王子二人の思い
模擬戦が行われた日、城へ帰ってきたオリーブは部屋につくなりフォーレに話かけました。
「あのアリシアって子に、何かいた気がするわ、フォーレ」
「えぇ私も感じたわ。あれは精霊の気配。しかもあの子の魔法は光」
「うん。そうね」
「恐らくあれは、光の精霊女王だわ」
「光の精霊女王?!」
オリーブは初めて聞いた言葉にとても驚いてフォーレに聞きました。
「そう、ミエール」
「ミエール?」
「光の精霊女王ミエールは、あの子を依り代にしたのね」
「そっか、私と同じなんだ」
「でもミエールは、アリシアに力を貸していないわ」
「どうして?」
「それはあの子の性格よ。前にヘデラが言ってたでしょ?精霊は力を貸す者と貸さない者がいるって」
「うん、言ってた」
「ヘデラの言うとおり性格が関係するの。清い心の持ち主に精霊は力を貸すわ。だけどアリシアの心は難しい感じだから、ミエールは力を貸すのが嫌なのよ」
「そうなんだ」
「依り代にした時は、とても清い心の持ち主だったのかもしれないけれど」
「そっか、何だアリシアはいい子なんだ」
「何言ってるの、私の話し聞いてた?」
のんきなことを言うオリーブにフォーレは呆れて言いました。
「聞いてたよ。アリシアは心が清らかだって」
「それは昔、今は違うわ」
「どうして違うの?人の心は変らないと思うわ」
「そうね、オリーブは清すぎるから分からないんだわ」
楽観的なオリーブに、今日なにをされたか忘れたのかと思うフォーレでした。
そして次の日、学校へ少しだけ早く来たオリーブはアイザックが「行ってみるといい」と言っていた学校の屋上へ行ってみました。
「わぁ〜!!凄〜い!」
そこからは教室から見る景色とはまた違い、シンシアの街並みや山々あらゆるものが遠くまで見渡せました。
「とっても綺麗な景色」
「お前も来たのか」
「えっ?」
オリーブが綺麗な景色を見ていると後から声がし、振り返るとそこにはアイザックが横になり寝そべっていました。
「アイザック様!」
「アイザック」
「えっ?」
「アイザックって呼べ」
アイザックは立ち上がると、オリーブの近くまで歩いて近寄ってきました。
「アイザック?」
「それでいい。お前もっと砕けた感じで話せよ」
「いえ、それは…」
「昨日剣で戦う前、手加減しないって言ったら自分もしないって言い返したろ」
「あっ、そう言えばそんなこと言ったかも」
「あれが本当のお前じゃないのか?」
「もしかしてバレちゃった?」
「あぁ、バレバレだ」
「アイザックは鋭いのね」
「お前が分かりやすいからだろ」
「ここに来る前、母様にヘイデンの王女として他国に行くんだから、ちゃんとしなさいって言われて…」
「お前はお前じゃないのか?」
「分かった。アイザックには普通に話すわ」
「あぁ、それでいい」
「アイザックは優しいね。どうかした?」
何も言わなくなったアイザックにオリーブは問いました。
「いや…、俺先に教室行くわ…」
「うん?」
アイザックはオリーブの笑顔にまた照れてしまい、屋上から下りていきました。
そしてオリーブも教室へと入り授業は順調に進み、すると突然オリーブは外から魔物の気配を感じと取りました。
オリーブは窓の外を見ながら立ち上がり慌てて教室を飛び出し、下で待機していたアイリを連れ出して空いていた教室へ駆け込みました。
「アイリ!こっち!」
「どうされました?オリーブ様」
「魔物が出たわ!今から私になって!」
「かしこまりました」
オリーブはすぐにエルフへと変装し雷樺と共に消えて行きました。
アイリもすぐにオリーブへと変装し教室へ向おうとした所で、アイザックと出会いました。
アイザックは急に教室を飛び出したオリーブを心配し、追いかけてきたのです。
「どうしたオリーブ?!何かあったのか?!」
「いえ、何もありませんわ。教室へ戻りましょう」
「オリーブ…?」
どこかよそよそしい雰囲気のオリーブにアイザックは不思議に思いましたが、一緒に教室へ戻りました。
その後オリーブに変装しているアイリは、授業が終わるとすぐ馬車へ乗り城へ帰っていきました。
そしてアイザックも城へ戻り、魔物が出たのであまり外へは出歩かないようにと言われました。
城に戻ったアイザックは自室へ行き荷物を置くと、兄ウォルターの部屋へ向かいました。
「兄さん」
「どうした?アイザック」
「剣の鍛錬に行こう」
アイザックは先に城へ帰っていたウォルターに声をかけ、2人は魔物が出ていると言う話をすっかり忘れ、馬に乗り城から少し離れた草原へ行きました。
そこは2人でよく鍛錬をする場所でした。
(※ウォルターの愛馬は白馬、アイザックの愛馬は黒馬)
しかし草原へ着くと魔物が複数現れていて、そこには狼と一緒に1人で戦っている者いました。
「手伝うぞ、アイザック!」
「あぁ、兄さん!」
2人はすぐ手伝いに入り魔物退治に入りました。
一際大きな魔物に2人で挑みましたが相手はとても強く、2人ともあっけなく倒されてしまいました。
倒された2人は深手を負い動けず、魔物は容赦なく2人に止めを刺そうとしました。
『やられる!』
2人が同時にそう思った時、奥で戦っていた者が間に入り2人を庇い魔物にふっ飛ばされてしまいました。
ですがその者はすぐに立ち上がり持っていた短剣を構えましたが、刃が先程の衝撃で折れてしまっていました。
それを見たウォルターは、すぐに自分の剣を力を込めその者の方に投げました。
「これを使え!」
その者は剣を受け取り素早い動きで魔物をあっという間に倒しました。
そしてまた別の魔物を次々と倒していきます。
ウォルターとアイザックは、その者の素早く身軽な動きに驚きながらよく見ました。
それは同い年くらいのエルフの少女でした。
エルフの少女は草原にいた魔物を全てなぎ倒すと、王子達の側に歩いて近付き2人の前で屈みました。
「ありがとう」
そう一言だけ言うと剣をウォルターの側へ置き、傷付き動けない2人へ向け両手をかざしました。
「ヒール」
エルフの少女はそう呟き2人は暖かな緑の光に包まれ完全回復しました。
このエルフはオリーブで、使ったのが緑の魔法だとバレないように、あえてヒールと詠唱を唱えました。
そして少女は立ち上がると自身の刃先の折れてしまった短剣を拾い、近くにいた大きな灰色の狼は折れた刃先を口に加えて拾いエルフの少女に渡しました。
少女はそれを狼から受け取ると腰のポケットにしまい、落ちた弓を背負い狼の背に乗り一度2人の方を見た後、どこかへと消えていってしまいました。
「今のって…」
「噂になってた奴か…」
「そうだな…」
「強すぎだろ…」
「こちらが助けられてしまった…」
「回復まで出来るのかよ…」
「こんな回復魔法は見たことがない…」
「暖かな緑だったな…」
王子2人はエルフの少女にあっけにとられ、その後無言で馬にまたがり城へと帰りそれぞれの部屋に入りました。
そしてウォルターは先程の事を思い返していました。
『あのエルフの少女のあの剣の動き、あれはオリーブだ。しかしオリーブは城にずっといたはず。それにアイザックに負けていたじゃないか。あっ…』
ウォルターはある事を思い出しました。
それは以前ウィリアムと剣の対戦をし終わった時に言われた事です。
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「ウィリアムさん、強すぎますよ」
「俺は叔父のカーティスさんから、剣をたっぷり教え込まれたからな」
「へぇ、そうなんですか」
「だがな、ウォルター」
「何ですか?」
「俺の妹はもっと強いぞ」
「あれ、妹いましたっけ?」
「いとこだが妹と呼んでる」
「そうなんですか、いとこが強いんですか?」
「そうだ俺より強い」
「またまた冗談でしょ、好きなんですねウィリアムさんは妹さんを」
「冗談ではないぞ」
「はいはい」
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『あの時はこの人より強い人なんているはずないと思ったが、まさか本当に…、いやないな考えすぎだ。だが何故エルフの少女は急に現れたんだ?』
そして同じ頃アイザックも今日の事を考えていました。
『今日の教室を出て行ってからのオリーブ、変だった。あれは本当にオリーブなのか?そしてあのエルフの少女、何か引っかかる…』
そして2人は助けに入ったつもりが逆に庇われ、自分の実力不足でエルフの少女がふっ飛ばされた事を思い出し、何も出来なかった事を悔やみました。
そしてその頃オリーブはというとエルフの里にいました。
短剣が折れたのでロニセラに直してもらいに来ていました。
「オリーブ!」
「オリーブだ!」
「ネリネ、リコリ!」
久々に会った3人は抱き合いながら再会を喜んでいました。
「シンシアはどう?」
「寒いの?」
「そこまで寒くはないわ、とてもいい所よ」
そんな仲良く話す3人にロニセラが話しかけました。
「オリーブ、ほら出来たぞ」
「ロニセラありがとう!じゃあ、また来るね〜」
「バイバイオリーブ!」
「バイバイ!オリーブ」
『あいつ疲れた顔してたな、大丈夫かよ』
ロニセラは疲れた様子のオリーブが少し気にかかりました。
そしてオリーブはシンシアの城へと帰ると、泥のようにベッドで眠りました。
そんなオリーブをアイリは切なげに見ていました。
『オリーブ様、こんなにお疲れになって…、私はオリーブ様のために影武者しか出来ないなんて。オリーブ様が戦ってる時、私も一緒に行けたらどんなに嬉しいか…。あぁ女神エイレーネよ、どうかオリーブ様に癒やしとなる何か拠り所を…』
そして天界では、女神エイレーネがアイリの声を聞いていました。
『エルフの娘アイリよ。確かにオリーブの小さは背中には、1人では抱えきれない程のたくさんの物が乗っています。
ですがアナタの願いはもう少しだけ先のこと。しかしせっかく願ってくれたのです、時を少しだけ早めてあげましょう。』
すると女神は手の平を出し顎の下に添えると『フッー』っと息を吹きました。
そして女神の息は『霧の粒』となり地上へと落ちると、まだ起きていたある少女へと降り注ぎました。
「寒っ!早く寝よう」
少女は冷たさを感じ布団の中へと入り眠りにつきました。




