転生
白を基調とした、水の流れるまるで教会のような綺麗な神殿に、ある1人の女神が佇んでいました。
『女神様〜、オリビアが…、オリビアが…(泣)』
するとそこへ天使のエルリアが現れました。
『えぇ、何となくですが事情は分かっています。魂を持ってきてくれたのですね』
『はい、女神様…』
『ありがとう、エルリア』
エルリアは持ってきた魂を女神に渡し、オリビアの魂を受け取った女神は手の平の上に乗せ、マジマジと見てみました。
『どうやら私が思った方とは、違う方と結ばれたようですね。ですがこれも運命。誰にも未来は決められない』
『オリビアはちゃんと幸せだったよ、女神様』
『えぇ、これを見れば分かります。とても充実した日々が見て取れます。本当に幸せだったようですね』
『女神様…、お願い…、オリビアを…』
『エルリア、そんなにこの子が気に入ったのですか?』
『はい、とってもいい子なの。だから…』
『ですがあなたはもう側にはいられませんよ?いいのですか?』
『いいの、それでもいいの…』
『分かりました。エルリアの願い叶えましょう。ですが私は施すだけ。その先の手伝いはしません、いいですね?』
『それで構いません、女神様。オリビアどうか幸せにね…』
『私の力を受け継ぐものよ、あなたに日常という平和を与えましょう。次の世界へ行くがよい。いったいどんな未来を描くのか、楽しみです』
するとオリビアの魂は、女神の手の平の上から青い星へと落ちていきました。
そして後を追うように、3つの魂も落ちていきました。
『どうやらあの子を慕う者が、何人かついていったようですね。うまく出会えれば良いのですが…』
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そして現在、ここは日本、某所。
私は、栖咲璃花、高校2年生。
私には何故か前世の記憶がある。
と言っても本当にそんな世界があったのかなんて、今の私には知るすべもない。
「オリビアね…、誰それ…?」
私は学校の制服に着替え、鏡の前に立った。
『前世か…、そんなの本当にあるのかな?レオとか言うキス魔が私の旦那様ねぇ…、聖女とか意味わかんないし』
鏡に映る自分の顔に触れながら、私は言った。
「私は今を生きるよ。オリビア」
私はバッグを持ち、家の玄関を出た。
「おはよ、颯麻」
「おはよう、璃花」
向かいの家に住む天雲颯麻は、幼馴染みでいわゆる美少年。(※家はお互い一軒家)
同い年で学校も一緒。だから皆んな勘違いするけど、別に付き合ってはいない。
そしてそれが原因で男は寄ってこない。
まっ、作る気もないし別にそれでいいんだけど。
「璃花、何か考え事?」
颯麻と一緒に登下校するのがいつもの日課。
「颯麻は彼女作んないの?」
「俺は璃花がいるからいい」
「だから、私達付き合ってないじゃん。颯麻モテるんだから、誰か付き合いなよ?」
「モテるのは璃花の方だろ?」
「颯麻のお陰で皆んな、すぐいなくなるけどね」
「いいだろ、どうせ付き合う気ないんだろ?」
「そんな事ないよ。いつかは誰かとって思ってる。今は誰もピンとこないだけ」
「ならこれからも俺が側で追い払ってあげる」
「頼んでない」
「じゃあね璃花」
「うん、じゃあね〜」
教室は別だからいつも昇降口で別れる。
そして教室に行くと、親友が必ず寄ってくる。
「あっ!璃花、おはよう〜」
「おはよう、琴弓」
桃瀬琴弓、私の親友。
「今日も颯麻と一緒に来たの?」
「そうだよ」
「颯麻、頑張ってるよね」
「何が?」
「璃花の男剥がし」
「別に側にいるだけで、頑張ってはいないんじゃない?」
「本当に分かってないよね〜、璃花は」
「んっ?何が?」
「璃花!」
「はい」
「颯麻、たぶんそろそろアプローチしてくると思う。ちゃんと応えてあげるんだよ?2人お似合いだよ」
「アプローチね〜、颯麻はないかな」
「可哀想な颯麻…」
「ところでバスケ部の人とはどうなったの?」
「まぁまぁ、いい感じだと思う」
「いいなぁ、もうそろそろ告られそうなんじゃない?」
「そうなればいいけどね」
「マネージャーまでして近付いて、健気よね琴弓」
琴弓はバスケ部に好きな人がいて、その人に近づくためにバスケ部のマネージャーをやっている。
『私も琴弓みたいに、いつかは誰かを好きになる事があるのかな。前世の記憶を思い出すと凄く胸が痛くなる。きっとこの胸の痛みは「恋」だ。でも今の私はまだ知らない痛み。この記憶の中の私の旦那様は、一体どこにいるんだろう?この人に会ったら私の胸は痛む?会っては見たいけど、この先会う事なんてあるのかな…』
授業が終わって颯麻と一緒に下校中、他校の男子達が道路の向かい側に5人くらいいた。
すると私達2人を見ながら、いろいろと言い始めた。
「なぁ、あの反対側のカップルやばくね?」
「うわっ、本当だ。超美男美女じゃん!」
「やっば、彼女の方めっちゃ可愛いんだけど」
「イヤでも、あの男には敵わないだろ」
「誰も敵わねーな」
「やっぱ美人にはイケメンしかダメなんだって」
「やべっ、こっち見た」
「可愛い〜」
「超可愛い〜」
「俺、いま目合ったかも」
「いや俺の方見てたし」
『うざっ、なにアイツら…』
そいつらの声が聞こえていた私は、早く通り過ぎないかなと思っていた。
「でもさぁ、うちの『レオ』なら敵うんじゃね?」
「だよな、イケるな」
「ダメだって、こいつ女マジ興味ねーから」
「そうそう、なっ?」
「うるせぇ」
私はそれを聞き思わずそいつらの方を見ながら、どの人が『レオ』って人なのか探した。
『えっ、今レオって言った?あっ、あの人かな?へぇ〜、結構格好いいじゃん。でもちょっと怖そうな人だな。あっ、目が合った。あれっ…、あの人…、どこかで…、んっ?今胸が少し痛んだ?』
私は胸の痛みが気のせいだと思い、そのまま素通りした。
「なっ、あの制服。次の練習試合の相手だよな?」
「えっ、そうなの?」
「俺分かんねー」
「いや、多分そうだな」
「そこのマネ可愛いんだぜ」
「えっ、マジ?」
私はそのまま素通りしたけど、少しだけ気になったから颯麻に話しかけた。
「ねぇ、颯麻」
「なに?璃花」
「今の人どっかで会ったことない?」
「えっ、どの人?どれか分かんない」
「ちょっと怖そうだった人」
「ごめん、よく見てなかった」
「そっか」
「何か気になるの?」
「いや、何かどこかで見たかなって思っただけ」
「そっか、他校の人だったし気のせいじゃない?」
「そうかもね」
それから数日後の土曜日、ウチの学校の体育館でバスケ部の練習試合が、行われようとしていた。
「あれっ、今日むこうマネいないな」
「えっ、そうなの?」
「普通に可愛いんだぜ」
「見たい、見たい」
「でも見当たんないなぁ」
「俺ら男子校じゃ考えらんないよな」
「だよな」
「いいな〜、女子マネ」
その時、体育館の扉が開き1人の女子が入ってきた。
「ちょっ、あの子、可愛いんだけど」
「ヤバっ、めっちゃ可愛い」
「でもあれマネじゃないな」
「あれ、あの子、この間みたよな」
「そうだ、男といた!」
「うわ、マジか彼氏持ちかよ」
「男も超イケメンだった」
「うわっ、引くわ〜」
私は熱を出した琴弓の代わりに、バスケ部のマネージャーを急遽やることになった。
この日は練習試合で人出が足りないらしく私が呼ばれたのだ。
「栖咲、急に呼んで悪かった」
「いえ、大丈夫です」
「桃瀬が来れなくなったから、代わり助かる」
「はい、じゃあとりあえず着替えてきます」
「あぁ、分かった」
私は顧問に挨拶をした後、すぐに制服からジャージに着替えるため校舎の方へと向かった。
『何で私が代わりなのよ。琴弓と仲いいからって。たくっ、今日は家でのんびりしたかったのに!』
私はそんな事を考えながらジャージに着替え体育館に向かう途中の廊下で、練習試合相手の学校の選手と出会った。
『あっ、あの人この間の人だ。確かレオって呼ばれてて。あれっ…、何で急にこんなに凄く胸が痛むの…?』
私は気付くと何故かとっさに、その人の腕を掴み声を掛けていた。
「レオ、レオだよね?」
「はっ?」
「私の事、覚えてる?」
「なに?」
「オリビアって分かる?」
「オリビア?外人?」
「そう、覚えてないか…」
私は掴んでいた腕を離して言った。
「ごめん、変なこと言ったよね。忘れて。もう話しかけたりしないから。元気でね…」
私は今にも溢れそうな涙を必死に堪えて、その場をすぐに去った。
『あの女、何であんな泣きそうな顔してたんだ?』
レオは掴まれた腕を見ながらそう思っていた。
『レオだ。間違いないあの人がレオだ。でも私の事、全然覚えてなかった。この記憶の中のあの楽しそうな日々は、もう戻ってこないんだ…。どうして私だけ記憶があるの?こんなの辛すぎるよ…』




