またすぐに戻ってきました。
アリシアは戻ってきたギブソンに話しかけました。
「さっきから、何するのよ!ギブソン!」
「お前もおとりだ、オリーブを呼び出すためのな」
「オリーブを呼び出すですって?」
「あぁ、君たちの目の前で祝言を挙げ、僕だけの者にするつもりさ」
「相手にもされないからってこんな事して、ただじゃ済まないわよ!」
「黙れ」
「グハッ」
ギブソンはアリシアにビンタをし、王子達が声をかけました。
「アリシア!大丈夫かおい!」
「女にまで手を出すのか!」
「うるさい、うるさい、うるさい!どいつもこいつも〜!」
するとギブソンが興奮しながら発狂するとアリシアは気付きました。
「それって闇の魔法?」
「そうさ、アリシアちゃんには分かっちゃったか」
ギブソンの身体から闇の魔法が漏れ出ていました。アリシアはそれに気付きました。
「アンタ、魔物になりたいの?」
「オリーブをお前らから引き離し、手に入れるタメなら、魔物でも何でも構わないさ!」
「狂ってる」
「あっ?何だって、アイザックくん!」
「狂ってるって言ったんだ!」
「君、さっきも僕に口答えしたよね?!」
「うわ〜〜!!」
ギブソンはアイザックに狂ってると言われると激高し、アイザックの側へ近寄ると左腕をもぎそれを遠くへぶん投げました。
「アイザック!!」(2人揃って)
「腕の1本くらい、いらないよね〜!」
「やめろ!ギブソン!こんなことしても何もならないぞ!」
「うるさい!王子のお前に何が分かる!」
「ぐへっ」
ギブソンは次にウォルターの顔を一発、思いっきり殴りました。
「ウォルター!」
「兄さん!」
「あんた、オリーブが好きなの?」
「そうさ!だから邪魔な君達を懲らしめてるんだ!」
「何も分かってないのね、オリーブの事」
「なに?」
「オリーブの強さを、アンタ知らないの?」
アリシアはギブソンにオリーブの事を何も知らないと言いました。
「強さ?あぁ、模擬戦でアイザックくんに負けてたね。その程度だろ?後、精霊獣もいたか…、そのくらい問題ない!」
「ふん、馬鹿ね!オリーブを甘く見すぎよ!」
「何ふざけたこと言ってる!また殴られたいか?」
「アンタも知ってるでしょ?エルフの噂、あれ誰だか知ってる?」
「はっ?エルフだと?そんなの今関係ないだろ」
「関係ない?さぁどうだか。本人に聞いてみたら?」
アリシアの見つめた先には、雷樺に乗って草原へやってきたオリーブがいました。
オリーブは雷樺から降り、皆の方へ歩いて近付いてきました。
「やぁ!オリーブ、待っていたよ。早かったね!」
「あなた誰?」
ギブソンは草原へやってきたオリーブにすぐに近寄り話しかけました。
「ギブソンさ!手紙を読んでくれたかい?」
「手紙?邪魔者3人を捕まえたから草原へ来いって書いてあったやつ?」
「そうさ!」
「へぇ、本当だったみたいね。捕まえたの」
「手荒な真似はしたけど、オリーブを呼ぶためさ。仕方なかったんだ」
「仕方ない?なら私だけ呼べば良いでしょ」
「そう怒るなよ、オリーブ」
「それでどうして3人は怪我してるの?」
「あぁ、それは僕がやった…」
オリーブはギブソンの話の途中で蔦で拘束し閉じ込めました。
オリーブは3人の前に歩いて行くと、しゃがみ声をかけました。
「オリーブ!」(3人揃って)
「遅くなってごめんなさい、今すぐ回復するわ。精霊よ…」
目を閉じたオリーブは回復魔法を3人かけました。
すると怪我を負っていた3人は暖かな緑の光に包み込まれすぐに回復しましたが、オリーブはあることに気が付きました。
「アイザック腕は?!」
「さっき飛ばされた…」
「そう、今探すわ。待ってて」
アイザックの片腕がないことに気付いたオリーブは、すぐに地面へ手を付き目を閉じ心の目で探しはじめました。
オリーブは心の中で精霊に話かけました。
『精霊よ教えて。アイザックの腕はどこ?』
『こっちこっちだよ。オリーブ』
『えっ?どこ?』
『こっちだってば、オリーブ』
『んっ?こっち?』
『ここだよ、オリーブ』
「雷樺、向こうにあるわ。取ってきて!」
オリーブは腕を見つけ雷樺に指示を出しました。
雷樺は走り出し遠くの方へ行くと、腕を見つけすぐに持ってきました。
「ありがとう、雷樺」
オリーブは加えて持ってきた雷樺から腕を受け取り顔を撫でたあと、アイザックの腕をいとも簡単につけました。
「すげぇ…、もとに戻った…」
「こんな凄い回復魔法、見たことがない…」
「服まで元に戻ってる…」
「私の光の魔法でもここまでは出来ないわ…」
『オリーブ、あなたは今まで一体どれだけの努力をしてきたの?』
王子2人はオリーブの回復魔法にただ驚き、アリシアはオリーブの今までしてきた事を考え少しだけ泣きそうになっていました。
そしてオリーブは立ち上がると後ろを振り返りギブソンの方へ歩き出そうとしましたが、すぐにアリシアが呼び止めました。
「オリーブ!殺してはダメよ!」
オリーブは立ち止まると、顔だけ少し横に向きアリシアへ話かけました。
「大丈夫よ、殺さないわ。ちょっと痛めつけるだけ。友達を、私の大切な友達を傷付けた罪を償わせるわ」
それだけ言うとオリーブは、蔦で拘束しているギブソンの所へ向けて歩き出しました。
王子達はアリシアに近寄ると話しかけました。
「オリーブ…」
「オリーブは、本当に大丈夫なのか?」
「勝てるのか?アイツに」
「オリーブのあの冷めた目、あれは相当怒ってるわ。よく見てなさい2人とも、きっとオリーブはこれから本気を出すわ」
歩きながらオリーブは短剣を取り出しました。
そして蔦を切り裂き、中に閉じ込めていたギブソンを出しました。
切られた蔦は光となり消え去りました。
「ゲホッ、ゲボッ、酷いじゃないかオリーブ」
「アナタはもっと酷いことをしたわ、アナタ魔物なの?」
「気付いたのかい?オリーブ。そうさ魔物の力を得たのさ」
「それで?魔物の力を得て何するの?」
「そうだな、オリーブを脅そうかな」
「へぇ、脅してどうするの?」
「祝言を挙げるんだよ、オリーブ!」
「誰と誰が?」
「君と僕が1つになるのさ!!」
ギブソンは多少オリーブに傷をつけ動けなくすれば、自分の言う事を聞くと思い剣で斬りかかりましたがオリーブはそれを持っていた短剣で防ぎました。
「あれ?おかしいな。なぜ通用しない?」
その後もギブソンはオリーブに挑みましたが、オリーブは全て防ぎました。
「どうして、そんなに強いんだ!オリーブ!まさかさっきの話…」
「さっきの話?」
「王都に現れたエルフの話だよ。さっきそこのアリシアが、オリーブに聞いてみろって言ったんだ」
「そうなのね。エルフは確か短剣だったって噂よね、なら私の短剣はどう?」
オリーブは短剣を構えギブソンに向かって行きました。
剣のぶつかる音が草原に響きわたります。
「あれが、オリーブ…」
「嘘だろ…」
王子2人はオリーブの俊敏な動きに驚きました。
するとオリーブの短剣が何処かへと飛んでいってしまいました。
「残念。強いオリーブも良かったけど、もうおしまいだね」
『あっ…、つい焦って手が滑っちゃった。これじゃあロニセラに怒られるわ。もう少し冷静にならないと。でも無理かも…』
ギブソンはオリーブに今度こそ傷をつけようと斬りかかりましたが、オリーブはすぐに剣を出し防ぎました。
「次から次に…、もう怒ったぞ!オリーブ!手に入らないなら永遠に僕のものにする!」
「出来るなら、どうぞ」
2人の物凄い攻防戦がはじまりました。
それを見ていたアリシアは歓喜しました。
「やっぱり!オリーブは強いわ!」
王子2人はオリーブの動きに驚きあっけにとられています。
「凄すぎる…」
「俺には無理だ…」
しかしアリシアはそんな王子達に声をかけました。
「どうして分からないの!」
「何がです?」
「何がだよ」
「オリーブが得意なのは魔法よ。でもそれを使わずわざわざ剣だけで戦ってるわ。その意味が分からないの?」
「えっ?」
「なぜ?」
「オリーブはアナタ達の前で剣を見せてるのよ!こうやるんだって!ここまで来いって言ってるのが伝わってこない?」
王子2人は何も言えなくなり、ただ驚きオリーブとギブソンの戦いを見るしかありませんでした。
その後ギブソンは倒されました。
そしてオリーブは仰向けで倒れたギブソンの首元に、剣の先を向けながら話しかけました。
「3人のこと、どうやって傷付けた?」
「殴ったり、蹴ったり…」
それを聞いたオリーブはギブソンのお腹を一発殴り、立ち上がると次に蹴り飛ばしました。
数メートル飛ばされたギブソンの所までオリーブは歩いて行くと、またギブソンの首元に剣の先を向けました。
「後は?」
「腕を切りました…」
すると少し遠くでこちらを見ていたアリシアに、オリーブは声をかけました。
「アリシア!」
「なに?オリーブ!」
「腕切り落としていい?」
「ダメダメもういいわ!十分よ!魔物は?」
アリシアは慌ててオリーブに近付きながら話しかけました。
「さっき蹴ったときいなくなった」
「あぁ、そう…」
その後ギブソンは王子達が連れていき城のどこかに幽閉、オリーブはアリシアを連れ雷樺に乗り城の自室へと帰ってきました。
部屋へ戻るとアイリがすぐに話しかけてきました。
「オリーブ様!お帰りなさいませ、お怪我はありませんか?」
「ただいまアイリ、私は大丈夫よ」
「アリシア様もお怪我はありませんか?」
「えぇ大丈夫、オリーブが怪我を治してくれたから平気よ」
「お2人共ご無事で、何よりです」
「さて、王子達に口止めに行かなきゃ…」
「魔法の事でしょう?私も行くわオリーブ」
オリーブとアリシアはさっそくウォルターの部屋へと向かいました。
するとアイザックもいたので4人で話し合う事になりました。
それぞれテーブルをはさんで椅子に座り、ウォルターがまず口を開きました。
「2人共、ギブソンのことは内密にして欲しいんだ。この国に関わる事だからね」
「分かってるわ大丈夫よ。ねっ、オリーブ?」
「はい大丈夫です。言いません。あのそれで…、私の魔法の事なんですが…」
「オリーブの魔法のこと誰にも言わないで欲しいの」
アリシアがすぐにオリーブの代弁をし王子達に言いました。
「凄すぎるからか?」
「オリーブは父様からむやみに魔法は使うなって言われてたの。でも私達を救う為に今日使ってくれたの」
「そうだったのか。あぁ、言わないよ」
「あぁ、俺も言わない」
「ありがとう」
「俺達はオリーブに助けられた。そんな人が言うんだ、安心してくれ、決して誰にも言わないよ」
「あぁ、俺の腕を治してくれた。絶対に言わないさ」
「2人共ありがとう」
そしてオリーブは今までの事も王子達に話しました。
話し終わりオリーブとアリシア2人が部屋を出た後、残された王子2人は話していました。
「やはりあのエルフは、オリーブだったのか」
「あぁ、あの回復の時の暖かな緑の光、あれもあのエルフと同じだ」
「時々いたよそよそしいオリーブは、従者のアイリだったんだな」
「オリーブは魔物から俺達を救ってくれた」
「オリーブは俺達の命の恩人だな」
「オリーブはこの国で魔物をほとんど1人で、退治してたって話だったな」
「オリーブだけに無理をさせるわけにはいかないよな?アイザック」
「そうだな兄さん、これから本気で鍛錬するぞ」
「あのオリーブに、追いつけるようにしないといけないからな」
「あぁ、せっかく俺達に見せてくれたんだ、やらないといけないな。つかオリーブ怒らせたらヤバいな…」
「あぁ…、決して怒らせてはいけないな…」




