合同練習 2
その頃、私は体育館で琴弓と一緒に練習試合を見ながら、点数をボードに付けていた。
すると先程休憩のために体育館を出た澪央が、また中へと戻ってきた。
「ほらっ璃花、澪央くん戻ってきたよ」
「うん、そうだね」
「そうだねって」
「それしか言えないでしょ。今は近寄れないし」
「まっ、そうだけどさぁ」
「でも何か機嫌悪いな」
「澪央くん?」
「うん、少しイライラしてる」
「よく分かるね。私には全然分かんないや。さすが彼女」
その後も琴弓と他愛ない会話をしながら点数をボードに付けていたその時、私に近寄ってきた智実に横から声をかけられた。
「璃花ちゃん」
「智実ちゃん、どうかしたの?」
「ちょっと聞きたい事あるから、一緒に来てくれない?」
それを聞いた私は隣りにいた琴弓に聞いた。
「琴弓、私離れて大丈夫?」
「いいよ。大丈夫だから、行ってきて」
「ありがとう」
「ごめんね琴弓ちゃん。ちょっと璃花ちゃん借りるね」
「うん、いいよ〜。いってら」
私はその場を琴弓に任せ、席を立ち智実に連れられ体育館を出ると、智実は私を体育館の裏の誰も来ないような所へと連れて行った。
「璃花ちゃん」
「どうしたの?智実ちゃん、こんな所で」
「ちょっと誰にも聞かれたくなくて」
「誰にも聞かれたくない?」
「あのね璃花ちゃん。あんな男やめた方がいいよ」
「えっ?」
すると智実は澪央の事を『あんな男』と言い、いろいろと悪口を私に言ってきた。
「さっきちょっと話したの。澪央くんと」
「えっ、澪央と話た?」
「そう。いきなり腕掴まれてさ、怖かった」
「腕を掴んだ?澪央が?智実ちゃんの?」
「そうなの、何か可愛いねとか言ってきてさ、超怖かった。目つき悪いし、口も悪いし。マジあんな男やめた方がいいよ璃花ちゃん」
「それで?」
「えっ?」
「それからどうしたの?」
私は無表情になり、智実の目を真っ直ぐに見つめながら話の続きを聞いた。
『おっ、これはイケるな。でも思ったよりこの子、優しくなさそうだな』
私の目付きが変わった事に気付いた智実は、少しだけ怯んだが変わらずそのまま話を続けた。
「それから連絡先聞いてきてさ。もちろん私は教えてないよ。でもこういうのって良くないじゃん?だから璃花ちゃんには、教えてあげようと思って」
「へぇ。それで智実ちゃんは私と澪央をどうしたいわけ?」
「えっ?」
「それ嘘だよね?」
私は壁際にいた智実の近くに手を付き、目を覗いた。
「澪央の事、わざと悪く言って私にどうしてほしいの?」
「えぇっと…」
澪央の事を悪く言われ頭に血が上ってしまった私は、気付けば智実の胸ぐらを掴んでいた。
「これ以上、澪央のこと悪く言ったらその化粧で誤魔化してる顔、誤魔化せないようにしてやるけど、いい?」
「………あ………え…?璃花ちゃん…、ごごごめんなさい!!」
智実はその場から逃げるように、あっという間に去っていった。
私はまた体育館に戻り、琴弓の隣の席に座った。
「あっ、璃花戻ってきた。早かったね?智実ちゃんの用事なんだったの?」
「えっ、さぁ?」
「さぁって、何かあった?」
「別に何も。多分もう帰ったんじゃないかな」
「帰った?何で?」
「さぁ?」
私はそれからも琴弓にしつこく聞かれたけれど、それ以上何も言わなかった。
そしてその時から智実は姿を見せなくなった。
夕方頃、帰ったという連絡がきたと智実と同じ高校のマネの人が言っていた。
「マジで帰ってんじゃん。璃花、本当に何も知らないの?」
「うん、知らな〜い」
「絶対、何かしたよね?」
「なんの事?琴弓」
「どうせ澪央くん絡みでしょ?隠したって私分かるんだから」
「どうだろうね」
「何か狙ってたぽかったもんな、智実ちゃん」
「その名前、もう言わないでくれる?」
「ほらっ、やっぱ何かあったんだ」
「ごめん私トイレ」
「逃げたな」
夜になり就寝前、私は琴弓にしつこく聞かれながら話を逸していると、昨日と同じように澪央から『外に来い』とスマホにメッセージが入り私は外に出た。
私はまた澪央に手を引かれ、校舎の裏の方に連れて行かれた。
「璃花、昼間、大丈夫だったか?」
「昼間?なんの事?」
「あの変な女、璃花を外に連れ出したろ?」
「あぁ、見てたんだ」
「横目で見えた。何かされなかったか?」
「大丈夫、何もされてない。って澪央も何かされたの?」
「璃花のこと悪く言ってきて、連絡先教えろとか言われた」
「そうなんだ。私にも澪央のこと悪く言ってきた。だから頭きて少し言ってやったら帰っちゃった(笑)」
「お前な…。そんなのほっとけよ、何かされたらどうすんだ?」
「だって澪央のこと悪く言うなんて許せないじゃん」
それを聞いた澪央は私のおデコにデコピンをした。
「いたっ!」
澪央は少し怒った感じで私に言ってきた。
「勝手な事すんな、お前に何かあったら俺はどうすりゃいいんだよ」
「ごめんなさい」
「思ってねーだろ?」
「バレた?」
すると澪央は私を抱き締めた。
「無茶しやがって、何を言ったんだ?」
「言わなきゃダメ?」
「あぁ、ダメだ」
「どうしても?」
「どうしてもだ、さっさと言え」
澪央は私を少し離し、顔を覗いてきた。
「引かない?」
「そんな酷いこと言ったのか?」
「うん…」
「お前、昔からキレるとたち悪かったからな…」
「そんなことないもん」
「ある。で、何言った?引かないから言え」
「胸ぐら掴んで、これ以上、澪央のこと悪く言ったらその化粧で誤魔化してる顔、誤魔化せないようにしてやるって言った」
「お前、俺よりこえーな」
「澪央よりは怖くない」
「普段、優しいからか怒ると昔っから怖かったからな…」
「嫌いになった?」
「なんねーよ。俺を悪く言われて怒ったんだろ?」
「そうだよ」
「なら、これ以上は何も言えねーよ」
「よかった」
「だけど」
「だけど?」
「お仕置きはする」
「えっ?」
澪央は右手で私の着ていたTシャツの裾を持ち、下からめくりはじめた。
「こんなとこで何する気?澪央、ねぇってば」
「黙ってろ」
澪央はその場にしゃがみ込み、片手で私のTシャツの裾を掴むと上へ持ち上げ、もう片方の左腕で私の腰に手を回し支えると、露出した私の肌に吸い付いた。
「いった!」
澪央は私のお腹にキスマークを付けてきた。
「そんなとこに付けないでよ」
「見えねーからいいだろ」
「皆んなで、お風呂入るんだから見られるよ」
「女子だけだろ?ならいいだろ」
「もう(怒)」
「怒るならまた付けるぞ」
「馬鹿、変態」
「あ〜ぁ、口答えしたからまた付ける」
「待って待って!ごめんってば」
「遅い」
澪央は先程よりも少し下に、もう1つお腹にキスマークを付けた。
「また付けた、信じらんない」
「怒んなよ」
「もう帰る」
「あっ、璃花待てって!」
私は怒って帰ろうとしたが、澪央にすぐ引き止められ後から抱き締められた。
「離して」
「離さない。そんなに怒んな。許せって。好きだ璃花」
「そう言うこと言うのズルい…」
「ズルくていい」
澪央は私の前に移動すると、顎に手を添え持ち上げキスをしてきた。
深く何度も口付けられ、その後に澪央は私を抱き締めた。
「璃花、好きだぞ」
「知ってる」
「誰にも渡さない」
「うん」
「もう怒ってないか?」
「怒ってない」
「よかった…」
私は昔から怒っていても澪央に抱き締められキスをされると、妙に気持ちが冷静になり落ち着く所があった。
澪央は抱き締めていた手を緩め、片手で私の頬に触れながら目を合わせた。
「この合宿終わったら家に泊まりに来い」
「いいよ」
「じゃあ終わったその日な」
「早っ」
「早く璃花と2人きりになりたい」
「澪央はそればっかり」
「好きなんだから仕方ねーだろ」
「もう、分かったって」
「そろそろ戻るか」
「そうだね」
私達は再び口付けを交わし、それぞれの部屋へと戻った。
翌日も合同練習は続き、私と澪央が話す時間など当たり前だがなかった。
そしてその日の夜、澪央に校舎裏に連れて行かれた私は澪央から注意をされていた。
「璃花、明日は気を付けろ」
「明日?何で?」
「明日で最後だから、お前を狙ってる奴らが声かけるって言ってたぞ」
「そうなんだ」
「それも1人2人じゃねーぞ」
「それ本当に?」
「本当だっつーの。風呂でも他校の奴らお前のこと話してたし」
「でも話かけるって言っても、皆んなの前ででしょ?世間話とかじゃないの?」
「それだけで済めばいいけどな。明日は絶対1人になるなよ。分かったな?」
「分かった。琴弓とか別のマネの子と一緒にいるようにする」
「あぁ、もしあれなら俺のとこに来い。いいな?」
「うん、分かった。そうする」
「可愛すぎる彼女持つのも苦労する…」
「何それ?」
「こっちの気も知らねーで、お前は呑気だな…ボソッ」
「んっ?なに澪央?」
すると澪央は私を抱き締めてきた。
「お前は俺のだ。忘れんなよ」
「分かってるよ」
澪央は私を抱き締めていた手を緩め、私の髪に触れながら言った。
「明日、終わったら駅で待ち合わせな」
「うん、1回家に帰ってから行くから」
「あぁ、分かった」
そしてまたいつものように口付けを交わし、それぞれの部屋へと戻った。




