光の魔法
オリーブとアリシアは食事を終え部屋に戻ってもお喋りを続けました。
「あのね、オリーブ」
「どうしたのアリシア?」
するとアリシアが真面目な顔でオリーブに言いました。
「私、オリーブのために何かしたいわ」
「えっ?」
「オリーブは隣国の人なのに、この国の人を守ろうとしているわ。だけどそれに私は甘えてちゃダメだと思う。だからどうやって今まで魔物から人々を守ってきたのか、教えてほしいの」
「分かったわアリシア、でもそれは簡単よ」
「どういう事?」
「ミエールに頼めばいいのよ」
「ミエールに?でもミエールは力を貸してくれないわ」
オリーブはアリシアの側にいたミエールに話しかけました。
「ミエール、最初から分かってたんでしょ?アリシアがいい子だって」
話を振られたミエールは、興奮したように話し出しました。
「そうよ!だから依り代にしたわ!だけどこの子ったら親がいない寂しさを紛らわすため、変に意地を張るんだもの、力を貸したくなくなったの!」
「そうだったの?ミエール…、ごめんなさい…」
今度は側で聞いていたフォーレがミエールに話しかけました。
「アンタが最初からアリシアを導いてやれば、よかったんじゃないの?ミエール」
「私は自分で気付いて欲しかったの!フォーレ」
「ミエールお願いするわ、どうかアリシアに力を貸してあげて。そしてこの国の人々を守ってあげて…」
オリーブがミエールにそう頼むと、アリシアも続けて言いました。
「オリーブありがとう。ミエールお願いします、私に力を貸してください。もう勝手なことしないわ…」
「ほら意地っ張りミエール、何とか言いなさいよ」
フォーレもミエールに言いました。すると皆んなに言われたミエールがオリーブに言いました。
「そこまで言うなら仕方ないわね。だけど1つお願いがあるわ、オリーブ」
「なに?ミエール」
「どこかこの国が良く見える場所へ、アリシアを連れて行って」
「分かったわ。雷樺!」
雷樺の背に乗りオリーブとアリシアは学校の屋上へとやって来ました。
アリシアはミエールのおかげで雷樺の静電気が平気でした。
「ありがとう、雷樺」
「うん、オリーブ」
オリーブが雷樺を撫でながらお礼を言っていると、アリシアとミエールが2人で語りだしました。
「凄い!こんな所があったのね!でも暗くてよく見えないわね。ここで何をするのミエール?」
「歌ってアリシア、アナタの歌声を聞きたいわ」
「えっ?歌う?何故?」
「私はアナタの歌声が好きだった、だからまた聞きたいの」
「でも、しばらく歌ってないし…」
「私も聞きたいわ、アリシアの歌」
「オリーブ…、分かったわ。よく分からないけれど歌うわ」
オリーブに歌を聞きたいと言われたアリシアは、ミエールに言われた通り歌い始めました。
それはとても透き通った綺麗な歌声でした。
するとミエールはアリシアの綺麗な歌声に乗せ、光の魔法を放ちました。
光の魔法はキラキラと輝きながら、シンシア王国全体へと広がって行きました。
それはまるで、星が降ってきたかのようにとても神秘的な光景でした。
アリシアが歌い終わるとキラキラ輝いていたものも消えてしまいました。
「アリシア凄い!とっても綺麗な声だったわ!」
「オリーブ、ありがとう」
アリシアはオリーブに褒められ、顔を赤らめながら照れていました。
「アリシア」
「ミエール」
「アリシアの声、久しぶりに聞けて良かった。アリシアの声に乗せて光の魔法をシンシア全体に放ったから、アリシアの守りたい人もきっとこれからは楽になるはずよ」
「ミエール、ありがとう…」
「アリシア泣かないで、凄く良かったわ」
「オリーブ…」
オリーブは思わず感極まり泣いてしまったアリシアを抱き締めました。
その夜、綺麗な歌声と共にシンシアの国に星が降ったと噂になりました。
城に帰ったオリーブ達は、皆で同じ大きなベッドに入りぐっすりと眠りにつきました。
オリーブはよほど疲れていたのか、次の日のお昼になっても眠ったままでした。
そんなオリーブを見つめながら、アリシアはミエールと話していました。
「オリーブ、全然起きないわね」
「魔物退治で相当疲れたんじゃない?」
「ごめんねオリーブ、私がもっと強ければ…」
するとそんなアリシアにミエールが言いました。
「アリシア、王子達が廊下でそわそわしてる気がするわ」
「本当?ミエール」
「えぇ、本当よ」
「ほっときましょう、所であのオリーブらしくない窓辺に飾ってある2つは何?」
「さぁ?アイリに聞いてみたら?」
隣の部屋に待機していたアイリを呼ぶと、アリシアはあの窓辺の2つは一体なにかと聞きました。
「ピアノのオルゴールはウォルター様から、氷のバラの花はアイザック様からでございます」
「どうりで、オリーブの趣味には合わない気がしたわ」
そんなことを話していたいた時、オリーブが目を覚まし声をかけてきました。
「アリシア…、起きてたの?」
「オリーブおはよう、疲れてたのね。もうお昼よ」
「もうそんな時間か…」
「さっ、起きてご飯食べるわよ。王子達が廊下でうろうろしてるわ」
「うん、分かった」
オリーブはベッドから起き上がると、着替えをすませ廊下に出ました。
すると部屋から出てきたオリーブに王子達がすぐに近寄ってきました。
「オリーブ!」(※王子2人合わせて)
「アンタ達、オリーブが寝てるって言うのに廊下でうろうろしないでちょうだい!」
「すまなかった…」
「悪かった…」
アリシアに怒られた王子達はしゅんとしてしまい、トボトボと帰っていきました。
そんな王子達を見たオリーブはアリシアに話しかけました。
「アリシア…」
「うっ、分かったわよ。オリーブは優しいんだから」
アリシアは廊下の先をトボトボと歩いている王子達の背中に向かって話しかけました。
「あんた達!食堂に行かないの?これから私達、昼食に行くんだけど!」
すると王子達は振り返りすぐにこちらへと戻り、目を輝かせながらオリーブとアリシアの後ろをついてきました。
「こいつら本当、分かりやすいんだから…ボソッ」
「アリシア、何か言った?」
「オリーブは可愛いって言ったのよ」
「えっ?あ、ありがとう。アリシアの方が可愛いよ!」
そして皆で昼食をとり午後から皆で出掛けようという話になり、4人で同じ馬車に乗り込み出発しました。
「シンシアの街並みは綺麗ね」
「ヘイデンとは違う?」
馬車の窓から見える景色を見ながら隣に座るアリシアに、オリーブは話しかけました。
「全然違うわ。あんなに高い山もないもの。あの山の上の白いのは雪なの?」
「そうよ、あれはネージェ山よ」
「まだ溶けないの?」
「まだよ、夏になったら全て溶けるわ」
「へぇ、そうなんだ」
「ヘイデンは雪が降らないの?」
「降るわ。たまに積もることもあるけれど、すぐに溶けてしまうわ」
目新しいシンシアの景色にオリーブは心を奪われていました。
そんなオリーブに、目の前の席に座ったウォルターが話しかけてきました。
「そういえば昨夜、窓の外を見たかい?オリーブ」
「どうして?ウォルター」
「なんだか凄く輝いていたから、オリーブも見たかと思って」
「俺は寝てたから分かんねぇけど、朝メイド達が騒いでたな。歌がどうとか」
「それって」
「もしかして」
王子達の話を聞いたオリーブとアリシアは、見つめ合いながら笑い合いました。
そんな2人に王子達は疑いながら話しかけてきました。
「何か知ってるのかい?2人とも」
「知っているなら、白状しろ」
「どうする?オリーブ」
「それはアリシアに任せるわ」
「2人になら言ってもいいかしらね?オリーブ」
「う~ん、どうだろうアリシア」
「この国の王子だし、知る権利はあるかしらね、オリーブ」
「そうかもね、アリシア」
アリシアは王子達の方に向き直りると話しかけました。
「私よ。その光を降らせたのは」
「どういうことだい?アリシア」
「私が光の魔法を放ち、この国に魔物が出ないよう結界のようなものを張ったの」
「君が光の魔法の結界を?」
「そうよ、それが輝いて見えたのよ」
「とっても綺麗だったわ」
「じゃあ歌がどうのってのは?」
「それも私、歌いながら張ったの」
「アリシアの声、とっても綺麗だった」
王子達は何を言ってるのかよく分からないといった顔をしながら、ぽかんとしていました。
「信じてないみたいよ?オリーブ」
「急に言われても分からないわよ、アリシア」
するとオリーブが王子達に経緯を詳しく話しました。
「アリシアは光の精霊女王ミエールの依り代だってことは知ってる?」
「あぁ、何となく」
「前に聞かされた」
「その精霊女王と一緒に光の魔法をシンシア王国全体に放ったの。それが輝いて見えたのよ。そしてそれはアリシアの歌声が発動条件だったの。精霊女王はアリシアの綺麗な歌声に乗せて光の魔法を放ってくれたのよ」
「そんな感じよ」
「お前そんなスゲェ奴だったの?」
「驚いたな、あのアリシアがか…」
それを聞いた王子達はとても驚いていました。
「何よウォルター、私じゃ何か不服?」
「いや、そういうことでは…」
「でもそうね、私はずっと憎まれ口ばかり言ってたから、そう思うのも無理もないわ。ミエールも私に力を全く貸してくれなかったし。でもそんな私を変えてくれたのはオリーブよ。だから2人とも安心して、私はオリーブを傷つけないわ。絶対によ。むしろ変な虫からオリーブをこれから守っていくわ」
「変な虫…」
「俺達か…」
するとアリシアは興奮したように目を輝かせてオリーブに言いました。
「そうだ!オリーブ!」
「なぁに?アリシア」
「あのオリーブの部屋の窓辺に飾ってある変なやつ2つより、もっとオリーブに似合うものを私がプレゼントするわ!」
「部屋に飾ってる…」
「変なやつだと…」
そう言ったアリシアはオリーブをアンティークショップへ連れていきました。
アリシアは馬車を降りるなりオリーブの手を引き、店の中へと連れて行きました。
「こっちよ、オリーブ!」
「待って、アリシア!」
4人で店の中へと入ると、すぐに亭主の男性が話しかけてきました。
「これはこれはアリシア様いらっしゃいませ、おや後の方は王子!ウォルター王子、アイザック王子お越しくださいまして、ありがとうございます!」
「そんなことより、この子に似合う髪飾りないかしら」
「まぁ、何と美しく可愛らしいお方!お任せ下さいませ、アリシア様」
オリーブの顔を見るなり亭主は小ぶりの花が6つあしらわれた、綺麗な髪飾りを持ってきました。
花は赤、青、黄色、緑、オレンジ、黄緑の6色でした。
「こちらはいかがでしょうか。可憐なお嬢様にピッタリだと思われます」
「いいわね!それにするわ」
「かしこまりました、お包みいたします」
「すぐ付けていくわ、貸してちょうだい」
アリシアは亭主から髪飾りを受け取ると、オリーブの髪につけてあげました。
「わぁ!すごく綺麗!」
「とっても似合ってるわ、オリーブ」
「悔しいが…」
「似合っている…」
「ありがとう、アリシア!」
「いいのよ、私はオリーブにこれくらいしかしてあげられないから」
この時、アリシアが得意げに王子達に微笑んだ事をオリーブは知らないのでした。




