アリシアとの出会い
オリーブの歓迎パーティーが城の大広間で開かれていた楽しい雰囲気の最中、事件は起きました。
何と城の回りに複数の魔物が現れたのです。
パーティーに招待されていた人達は、危険だと言う事で次々に帰されオリーブも城の中の自室へと下がりました。
魔物は騎士達が対応に応じていましたが、数が多く苦戦を強いられていました。
自室の部屋へ戻ったオリーブはフォーレに話かけました。
「これって、私のせい?」
「そうね、オリーブを狙ってる可能性は高いわ」
「そう、なら私がやらなきゃね。精霊よ…」
オリーブはエルフに変装し、近くに待機していたアイリを呼びました。
「アイリ」
「はい、オリーブ様」
「私が魔物を倒します。あなたはその間ここで私のフリをして下さい」
それを聞いたアイリは、すぐにオリーブに変装しました。
(※アイリは精霊に好かれているので変装が得意)
「いつ戻るか分かりません。それまで出来ますか?」
「やってみます、オリーブ様」
「では頼みました、雷樺行くわよ」
「うん!」
灰色狼の雷樺の背に乗ると、オリーブはあっという間に去っていきました。
(※雷樺は姿を消すことが出来る、オリーブを背に乗せたまでもOK)
「どうかご無事で…」
アイリは心からそう願いました。
実はヘイデン王国にいる時も魔物は出ていましたが、オリーブはフォーレの力を借りヘイデン王国全体に緑の魔法を張り巡らせ魔物の侵入を未然に防いでいました。
しかしここシンシアではそうは行きません。
緑の魔法を使えるのは世界にただ1人オリーブだけ、魔法を使えばオリーブだとバレ、ヘイデン王国の情報を他国へ漏らす恐れがあるのです。
それは旅立つ前、父カーティスからも言われていました。
「いいかオリーブ。緑の魔法をむやみに使ってはならん」
「分かりました、父様」
「下手すれば外交問題へと発展しかねない。すまないなオリーブ」
「大丈夫ですわ」
そんな事がありオリーブは緑の魔法を使えず、自身の腕だけで魔物を倒すしかありませんでした。
しかしオリーブはかなりの戦闘訓練を受けています。
そう簡単にやられる事もありません。
「あの少女と狼は一体?」
「次々に倒して行くぞ」
「強い、俺たちも負けられない!」
騎士たちは突如現れた謎の強い少女に負けじと奮起しました。
その頃オリーブに変装していたアイリの下に、ウォルターが様子を見に来ていました。
「オリーブ大丈夫かい?不安な思いをさせたね」
「お気遣いありがとうございます。大丈夫ですわ」
「そうか、なら良かった。パーティーも中止になってしまって、申し訳なかった」
「いえ、お気になさらず」
「わが国の騎士は訓練を受けている。きっと大丈夫だ」
「えぇ、分かっていますわ」
「オリーブは強いんだな」
その様子を部屋の入口から見ていたアイザックは何か違和感を覚えましたが、それが何か分かりませんでした。
「兄さん、そろそろオリーブを休ませよう、疲れてるだろ」
「あぁそうだね、ゆっくり休むといい。おやすみオリーブ」
「おやすみなさいませ」
王子2人が部屋を出て行きしばらく経つと、魔物を倒し終えたオリーブが部屋へ帰ってきました。
「疲れた〜、アイリ〜」
「オリーブ様!」
「お風呂入る」
「分かりました、すぐに支度をいたします」
「雷樺もお疲れ」
「お疲れ、オリーブ」
オリーブは側にいた雷樺を撫でながら、窓辺に飾った王子達からのプレゼントを見つめました。
『私がこの国の人々をを守らなきゃ。私のせいで怖い思いをさせてはいけない』
オリーブはこの国で1人で魔物を倒して行こうと心に決めました。
そして翌日、城の中は謎の少女の話題で持ち切りになっていました。
「昨日もの凄く強い女の子が魔物を倒した」
「どうやらその少女はエルフだった」
「腰に短剣、背中に弓を背負っていた」
「大きな灰色狼を連れていた」
「1人で全て倒した」
などと噂はあっという間に広まり、王都全体にまで広まっていきました。
そしてオリーブはシンシア王国の王侯貴族の通う学校、『聖ラァーヴル学園』の中等部へと入学しました。
この学校の紋章には青い蝶が描かれています。
学校は城から少し離れた高台にあり、教室からは綺麗な景色が見えました。
「では皆さん。まずは皆さんのレベルを知るため模擬戦をしてもらいます。まずは剣術から」
新入生は学校の校庭へと呼び出され、模擬戦をすることになりました。
まずは男子と女子に別れそれぞれ別に戦い、最後は勝ち残った者同士が決勝戦をすると言う勝ち抜き戦です。
もちろんオリーブは女子の中で勝ち残り、男子で勝ち残ったのはアイザックでした。
オリーブはアイザックと戦う前に、心の中でフォーレに話かけました。
『フォーレ』
『な〜に、オリーブ?』
『他国の王子に勝ったらまずいわよね?』
『さぁ?私知らない』
『もう、フォーレったら!』
『なら負けたらいいじゃない。オリーブならうまく負けれるでしょ?』
『分かったわ』
そんな目の前のオリーブが、どこか様子のおかしい事に気付いたアイザックは声をかました。
「緊張してんのか?相手がオリーブだからって手加減しないぞ」
「大丈夫よ、私も手加減しないわアイザック」
「へぇ、言うじゃんか」
互いに微笑みながら言い合うと、先生の掛け声がかかりました。
「では2人共よろしいですね?決勝戦、はじめ!」
合図とともに戦いがはじまりました。
「ちょっと!アイザック様とオリーブ様が戦ってるわよ!」
「2人共すごく強いわ!」
すると他の学年の生徒達も興味津々に校庭へと出てきました。
その騒ぎを聞き付けたウォルターも2人の戦いを見に来ました。
「あれは…」
ウォルターは驚きました。オリーブの剣術はまるでウィリアムにそっくりだったのです。
ウィリアムとはオリーブのいとこ、そうウィリアムはシンシアへ留学していました。
ウィリアムとウォルターは同じ王子同士と言うこともあり意気投合、すぐに仲良くなりました。
そしてお互いにとても強かったのです。
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「ウォルター、俺は卒業するがここへ妹が入学してくる」
「妹?」
「あぁ、俺のいとこさ。言わゆる美少女だ」
「そうですか」
「信じてないな!」
「いや、そんなことは…」
「見れば分かる。だが惚れてはいいが、お前にはやらん!」
「はいはい、分かりました…」
「それからウォルター、お前に頼みがある」
「なんですか?ウィリアムさん」
「あいつは自分で何もかも全部背負い込むところがある。気にかけてやってくれないか?」
「分かりました」
「オリーブを頼んだぞ」
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『似ているウィリアムさんにそっくりだ。いやでもオリーブの方が動きが少し軽やかか』
「そこまで!勝者アイザック王子!」
2人の勝負が終わると「わぁ〜〜!!」っと一気に歓声があがりました。
「俺に付いてこれんの、兄さんだけかと思ってた」
「そうなんですか?」
「あぁ、お前も強いよ」
「ありがとう」
戦い終わったオリーブとアイザックは握手を交わしました。
そんな仲良く話す2人を、ウォルターは遠くから苦々しく見ていました。
続いては魔法です。
魔法は勝ち抜き戦ではなく、ただ模擬戦をやると言う事でした。
「待って下さい、先生!」
「何ですか?アリシアさん」
オリーブの番になった時です、1つ年上の上級生アリシアが突然現れ先生に言いました。
『アリシア=スニァシオ』はシンシア王国の侯爵令嬢で、何と光の魔法を保持していました。
「私がオリーブ様と戦います」
「えっ?アリシアさんが何故?」
「私は光の魔法、この方は緑の魔法だと聞きました。どちらが上か試したいのです」
「いえ、ですが…」
「お願いします!」
そう言われた先生は一瞬悩みましたが、すぐに切り替えて言いました。
「まぁいいでしょう。回復ポーションもありますし大丈夫でしょう」
「よろしいですか?オリーブさん」
「私は何でも構いません」
オリーブはまたフォーレに心の中で話しかけました。
『フォーレあの子、光の魔法って言ったわよ?本当?』
『えぇ、確かに光の力を感じるわ』
『そうなんだ。えっ、じゃあ私やられちゃう?』
『魔力量も大したことないし、オリーブの敵じゃないわ』
『そっか』
オリーブがフォーレと話していた時、アリシアもオリーブを見ながら意気込んでいました。
『隣国の王女のくせに、アイザック様と馴れ馴れしく話したり、ウォルター様も興味津々にこの女のこと見てるし。もう許せない!あんたとの格の違い見せてやるんだから!』
そしてすぐに試合は始まりました。
「では、はじめ!」
合図と共にオリーブは魔法で蔦を出しアリシアを拘束しました。
アリシアは身動きがとれず、あっという間にオリーブが勝ちました。
「オリーブさんの勝利!」
歓声が湧いたあと、他の生徒達はアリシアを見ながらヒソヒソと話していました。
「凄いわ!オリーブ様があっという間に勝ったわ!」
「やっぱりアリシア様は、光の魔法うまく使えないのね」
「確かに。たんか切って出てきたのに、何か弱くない?」
「そうよね?剣だってまともに出来ないのに」
「恥ずかしくないのかしら」
そんな事を周りから言われ、アリシアは苦々しくオリーブを見つめていました。
『どうして、どうして私が負けるのよ!あんな女に何で私が負けなきゃいけないよ!私は光の魔法なのよ!凄いはずなのに!』
オリーブはアリシアの蔦の拘束を外し「ありがとうございました」とお礼を言い、背を向け歩き出しました。
『許さない!』
するとアリシアから『光の矢』が放たれ、後ろを向いたオリーブ目掛けて飛んできました。
それをずっとオリーブの側で身を隠し潜んでいた雷樺が危険を察知し姿を現すと、飛んできた光の矢を弾きアリシアに向け怒り叫びました。
「貴様!何をする!」
アリシアは突然大きな精霊獣の雷樺が現れた事に驚き、腰を抜かしその場にへたり込み怯えてしまいました。
「雷樺!私は大丈夫よ、ありがとう守ってくれて」
オリーブは今にもアリシアへ飛びかかっていきそうな雷樺へ駆け寄ると、顔を撫でながら落ち着かせました。
突然の精霊獣の登場で他の生徒や皆が驚き固まりましたが、先生が次の模擬戦へと移行しその場は何とか収まりました。
「隣国の王女オリーブには、大きな精霊獣のお供がいた」
そう噂は学校中に広まり、城そして王都全体へ流れていったことは言うまでもないでしょう。




