贖罪
翌朝、皆んなで朝食を食べ私と澪央はすぐに家を出た。
私の通ってる学校へ着き、門の前で澪央と別れの挨拶をした。
「じゃあな璃花」
「うん、またね澪央」
澪央は私を抱き寄せ、オデコにキスをし自分の学校へと向かっていった。
私は澪央の背中が見えなくなるまで、その場で見ていた。
それから時々だけど澪央は学校帰り、私の学校へ迎えに来るようになった。
「今日、部活は?」
「休み」
「本当?」
「ホントだって」
「澪央レギュラーでしょ?」
「あぁ」
「サボっていいの?」
「サボってない」
「ならいいけど」
「今日も璃花の部屋行く」
「それは別に構わないけど」
「璃花の部屋で寝ると寝付きいい」
「また泊まってく気?」
「まだ分かんねーけど泊まるかも」
「今日、お父さんいるかもよ」
「えっ、マジか…、どうすっかな…」
そんな会話をしながら2人で歩いている時だった。
「あっ…」
「璃花!」
何と颯麻が私達の目の前に現れたのだ。
私はあれ以来、颯麻と登下校をせず話しかけられても無視し、1人で登下校していた。
するとすぐに澪央が、私と颯麻の間に入り返事をした。
「何の用だ颯麻」
「璃花に謝りたくて」
「謝って済むと思ってんのか?」
「それは…」
「行くぞ璃花」
「うっ、うん」
澪央が私の手を引っ張り、その場を去ろうとした。
だけどその後も颯麻は私達を追いかけ、後から声をかけてきた。
「璃花、悪かった。あんな事して本当にすまなかった。もうしない。だからまた前のように元に戻れないか?」
それを黙って聞いていた澪央が怒り、振り返って颯麻に言った。
「人の女に手出しといて、また元に戻れないかだと?都合よすぎるだろ!」
「もう本当に何もしない。璃花とただ普通に仲良く話が出来れば、それだけでいいんだ」
「そんな言葉、信じられるか!」
すると颯麻が少し観念したような感じで澪央に言った。
「分かったよ澪央。俺を殴れ。それで許してくれるか?」
「へぇ、いい度胸だな」
「ちょっ…」
澪央は私の方を向きながら言った。
「璃花、悪いそういう事だから」
「そういう事って言われても…」
「絶対、璃花を1人にしない。俺を信じろ」
「…うん分かった。ならちゃんと手加減して?抑えてよ?」
「あぁ、任せろ」
そして澪央は道路の真ん中で、颯麻を一発殴り、颯麻は衝撃で地面に倒れた。
『いやいや、あんた手加減する言うたやんか。相手地面に叩き付けられて血吐いてますよ。これで手加減した言うんか?どんだけ強いねん』
私は血を吐いている颯麻を見ながら、内心そんな事を思っていた。
「璃花帰るぞ」
「えっ、うん…、待って!」
私は倒れた颯麻の側にしゃがみ、ハンカチを差し出した。
「颯麻、大丈夫?これ使って」
「ありがと璃花」
颯麻がハンカチを受け取ると、すぐに澪央に私は手を引かれ、その場を去った。
「そんなんほっとけ、行くぞ璃花」
私の部屋に入るなり、私は澪央に言った。
「澪央、手加減するって言わなかった?」
「手加減しただろ」
「本当に?あれで?」
「そうだ、あれでもかなり手加減したぞ」
「そうなんだ…、さすが元クリスタルの団長ね…」
「懐かしいこと言うな璃花は」
「澪央の強さは、私が1番よく知ってるから」
私達は話しながらベッドの下に座り寄り添った。
「そうだなって、それより夏服可愛いな」
「えっ、あぁ、そう?うちの学校、制服可愛いって人気なんだよね」
「似合ってるぞ」
「ありがと」
私の高校の女子の制服は冬はブレザー、夏はセーラー服だった。
「部屋ついたばかりだけど?」
「バレたか?」
「その顔見ればね」
「璃花、好きだ」
「私も好きだよ澪央」
私は澪央に深くキスをされながら、その場に押し倒された。
しばらく経った所で、ベッドの中で澪央が言い出した。
「キスマーク消えたな、また付けてやる」
澪央はそう言い、すぐに私の胸元に吸い付いてきた。
「いっった!!」
「俺の愛の重さだ」
「重すぎ、今日のめっちゃ痛かった。そんなに強く付けなくていいんじゃない?」
「強く付けなきゃ、すぐ消えるだろ」
「そしたらまた付ければいいじゃん」
「何だよ俺に口答えかよ、また付けてやる」
「えっ、ちょっと…、痛いっ!!」
「これで変な虫、また追い払えるな」
「胸元まで見せませんけど?」
「また誰かに見られるかもしれねーだろ」
「見せないってば」
「どうだかな」
さっき付けたキスマークのすぐ側に、澪央はまたキスマークを付けてきた。
その時、私の中で何かが切れた。
「あったまきた」
「はっ?」
「こっちは我慢して2回も付けさせてやったのに」
私は側にいた澪央の胸元に、思いっきり吸い付いてやった。
「いて〜!!離せ、もういいだろ、分かったって。いててて」
私はしばらくそのまま吸い続けた。
「たくっ、こいつは…」
「誰にも見せないって言ってるじゃん」
「分かったよ、信じるよ」
「本当に?」
「本当だ」
「もう1回やってもいいけど?」
「そんな怒んな、悪かったって」
「もういい」
私はベッドから起き上がろうと体を起こした。
するとすぐに澪央も起き、後から抱き竦められた。
「ごめんって璃花。信じる、お前を信じるから。どこにも行くな。俺の側にいろ」
「はぁ、行かないよ何処にも」
動かなくなった私を、さらに澪央は近付き強く抱き締めてきた。
「なら今どこに行こうとした?俺から離れようとしただろ?」
「服、着ようとしただけ」
「ホントかよ。怒っても嫌がってもお前は俺の者だ。ちゃんと側にいろ」
「もう澪央は、いっつも大袈裟なんだから」
「俺には璃花しかない、他には何もない」
私はそれを聞き心の中で思っていた。
『この重すぎる愛情、オリビアの頃を思い出す。本当に私しか見てないんだよね。嬉しいけどちょっと怖い澪央の歪んだ愛。私はこれを選んだんだ。と言うか最初から、果たしてこの男から私は逃れられたのか?無理ゲーじゃね?うん、そんな気がする』
「どうかしたのか?」
『はっ!ヤバい変な事、考えてた』
黙り込んで考え事をしていた私に澪央が不思議に思ったのか、私の顔を覗きながら聞いてきた。
私は覗き込まれた澪央の顔を見ながら答えた。
「私に何かあったら澪央どうなるんだろうなと思って」
「何かって?」
「う〜ん、先に死んじゃうとか?」
「廃人になるな」
「だよね、何かそんな気がする」
「か、すぐ後追う」
「私は澪央が心配で死んでも死にきれないだろうな、きっと」
「なら、先に死ぬな。俺を看取ってくれ」
「分かった、そうする」
澪央は胸元に付けられたキスマークを見ながら言った。
「それにしても思いっきり吸い付きやがって」
「何か悪い?」
「悪くねーよ、むしろ嬉しい」
「そっ」
「昔もやられたな、こうやって」
「確かに昔も同じ事やった気がする」
「そうだ、あの時も俺がキスマークつけてお前がキレた」
「結局私達、昔と同じ事してるんだね」
「そうだな。なぁ、璃花」
「んっ?」
「もっかいする」
「えっ、んっ…」
澪央は私の首筋に後から舌を這わせ、また私をベッドの上に押し倒した。
夕方になり私の家族と澪央の5人で夕食を取ることになった。
そして私の隣に座った澪央は目の前に座ったお父さんに、何も聞かれていないのにも関わらず終始焦った顔をしていた。
その後、澪央は何か空気を読むように泊まらずに帰った。
しばらくすると、家に着いた澪央からスマホに電話がかかってきた。
「璃花のお父さん怖すぎだろ」
「いや、普通だから。怖くないから」
「いやいや怖いって。圧が凄い」
「それただ、何も話してないだけだから(笑)」
「璃花の部屋好きだから泊まりたいけど、あれじゃあ無理だ」
「ふふっ、そうですか(笑)やましい気持ちがあるからそう見えるんじゃないですか?」
「心当たりがありすぎる…」
「そうだね(笑)」
翌日、学校に行く準備をすませ家を出ると颯麻がいた。
颯麻の口元や手には絆創膏が貼ってあった。
「おはよう颯麻」
「おはよう璃花」
「大丈夫?じゃないよね…」
「あぁ…」
「澪央強いから。それでも手加減したみたい」
「そうなんだ…。璃花、本当にごめん」
「うん、もういいよ。何かその顔見たら、どうでも良くなった」
「璃花は相変わらず優しいな」
「そう?」
「でも璃花、何かあればいつでも言って。俺じゃ澪央には勝てないけれど、それでも何かあったらいつでも俺の所においで」
「分かった。澪央が浮気したら颯麻に相談する」
「あぁ、待ってる」
学校につき教室に入ると、さっそく琴弓が近寄ってきた。
「なになに颯麻と仲直りしたの?てか颯麻のあの傷、璃花がやったの?」
「私がやるわけ無いでしょ。澪央がやったの」
「わぁ〜、とうとうやってしまいましたか、澪央さん」
「うん、でも何かスッキリした」
「でもね颯麻の気持ちも私は分かるよ」
「まぁね、それはね」
それから数日後、私は颯麻と学校を出て一緒に下校していた。
「璃花」
「あっ、澪央」
学校の出入り口の門には澪央が立っていた。
「何だよ、颯麻と一緒かよ」
「そりゃ家近いし」
「澪央、久しぶり」
「久しぶりだな颯麻、あれ以来だな」
「お陰様で傷もだいぶ治ったよ」
「またやってやろうか?」
「怖いな澪央は」
「澪央、もうダメだからね」
「何で颯麻の味方するんだ、璃花」
「澪央が強いから言ってるの」
「手加減するって」
「手加減って、あれじゃあしてない」
「璃花はごちゃごちゃ言うな」
「言ってない」
『仲がいいな2人は。俺が入る隙間がない…』
颯麻はそう思いながら前を歩く2人から少しだけ距離を取った。
「颯麻どうしたの?一緒に帰るんでしょ?」
「あぁ」
私はなかなか付いてこない颯麻に、後ろを振り返って声をかけた。
「いいだろこんな奴、ほっとけ」
「どうせ行く場所同じなんだからいいでしょ」
『璃花、俺を見捨てないでくれてありがとう。君のために出来る事をこれからはしていくよ。だけど本当に澪央は一体何者なんだ?なぜ璃花とすぐに親しくなれたんだ?』
璃花と澪央を見ながら颯麻はそんな事を思っていた。




