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BUTTERFLY

作者: 宵野 雨

※注意※

1これは、ざまぁ系ではありません。

2シリアスです。苦手な人は読むことをお勧めしません。

3恋愛を主としています。異世界のバトルが読みたいという方は別のものをお読みください。

4これは趣味でシリアスが書きたくて書いたものです。ほかの作品とは作風が違いますのでご注意ください。

以上のことを含めたうえでお読みください。

 視界には、多くの兵士、そして幼馴染がいた。聖女と呼ばれるまでに至った幼馴染。僕とは出来が違ったんだろう。

 そして僕は処刑される。もちろん冤罪だ。何もしていない。その理由は僕が幼馴染の恋人だったからだろう。もともと僕は貴族の出身だ。ゆえに、彼女の成り上がりのための都合のいい道具だったのだろう。そして僕よりも高い地位に上り詰めたために僕は足かせとなってしまった。だから、切り捨てる。それだけだった。

 もちろん僕は彼女を愛していた。彼女のために努力もした。でも、結局彼女に裏切られる。ここまで、語った時点でわかるとは思うが、彼女が僕に冤罪をかけた。ただ、地位のために。名誉のために。


「執行してください」


 彼女から無慈悲な一言が告げられる。それと同時に、周りの兵士も動き出す。僕は、身動き一つとれないままその時を待った。

 きっと、彼らには悪意なんてないんだろう。正義を執行したつもりなのだろう。僕はそんな人たちに恨みの感情は抱けなかった。結局のところ僕は善人というものだったのだろう。善人じゃ生きていけない。それが僕の人生で証明されているだろう。僕の心の中はただただ、彼女。僕の幼馴染、アリアに対しての恨みだった。

 そして⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


 そして、僕は処刑された。一瞬、自分の体が見えたような気がした。首を切り落とされたのだろう。特に痛みは感じなかった。恐怖もない。死んでいく中でもなお僕は恨み以外の感情を抱けなかった。

 そして、僕は死んだ。

⋯⋯、

⋯⋯⋯⋯、

⋯⋯⋯⋯⋯⋯、

 そして、僕は思い出した。理由はわからないが転生をしたのだろう。しかも、過去の僕に。要は、やり直しということだろう。

 つい、辺りを見渡してしまう。そして、僕の隣に、アリアがいたことに気づく。


「っっ!」


 本能的に恐怖を抱いてしまう。ほとんど殺されたと同然の相手に対して恐怖を抱くのは当然だろう。

 思わず、僕は逃げ出してしまう。

 怖い。

 怖い。

 そして、森まで駆け抜けたところで足が止まる。いざ、生き返ってみると、死ぬ直前の静寂が嘘のように震えてくる。余裕があるときのほうが人は弱い。そう分からされた。僕の体を恐怖が支配していく。手の震えから、だんだんと全身へと広がってくる。


「はあ⋯⋯はあ⋯⋯」


 体が震えて止まらない。思考もまとまらない。ただただ震える。

 そして⋯⋯

 そして、震えがだんだんと落ち着いてくる。そして、僕に残ったのは、復讐心だけだった。


“復讐する”


 ただそれだけの意思が僕を支配していた。恨みの感情が復讐心に変わったのだろうか。そんなことも分からない。もう僕に慈悲なんて残っていなかった。

 復讐のためには何が必要だろうか。

 まず、力。そして地位。それらをすべて得てこそ、僕の復讐は成り立つ。一方的な暴力をしても、僕の復讐心は満たされないだろう。彼女が欲していたもの、すべてを手に入れ、絶望させる。自分が手に入れるはずだったもの。それらを突然僕に奪われたら、彼女はどんな顔をするだろう。想像するだけで笑いが止まらない。

 僕には未来が分かっている。未来から転生した僕だけの特権だ。そして僕には、今までにないくらいにやる気にあふれていた。復讐がこんなにも努力へのやる気を上げてくれるとは思わなかった。


 そして、僕は家に帰った。前述の通り、僕の家は貴族だ。そして、僕は一人っ子のため僕が次の領主ということになる。つまり、僕の家が評価を上げれば自ずと、地位も上がっていく。だからといって、父を殺そうとは思わない。僕の父は善政を敷いているし、民にも慕われている。

 まあ、僕はもうすぐ領主へとなるためあまり気にならないのだが。別に、病気だとか、暗殺だとかじゃない。単純に、僕に継承するというだけだ。子供のうちから政治を体験させようという方針で生まれたらしい、代々続く文化だ。

 もちろん先代領主は補助につくが、結局決定権はその子供が持つのだし、余程のことがない限り先代領主は飾りのようなもんだ。前回はこの制度に対しては悪感情を抱いていたものだが今回は喜ばしいことこの上ないな。

 これからどうするか、という話になるが、とりあえず、今は父にそれとなく未来に起こることをほのめかしつつ、力をつけることだな。この世界には魔法がある。攻撃魔法は多くの人が使えるもので、基本これの良し悪しでその人の人生が決まるといっても過言ではない。例外として、回復魔法がある。これは1国に10人居るくらいの希少さで、これがあるだけでその人の人生が変わる。まあ、結局魔法至上主義かつ希少な回復魔法は優位に立てるということだ。ちなみに、回復魔法の使い手は聖女もしくは聖者と呼ばれ、アリアもその一人になる。聖者で統一してもいいと思うが⋯⋯。

 兎角、今後の予定はそんな感じだ。


「おかえり。今までどこに行っていた。アリアちゃんが急にどこかへ走り出したと言いに来たんだぞ」


父に声をかけられた。


「はい。すいません。明日謝っておこうと思います」


 父は彼女の醜悪さを知らないからそんなことが言えるのだ。


「だったら、明日謝りに行けよ。次期領主としても必要なことだからな」


 そう言って、自室に戻る父。まだ仕事が残っているのだろう。わざわざ、『おかえり』と言いに来てくれるあたり、いい父だと思う。尊敬できる父だ。復讐するにしても道だけは踏み外さないように気を付けたいと思った。


 翌日、僕はアリアの元へ行っていた。


「昨日はごめん。急に走って行ってしまって」


と謝る。正直気分のいいものではない。


「はは、いいよ。ちょっと寂しかったけど、たまには一人でいたくもなるよ」


 軽く笑いながら彼女は言った。この裏に、思惑があるなんて知っていないとわからないだろう。


「じゃあ、今日はあそぼ。昨日の分までさ」


 そう言って、歩き出すアリア。断るわけにもいかないのでそれについていく。魔力でも練りながら⋯⋯。


 何日かの時間が過ぎた。この間、まず父の補佐をして、その後は領主として、男爵から伯爵位を得るに至った。魔法の技術に関しても、前回の時よりもはるかに上達した。今ではおそらくこの村一だ。特に難しいことはしてないが⋯⋯。こんなにも上達が早いのはきっと復讐という具体的な目標があるからだろう。

 そして、今日もまた、アリアと遊びに出かけていた。毎日のように遊ばされているが、これが僕との距離を縮めるための行動なのだろう。やはり、すごく分かりにくいと思う。ほんとに、傍から見たら仲のいい子供だろう。ちなみに、まだ子供だということで、まだ書類仕事のほとんどを父がこなしている。あれ?結局、父が領主としての仕事をこなしてないか。

 そして、今日は森で遊びまわっていた。この森は深いところに行かなければ熊なんかは出てこない。魔獣なんてもってのほかだ。あれは、ほんとに魔力の濃い森や、洞窟にしか出ない。万が一出たとしても、ゴブリンくらいで、僕くらいの魔法が使えれば簡単に倒すことができる。

 いつものように、森の中を歩いていると、アリアが急に足を止めた。そして、すぐに走り出す。僕もそれについていく。

 そこには、けがをした小さな鳥がいた。逃げ出そうともがいているが、翼をけがしているからか飛ぶこともできず、逃げ出せずにいる。幸い、近くに親鳥はいないようだ。そして、アリアがそれをやさしく掬い、僕のもとへと持ってくる。

 思い出した。この鳥を助けるときにはじめて彼女は回復魔法を使えるようになったのだった。


「この子どうしよう?けがしてるみたいだし手当てしたほうがいいのかな?」


「手当てしてあげないとすぐ死んじゃうかもね」


 僕はそんな言葉を返す。


「分かった。手当てしてみるね」


 そう言って、彼女はポケットから、絆創膏を取り出す。今考えれば、鳥に対して絆創膏はないよな。羽にくっついて傷口は塞げなさそうだ。

 その鳥に彼女は絆創膏を近づける。そしてもうすぐ触れるというところで、彼女の手から光が発せられた。


「ひゃ!」


 そんな声を上げて、彼女は飛びのく。そして、そこにはけがの治った小鳥がいた。彼女が回復魔法を使ったのだろう。残酷なことにその鳥はすぐに、飛び立って逃げていく。

 彼女はというと、目を白黒させて、しばらくすると、頭の上にクエスチョンマークが見えてくるような困惑の仕方をしていた。


「あの鳥さんなんで治ったんだろ?」


 小首を傾げながら僕に問う。


「さっきの光じゃないか?」


 回復魔法を知らないように僕はふるまう。


「私がやったのかな~?帰ったらお母さんかお父さんに聞いてみよ」


 彼女はそう言って、


「さあさ、まだあそぶよ」


 そう言ってまた、彼女は歩き出す。僕もそれについていく。


 そして、何事もなく遊び続けた。そして、日が暮れてきたころ、


「また明日ね」


とアリアに言われ、別れた。


 そして次の日、アリアの家の家族たちが僕と父に面会を申し出てきた。


「愚女がお世話になってます」


 そう言って、彼女の父親が頭を下げる。


「いえいえ。こちらこそ息子が世話になっています。どうぞ、頭をお上げください」


 父がそう応え、頭を上げさせる。それに、アリアの父親も顔を上げる。


「今回は何のご用件で」


と、今回の要件をうかがう。一応僕は領主なのだが、初めの頃は父を見ていなさいとのことだ。


「はい。この度は愚女、アリアの件でございます。どうやら、愚女が回復魔法の才能があるようで」


「ほう!回復魔法か」


 さすがの父も驚きを隠せないようだ。


「はい。回復魔法でございます」


「ふむ。これは、陛下にも報告しなければならないか」


「陛下ですか!?」


「ああ。回復魔法は貴重なのでな。陛下に報告をし、記録してもらわねばならない。そこで、回復魔法を使えることを証明しなければならないのだが、彼女は使いこなせるのか?」


「どうなんだ、アリア?」


 ここで、アリアに話が振られる。


「えっと、あれから使っていないので分かりませんがおそらく使いこなせてはいないかと⋯⋯」


「なるほど。では、2週間後に陛下に謁見するため、それまで使いこなせるように練習に励め」


「はい。頑張ります」


 そうして、陛下に謁見することが決まった。僕が発言することなく。



 そして、2週間が経過した。その間、アリアに誘われて、僕は魔法、アリアは回復魔法の練習をしていた。おかげで、僕の技術も魔力も格段に上昇した。ながらの訓練ではそこまで伸びないと分かったのと、単純に練習時間が増えたからだ。

 現在僕らは、馬車で揺られながら、王都へと向かっていた。メンバーは僕、父、アリア、彼女の父だ。


「ねえねえ、私が聖女になったら、アルのお嫁さんにふさわしくなれるかな?」


と、アリアが声をかけてきた。ああ、言い忘れていたが僕はアルという名前だ。


「さあね」


 僕らはもう婚約しているということになっている。こんな性悪女とどうして結婚しなきゃいけないんだ。何とか離婚しなければと考えている最中である。


 そして、僕らは王都へとたどり着いた。そして現在、僕らは陛下に謁見していた。


「ほう。彼女が聖女か」


 興味深そうに陛下はアリアを見る。回復魔法の使い手はそれだけ珍しいのだ。


「では、これを治してみよ」


 そう言って、周りの近衛騎士に目配せをする。すると、騎士は木を取り出し、剣で軽く傷をつけた。そしてそれをアリアに差し出す。今更だが、回復魔法は生物全般に効く。

 アリアはそれに向かって手を伸ばし、光が発せられる。そして、手を放すとそこには傷などどこにもない木があった。


「おお!これ程の速度で回復できるのか。回復魔法の強さでは王国一だろう」


「「ありがとうございます」」


 アリアとその父が感謝を伝える。


「これほどの逸材を見つけたグリフィス卿には侯爵位を与えよう」


「はい。侯爵として恥じぬ行動を心がけます」


 僕はそれに応えることができず、父だけが返事をする。あと、グリフィスは僕の姓だ。


「では、下がってよい」


「「はい」」


 そう言って僕らは下がる。


「では、アリア嬢はこれから、魔法学園に通うことになると思うが、大丈夫か?」


 それに、アリアとその父は少し黙る。金銭的な余裕がないのだろう。それを王は察したのか


「金銭的には心配する必要はない。何せ聖女だ。国が負担しよう」


と言った。その言葉にアリアの父が口を開こうとすると


「アルと一緒ならいいです」


とアリアが言った。

????こんなこと前回は言っていないぞ。どういうことだ?


「⋯⋯」


 周囲が静まり返る。


「申し訳ありません!我が愚女が」


 そう言って、焦ったようにアリアの父親はアリアの頭を押さえ下げさせる。


「がはは。そうか、グリフィス卿、そなたの息子はどれくらい魔法が使える?」


 王は、豪快に笑いながらそう言った。これが王の素なのだろう。


「現在どれほど使えるのかは分かりませんが、以前は人並みでした」


 呆然としている僕の代わりに父が答える。


「アルはすごいんだよ!じゃなかった、すごいんですよ」


「そうかそうか、では、ここで使ってみてくれないか?」


 そう、笑いながら言う王に対して


「陛下!それは⋯⋯」


きっと宰相だろう。が王を止めようとする。城が壊れる危険性があるためだろう。


「では、訓練場のほうへ行くか」


「陛下!それは時間が⋯⋯」


 宰相は王を止めようとするが、すでに遅く、王は玉座から立ち上がり、歩き出していた。宰相はもうあきらめた様子で、頭を押さえながら王についていく。きっと、この後、スケジュールの再編集が待っているのだろう。

 僕らはそれについていく。予定外があったとはいえ、彼女との接点はなるべく少なくしたい。ここはわざと手を抜いて入学を阻止するべきだろう。

 訓練場にたどり着いた僕は、的に向かって魔法を打ち込むことになっていた。僕は弱めに魔法を的に放つ。魔法は的をかすめてから、後ろの壁に当たった。これなら、入学はできないだろう。


「おお!まさかこれほどとは」


 え!?的も外れたし威力もそこまでなかったよな?


「子供のうちにぎりぎりとはいえ的に当てるくらいのコントロールと壁に届くだけの威力とは。これは学園でも主席を狙えるのではないか?」


 と、僕の予定外の展開になってしまったのだが⋯⋯。


「アル?緊張でもしてるの?いつもより弱いじゃん」


 アリアは練習の時に僕の魔法を見ていたんだった。僕に王と父の視線が注がれる。


「緊張することないぞ。これでも、十分なのだが」


と王は言う

 ああ!もう、全力でやればいいんでしょ!わかったよ!

 そうして僕は、魔法を放つ体勢になる。そして、放たれた火球は、先ほどの比ではないほど大きく、的の中心に当たる。そして、的は燃え続け、そこには支えだけになった的の残骸があった。


「これはもう、宮廷魔導士レベルなのだが⋯⋯」


 さすがの王も唖然。父も


「まさか、愚息にこれほどの才能があるとは」


唖然としている。


「ふふ。私のアルはすごいでしょ」


 空気の読めないアリアは自慢げだ。


「まあ、これだけの力があるなら魔法学園に行っても問題ないだろう」


 まだ、余韻の抜けない王はそう言った。

 そうして、僕の魔法学園行が決まったのだった。




 私、アリアは王様に謁見していた。謁見は順調に進んでいき、私が魔法学園に行くかという話になった。私としては行きたかったが、ふとアルのことが頭に浮かんだ。

 あの日、私を置いて走って行ったアル。あの時、私はさみしかったんだっけ。だったら、私がアルのことを置いて学校に行ったら、アルがさみしいのかな?きっとそうだよね。

 だったら、と、私は口を開いた。




 僕ことアルは帰りの馬車に揺られていた。

 どうしてこうなった。彼女はこんなこと言わなかったはずだ。


「どうして、アリアはあんなこと言ったんだ?」


と、直接聞いてみる。


「なんでって、ん~アルがさみしいかなって」


 はぁ?僕がさみしいって?そんなこと言うやつじゃないだろ。お前は。もっと、地位とか名誉が大切で⋯⋯


「アルがどこかへ走って行った時があったじゃん」


 僕が転生前の記憶を思い出したときか⋯⋯。


「あの時、私、さみしかったから」


 だからお前はそんな人間じゃないだろ⋯⋯。


「だから、村を出るとアルもさみしいって思うのかなって思ったの」


 思ったのじゃなくて⋯⋯。そんな、ことを気にする奴じゃないだろ⋯⋯。

 そうだろ⋯⋯。僕を裏切った時のように、必要がなくなったら切り捨てる。そんな奴だろ⋯⋯。

 そのはずなのに⋯⋯。どうして⋯⋯。


「だから、一緒に居たいって、思ったんだけど、迷惑だった?」


 迷惑だよ!そんなこと言わないでよ!僕が間違ってたなんて⋯⋯そんなことって!ないだろ!あの時のように残酷な人間だったろうが!

 それを、僕が顔に出さないようにこらえていても、彼女は続ける。


「私も多分さみしいし⋯⋯」


 だんだんと小さくなっていくその声を僕は聞いた。聞いてしまった⋯⋯。

 彼女は僕が思っていたほど悪い人間じゃなかった。このころ、初めは純粋な少女だったんだ⋯⋯。

 ただ、地位を得て、調子に乗ってしまっただけ。そんな、誰にだってあるようなことだった。

 そんな少女を僕は⋯⋯悪だと⋯⋯決めつけて⋯⋯それで⋯⋯勝手に復讐だとか言って⋯⋯結局間違っていたのは僕だった。

 僕は道を踏み外さないようにとか、なんだとか言っていたけど⋯⋯踏み外していたのは僕で⋯⋯彼女はまだ、踏み外してなくて⋯⋯じゃあ、どうしたらいい?

 僕は何ができる?

 この少女に対して⋯⋯。

 彼女のこの悲しそうな顔を見て⋯⋯

 僕は⋯⋯

 僕は⋯⋯⋯⋯

 いや、僕ができることなんて決まっている。彼女が道を踏み外さないように⋯⋯導いてあげるだけ。ただそれだけ。

 この、純粋な少女を、間違った方向に進まないようにと⋯⋯。






<<とある少女の独白>>

 この胸に空いたような違和感は何だろう?あいつを殺して、さらに上に上がれるはずなのに⋯⋯なんだろう?この胸の穴は?最後に彼から向けられた、恨みのこもった瞳⋯⋯

 それを思い出すだけで胸が痛いのはなぜなのだろう?

 そもそも、私はなんで聖女になんてなったんだろう?なんでだったっけ?

 彼のそばに居たいから。それだけだったような気がする。

 じゃあ、いつからだろう。地位に固執し始めたのは?いつからだろう。彼が道具だと思い始めたのは⋯⋯。わからない。いつの間にかそうなっていた。

 今の私は何が欲しいのだろう?地位を得て、それで⋯⋯何ができる?彼が喜んでくれるのか?あんなことをして、恨まれた私が、上に立って、彼が喜べるのだろうか?

 そんな都合のいいことがあるはずがない。

 結局私は、取り返しのつかないところまで来てしまった。

 彼の温かさが、私を支えていたと、気づくのが遅すぎた⋯⋯。

 もう、私は何をしたらいいのか?何がしたいのか?わからなくなった。

 何もできない。私は彼を傷つけただけで⋯⋯。それだけで⋯⋯。愛されていると気付かずに⋯⋯。

 私は何をしたらいい?何度も、同じ疑問を思い浮かべても、それの答えなんて出てこなくて⋯⋯。

 私は部屋を出て、屋上へと向かった。ただ、夜の風が私の心を吹き飛ばしてくれると期待して⋯⋯。

 でも、そんなことはなくて、夜の風がただただ体温を奪って⋯⋯。

 私にはもう何もできない。彼が居ないと、

 私だけじゃ⋯⋯

 もう⋯⋯⋯

 何も⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 私はそのまま⋯⋯。

お読みいただきありがとうございます。

最後の下りはいらないと思う人もいらっしゃるかと思いますがご了承ください。書きたかったのです。

以下は読む必要はないです。タイトルの意味なので⋯⋯。無粋かと⋯⋯。






あと、BUTTRFLYの意味わかった人います?これは、バタフライエフェクトです。一匹の蝶の羽ばたきが遠くで竜巻を起こすか。ってやつですね。アルの初めにアリアから逃げたことが未来で、アルがさみしいと考えるきっかけになったってことで⋯⋯。

それは違うという人もいるかな?まあ私もそこまで詳しくないので⋯⋯。許して⋯⋯。

では、あとがきはこれくらいにして、次の話でお会いしましょう。それでは!

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