2人の記憶
颯麻と別れ、私の部屋へと入ると澪央がすぐに抱き着いてきた。
「璃花」
「なに?澪央」
「颯麻とあんま仲良くすんな」
「言うと思った」
「分かってんなら、ちゃんと離れろ。なにされたと思ってる?」
「部屋に行ったり2人きりにはなってない。登下校が一緒になるだけ。これじゃダメ?」
「本当に2人きりなってないのか?」
「なってないなら安心して」
私は澪央をテーブルの前に座らせ、自分も隣に座った。
「本当だな?」
「本当だよ。私が嘘言ったら澪央、分かるでしょ?」
「あぁ、だいたいは分かる」
「なら私が嘘ついてると思う?」
「思わない。だけど心配だ…」
澪央はそう言うと私の肩に寄りかかってきた。私は寄りかかられた澪央の頭を撫でた。
「颯麻だって澪央にあんなことされたんだから、私に手を出さないと思うけど?」
「そうだな、分かった。信じる」
澪央はすぐに起き上がって、私と目を合わせて言った。
「今日、お父さんは?」
「遅くなるとは言ってたけど」
「よしっ、なら帰ってくるまでに風呂まで済ませよう」
「泊まる気?」
「あぁ、明日土曜だし。早く出て家に行こう」
「部活は?」
「ある、そのまま一緒に学校来いよ。璃花なら見てていいから」
「えっ、私行っていいの?」
すると複雑な表情をしながら澪央はブツブツと言いだした。
「いや、やっぱダメだ…。先輩達に囲まれる…」
「そうでしょ?今日は帰ったら?でっ、明日の部活終わる頃に私、澪央の学校行くから」
「分かった、そうする」
澪央はそう言うと名残惜しそうに、少し拗ねた感じで私を抱き締めてきた。
「どうしたの?」
「今日は璃花と一緒に寝ようと思ってたのに」
「そっか。なら明日は一緒に寝ようね」
「あぁ、風呂も一緒に入る」
「いいよ、一緒に入ろう」
「璃花、好きだ」
「ありがとう、私も好きだよ澪央」
私に抱き着いてきた澪央の頭を撫でながら、しばらく部屋で2人過ごしたあと私はきちんと家へ帰るよう、優しく澪央を促した。
翌日、私は澪央の部活が終わる頃学校へと向かい、一緒に澪央の家へと行った。
すると家には澪央のお父さんがいた。
「親父いたのかよ」
「あぁ、そちらは?」
「彼女」
「お前に彼女か。驚きだな」
澪央のお父さんは彼女と聞き、驚いた顔をしながら私を見てきた。
そしてそんな澪央のお父さんは、澪央とそっくりな顔と背丈だった。
私は初めて会う澪央のお父さんに、とりあえず簡単に挨拶をした。
「初めまして、栖咲璃花と申します」
「父です。こんなんでよければ仲良くしてやって下さい」
「はい、よろしくお願いします」
「よくお前みたいな無愛想が、こんな可愛らしい子、捕まえたな?」
「うるせぇ、今日泊まっから邪魔すんな」
「あぁ、好きにしろ。私はもうすぐ出るから」
「そうか、行くぞ璃花」
「えっ、うん」
私は澪央に手を引かれ部屋に向かった。途中私は離れる前に、澪央のお父さんに軽くお辞儀をした。
「わりぃ、親父いると思わなかった」
「うん、いいよ。いつかは会わないといけないから」
部屋に入り荷物を置くと澪央がテーブルの前に座り、私は横向きで澪央の足の間に座らされた。
「璃花ここ」
「はいはい」
「横向きな」
「うん」
自然と澪央の胸元に私は寄りかかった。
すると澪央の心臓の音が聞こえ、凄く鼓動が早くなっているのが分かった。
「澪央の心臓ドキドキしてる」
「当たり前だろ、璃花といるんだから」
「いつも一緒にいるのに?」
「そうだ、お前と違うんだ」
「澪央、私の胸触ってみて」
「何だよ急に」
「いいから、そこじゃなくて真ん中」
私は澪央の手を自分の胸にくっつけた。
「ドキドキしてるの分かる?」
「分かんねーからもっと触る」
「あっ、もう」
そのまま私は服を捲くられ脱がされながら、深く口付けられた。
その後、台所に行き2人で夕食を作り食べたあと、私と澪央はお風呂に入った。
「そういえば璃花、最近街によく行くな?」
『ギクッ』
私は湯船に浸かりながら後から澪央に抱きすくめられ、ここ最近街に行っていることを聞かれていた。
「何か隠してんのか?」
「隠してない」
「へぇ、もし浮気だったら分かってんだろうな?」
「そんな事するわけないでしょ。相手もいません」
「じゃあ何か街に用あんのか?」
「クラスの友達に誘われるの。断るのもなと思って」
「ふ〜ん」
『もう街には用なくなったけどね』
私は笑いながらそんな事を考えていた。すると私の顔を覗いてきた澪央に、笑っているのを見られた。
「なに笑ってる?」
「笑ってないよ」
「何かおかしいな」
「おかしくない」
その後お風呂から上がり部屋へと戻り、澪央のシャツ1枚の私はテーブルの前で澪央に寄り添っていた。
「璃花、本当に俺に何か隠してない?」
「隠してない」
「本当か?」
「本当だよ」
「何か若干、怪しいんだよな…」
私はこれ以上、街に行ったことを聞かれたくなくて話をそらした。
「それよりさ、夏休み本当に別荘行くの?」
「ほらっ、話そらした」
「そらしてない」
「あぁ、行く。璃花と2人で旅行だ」
「旅行か〜。楽しみ」
「璃花、乗り物平気か?」
「うん、全然平気。乗り物酔いしたことない」
「そうか良かった。電車乗り継ぐからな」
「遠いんだっけ?」
「少しな。朝出れば昼には着く」
「そっか。それくらいなら楽しそう」
「たぶん別荘、璃花ビックリする」
「えっ、ビックリ?」
「あぁ」
「何がビックリするの?」
「それは行ってからだ」
「分かった。楽しみにしてる」
『私も澪央がたぶんだけど、ビックリする事があるよ。でもまだ言わない』
私はそんな事を考えながら、また思い出し笑いしていた。
「なに笑ってる?さっきも同じ顔してたな」
「ないしょ」
「何が内緒だ、言え」
「内緒だもん、言うわけないでしょ」
「もしかして街に最近よく行ってるのと関係あんのか?」
「さぁ?どうでしょ〜」
「あるな。何だ?何を隠してる?」
「言わない」
「言わなきゃ、くすぐるぞ」
すると理由を聞き出そうと、澪央がくすぐってきた。
「キャー、やめて(笑)くすぐったい〜!」
「ほらっ、言え」
「言わない(笑)やめて〜」
「強情だな」
「そこまでの事じゃないから、あんまハードル上げないで」
「ならっ、言え」
「いやだ、もう街には行かないから」
「何で行かないんだ?俺に聞かれたからか?」
「違う、行く必要なくなったから」
「何が行く必要ないんだ?」
「さぁ?」
「何が『さぁ』だ。ほらっ、早く白状しろ」
「言わない、くすぐったいから、もうやめて〜(笑)」
__________________
それから約1ヶ月後、学校が夏休みに入った7月下旬頃、私と澪央は2人だけで旅行に行った。
電車をいくつか乗り継いで、私達は山間の駅に到着した。
「こっから少し歩くからな」
「分かった」
「ほらっ、荷物よこせ」
「えっ、いいよ別に」
「いいから」
「ありがと」
澪央は私の荷物を持ち、私達は澪央の家の別荘へと向け歩き始めた。
「山間なのに人多いね」
「ここらへん観光地だからな」
「そうなんだ。じゃあ他にも別荘いっぱいあるんだ?」
「あぁ、いっぱいある」
「ふ〜ん、小さい頃よく来てたとか、そんな感じ?」
「まぁ、そんな感じだ」
「そっか、何かいい所だね。皆んな来るの分かる」
「いや、まだ見てない」
「何を?」
「これから分かる」
「うん?」
しばらく歩き澪央の家の別荘へと私達は辿り着いた。
「でかっ」
「ちゃんと管理はしてもらってるはずだから、中は大丈夫なはすだ」
「管理までしてもらってんだ。全然来てないのに」
「あぁ、まぁな」
「澪央ってお坊ちゃんだったんだね」
「そんなわけねーだろ」
別荘はウチの家よりも立派な建物だった。
澪央が鍵を開け中へと入ると、綺麗に掃除され整い、家具や食器などもきっちりと揃っていた。
「これなら、大丈夫だな」
「凄い、ホテルみたい!天井も高い!」
「璃花」
「んっ?」
「2階行くぞ」
「うん!」
澪央の家の別荘の中に入り辺りを見渡していると、2階に行くぞと澪央に声をかけられた。
階段を登り2階へと上がると、澪央が寝室のドアを開けた。
「ほらっ、中に入れ」
「うん」
澪央が私に先に中の寝室に入れと促し、私は先に入った。
「えっ、凄い!」
私は持っていたショルダーバックをその場に置き、すぐに部屋のバルコニーに出て、そこから見える景色を見ていた。
澪央も荷物を置き、そんな私を後から追いかけてきた。
「これって湖?」
「あぁ、そうだ」
私は後にいた澪央に、振り返りながら話しかけた。
「綺麗!ねぇ、でもこれって…」
「気付いたか?」
「昔、行った別荘と似てる?」
「そうだろ?俺も最近思い出して驚いた」
するとすぐに澪央は私を後から抱き締めて言った。
「俺達が出会ったのは偶然じゃない。この景色が何よりの証拠だ」
「そうだね、偶然じゃないね」
私は自分を抱き締める澪央の腕に、自身の手を添えた。
それは前世で新婚旅行に行った、湖の見える別荘から見た景色とよく似ていた。
「もしかして今かな…」
「何がだ?」
「澪央ちょっと離して」
「あぁ」
私は澪央から離れると寝室の中に入り、自分のバッグを探り中から箱を取り出した。
「何してる?」
「何かタイミング的に今かなと思って」
「はっ?」
澪央は中に入り自分のバッグを漁る私を、不思議に思い話しかけてきた。
私はまだバルコニーにいた澪央に近付き、箱を差し出して言った。
「今日誕生日でしょ?プレゼント」
「俺に?」
「うん、お誕生日おめでとう」
「ありがとう、開けていいか?」
「もちろん」
澪央は私から箱を受け取ると蓋を開けた。
「璃花、これって…」
蓋を開け中を確認した澪央は、驚いた顔をした。
「似てるでしょ?」
「あぁ、似てる。昔くれたやつと」
「これを探しに街に行ってたの」
「何だ、そうだったのか」
「つけてあげる」
「あぁ」
今日は澪央の17歳の誕生日。私は昔レオにあげたネックレスと、そっくりな物を偶然街で見つけ、それを澪央にプレゼントした。
澪央は私がネックレスを付けやすいように少し屈み、私はそんな澪央の後ろに周りネックレスを付けてあげた。
「はい、つけたよ」
「ありがとう璃花。すっげぇ、嬉しい!」
「それでね澪央」
「何だ?璃花」
そしてまた澪央の前に移動した私は、自分の服のポケットに手を入れた。
「これ実はペアのネックレスだったの。だから私も欲しくなって色違いの買っちゃった」
私はポケットから自分用のネックレスを取り出した。
「本当だ、こっちは白か」
「うん、澪央のは黒」
「なら俺がつけてやる」
「うん」
細身のプレートに十字の線が入り、その線に澪央のは黒、私のには白の色が入っていた。
「似合ってるな」
「ありがと、澪央も凄く似合ってるよ」
ネックレスを私に付け終わると、澪央は私を強く抱き締めた。
「ありがとう璃花、何より嬉しい」
「うん、そう言うと思った」
私達は綺麗な景色の中、抱き合いながら深く口付けしあった。




