颯麻の乱
その後家へと帰った私は、澪央に帰ったとメッセージを入れ、着替えをしてからベッドに横になり目を閉じて、そのまま考え事をしていた。
『ねぇ、オリビア。澪央と別れた後のこの何とも言えない切ない気持ち。あなたはいつも感じてたの?いつも大聖堂に会いに来てくれたレオ。オリビアはいつもこんな気持ちで、レオが帰る背中を見送ってたのかな…』
そんな事を考えていた時だった。
枕元に置いていたスマホが、音を出して震え出しのだ。
『電話だ!まさか澪央から?なんだ違った…』
私はスマホを持ちながら起き上がり、かけてきた相手を画面で確認したあと電話に出た。
「もしもし、颯麻?」
「璃花いまから少し話せる?」
「うん、いいけど」
「じゃあ俺の部屋に来て」
「分かった、今から行く」
電話を切った私はスマホを持って颯麻の家へ行くと、居場所がバレて後から澪央に怒られると思いこのまま自分の部屋に置いて行く事にした。
『ごめん澪央。すぐ戻るから』
私は心の中でそう言い聞かせ、何も持たずに向かいの颯麻の家へ向かった。
「やぁ、璃花。入って」
「颯麻、話って何?」
私は颯麻の部屋に通され、テーブルの前で腰を下ろした。
するとすぐに颯麻は昨日のことをいろいろと聞いてきた。
「昨日、どこ行ってた?」
「えっ、昨日?」
「昨日の夜、璃花の部屋の電気消えてた」
「あ〜、うん、ちょっとね」
「澪央って奴、昨日の朝迎えに来てたよね?」
「見てたんだ」
「あぁ、たまたま見た。澪央って奴と一緒に昨日の夜いたの?」
「颯麻には言ってるし隠すこともないか。うん、そうだよ。澪央の家に泊まった」
「何で?」
「何でって、付き合ってるし」
「あのさ璃花」
「うん、なに颯麻?」
すると颯麻は少し怒った感じで私に言ってきた。
「俺の事どう思ってんの?」
「どうって友達でしょ?」
「友達?こんなに側にいるのに、俺の気持ち気付いてないの?本当に俺こと友達なの?」
「えっと…、颯麻?」
颯麻は少し興奮した様子で話し出した。
「俺は璃花が好きだ。あんな男に取られたくない。急に現れて璃花を勝手に奪って。本当に璃花あんな男がいいの?」
私はこの時、初めて颯麻の本音を聞いた気がした。
そして同時に澪央の事を、どうやって颯麻に説明するべきかと迷っていた。
「ごめん颯麻。確かに澪央は急に現れたけど、私は澪央が好きなの。信じてもらえないかもしれないけど、ずっと前から私は澪央が好きなの」
「ずっと前から好き?それはどう言う事?」
「う〜ん、それは説明が難しいんだけど、とにかく私は澪央を昔から知ってるし、私は澪央しか見てない。だから颯麻の気持ちには応えられない。ごめん」
私は何となくこのままここにいたくないと思い、部屋を出ようと立ち上がった。
「帰るね」
「納得できない」
「えっ?」
「昔から知ってる?前から好き?それは俺もだよ璃花」
「颯麻?」
「俺は昔から璃花しか見てない、それを今更…」
「だから私は澪央が好きなの。颯麻の気持ちには応えられない。それじゃ」
私は颯麻の気持ちに応えられないと断り、帰ろうとドアの方へ向かった。
「待って!」
「離して」
帰ろうとした私を引き止めようと、颯麻は私の腕を掴んできた。
「ちょっと、何なの颯麻?」
すると颯麻は私の腕を引っ張り抱き締めてきた。
「やめて」
「璃花好きだ」
「離して颯麻」
「好きなんだ璃花」
「私は好きじゃない」
そう私は気持ちをハッキリ言って、颯麻から離れた。
「こんな事されても気持ちは変わらない」
「何で俺じゃないんだ」
「ごめん、でも別に颯麻が嫌いなわけじゃないから」
「好きでもないんだろ?」
「颯麻の事は好きじゃない」
「だっからもう全部俺の者にしてやる」
「えっ?」
「そうなれば璃花だって俺から離れないはずだ」
「颯…、麻…?」
私は何となく嫌な感じがして、帰ろうと思い一歩後へ下がった。
だけどすぐに颯麻に捕まり、ベッドに押し倒され颯麻は私の上に覆い被さった。
「颯麻、何する気?」
「璃花を俺の者にしてあげる。大丈夫、怖がらないで。初めては怖いよね?じっくりしてあげるから」
「いや、颯麻、離して!」
私は逃れようとしたけれど、颯麻は全然動かなかった。
「抵抗しても無駄だよ璃花、今この家には誰もいない」
『怖い…、澪央…』
私が心の中でそう思っていると、颯麻は私の顔を固定し軽く口付けてきた。
「キスは初めて?それとも既にあの男とした?あれっ、何で泣いてるの?」
頭の中に澪央の顔を思い浮かべると、私の目には涙が溢れていた。
「もうやめて…」
「やめないよ璃花」
そう言うと颯麻は私の涙を口に含んだ。
「璃花の涙しょっぱい」
すると次に颯麻は私の着ていた服を、胸元まで脱がした。
「えっ、キスマークがあるんだけど?璃花どう言う事?もうそこまでの関係になってたの?そんな、じゃあもう本当に璃花は…」
颯麻は私の胸元の今朝、澪央に付けられたキスマークを見つけると動揺した。
「分かったんなら、どいて。そうだよ、もう颯麻が知ってる私じゃない」
「そんな事って…」
颯麻は私の言葉にショックを受けたのか、私を掴んでいた手を離し私から少し離れた。
だから私はその隙にベッドから下り、颯麻の部屋を出て自分の家へと戻り、自身の部屋へと入った。
『どうしよう、澪央になんて言えばいいの?それともこのまま黙ってるべき?分からないよ…』
どうしたらいいか分からずベッドの下に座り『ボ〜』っとしていた私に夕方頃、澪央から電話がかかってきた。
『澪央からだ…、出ないのも変だよね…。よしっ、いつも通りいつも通りに話そう…、それですぐに切ろう…』
私はそう思い、意を決し電話に出た。
「はい」
「家ちゃんと着いたんだな?」
「うん、着いた」
どうやら澪央は部活が終わり、家へ歩いて帰る途中で私に電話したようだった。
「璃花の事だ、道間違えなかったか?」
「うん、大丈夫」
「お前どうした?」
「えっ、何が?」
「何かおかしいぞ」
「…おかしくない、何もない」
「今家だよな?」
「うん」
「今から迎えに行ってやるから、今日も家に泊まれ」
「えっ、何で?」
「いいから、何か適当に親に理由言っとけ。いいな?分かったか?」
「分かった…」
私の声のトーンで何かあったんだと察し異変に気付いた澪央が、しばらくしてから本当に家に迎えに来て、私は澪央の家に連れていかれた。
澪央の部屋に着くなり、私はテーブルの前に座らされ尋問された。
「何があった?」
「怒らない?」
「場合による」
「だよね…」
「ちゃんと言えば許してやる。だから話せ」
私は隣に座る澪央に今日の事を話したら、どう思われるのか怖かったが覚悟を決めて話した。
「今日、家に帰ってから颯麻に話がしたいって言われて、家に行った…」
「家から動いてなかったよな?スマホ家に置いてったのか?」
「うん怒ると思ったから。すぐに戻るつもりだったし…」
「お前な(怒)まぁ、このくらいならいい。んで?」
「それで、颯麻の部屋に行って、そしたらその好きだって言われて、私は澪央が好きだからって言って帰ろうとした」
「そうか、で?」
「抱き締められたから振りほどいて、そしたら押し倒された…」
「璃花を押し倒しただと?あいつ…(怒)颯麻には警戒しろって言ったよな?俺」
「はい…」
「でっ、どうなった?何かされたか?」
「…えっと、キスされた…、ごめんなさい…(泣)」
澪央は私がキスをされたと言った事に驚いたあと、泣いてしまった私をすぐに抱きしめた。
「何で泣くんだよ」
「怖かった…」
「だったらすぐ連絡よこせ!」
「だって澪央に何て言ったらいいか、分からなくて…」
「そんなのいちいち考えんな、俺を頼ろうとしたんだろ?」
「うん」
「なら頼れ!それから?その後は?」
「服、胸元くらいまで脱がされて、キスマーク見られた」
「璃花の服を脱がした…」
「そしたら、止めてくれた」
「キスマーク見て止めたのか?あいつ」
「うん。私が初めてじゃないって分かって、それで引いたみたい」
「よかった…、本当に…、後はないのか?他にはされてないか?」
「されてない。抑えてた手が緩んだから、その隙に抜けて帰ってきた」
「そうか」
「抵抗しても無駄だとか、今誰も家にいないとか言われて…」
「ぐっ(怒)。そうか、怖かったな」
「うん、ごめんなさい」
澪央は私を抱き締めながら、何度も頭を優しく撫でた。
「すぐに連絡しろ馬鹿。1人で悩みやがって」
「心配かけると思って…」
「心配するに決まってんだろ、お前は俺のだろ?」
「うん」
澪央は抱き締めていた手を少し緩め、私の頬に手を添え目を合わせた。
「今日の事は忘れろ、俺が上書きしてやる」
「うん」
澪央は泣き止んだ私をベッドに寝せると、今までよりも優しくまるで宝物にでも触れるかのように私を腕の中に収めた。
(※ちなみに澪央の学校は大きいので、シャワー室があり部活後シャワー浴びてます。汗臭くはないです)
「璃花」
「んっ?」
「少しは元気出たみたいだな」
「うん」
その後ベッドの中で私の頬にかかる髪を、澪央は指で後へ流しながら私に話しかけてきた。
「このまま少し1人にしても平気か?」
「うん、大丈夫」
「なるべく早く戻るからな」
澪央は顎を持ち私に軽くキスをすると、ベッドから抜けクローゼットを開け部屋着を取り出しそれを着ると、私にも着替えを出しベッドの側に置くと部屋を出ていった。
澪央が部屋を出たあと私もベッドからゆっくり起き上がり、昨日と同じように澪央のTシャツを着た。
『まるで澪央に守られてるみたい。少しおっきいけど』
そう思いながら、私は澪央で満たされた気持ちになっていた。
その後私はベッドの周りに散らかった、自分の服と澪央の制服を畳んだりハンガーにかけたりした。
私はテーブルの前の床に座り、ふとスマホを見ると通知がきていたので確認すると、颯麻からメッセージが来ていた。
『ごめん』
それだけが届いていたが私は返事をせず、そのまま無視した。
するとしばらくしてから澪央が部屋へと戻ってきた。
「ほらっ、たくさん食って元気出せ」
「うん、ありがと」
澪央はまた昨日と同じように、私に夕食を作って部屋へと持ってきてくれた。
「今日は特別に食べさせてやろうか?」
「自分で食べれる」
澪央はテーブルの上に持ってきた物を置き、私の隣に座ると食べさせてやると言ってきた。
「遠慮すんな」
「澪央こぼしそうだからいい」
「やっと言い返すようになったな」
「うん、澪央に上書きしてもらったから」
「おう(照)」
「照れた?」
「照れてねぇ」
「じゃあ私が食べさせてあげる」
「はっ?」
「はい、あ〜ん」
私は澪央が作ってきてくれた物を、箸でつまみ澪央の口元に差し出した。
すると澪央は変な顔をしながらも、私が差し出した物を口に含みモゴモゴしながら飲み込んだ。
「美味しい?」
「あぁ」
「これちゃんと食べれるみたいだね」
「俺に毒味させたのか?」
「えっ、だって変なの入ってたら困るし」
「自分で作ったものに、変なの入れるわけねーだろ」
「そっか、よかった」
「さっきは優しくしてやったけど、もう次はしねーぞ」
「澪央こわ~い」




