6話~諦め
「いいですよ」
そう答えると、二人は驚いた表情を見せた。
「いいのか? 随分あっさりしてるが」
「はい。俺としても下心がないわけではないですし」
「下心?」
「俺が刀を探しているっていう話はしましたよね。そのことです」
勘の良いクリードはそれだけで全てを察したようだった。
「……それはあまり期待しないほうがいい」
苦虫をかみつぶしたような顔になって、クリードは言った。
「君のいた世界というのがどういうものか知らないが、ここでは王族諸侯というものは絶対的な存在なんだ。始祖の血が何よりも大切とされる。王族と国民の間には天と地ほどの差があるんだ。国民が王のために働くのは当たり前。それに対して見返りを求めることなんてあってはならない」
「まして捜し物をするために力を使え、など不敬罪で良くて流刑、悪くて極刑ですね」
頼み事をしただけで死刑とは。中世日本でももっとましだったのではないか。随分と嫌な世界だ。
「君ほどの戦士の力を借りられないのは残念だが、諦めた方が良い。ここに留まるよりも世界中を歩き回るほうがまだ可能性があるだろう」
こうなることを予想していなかったわけではない。偉い奴というのは往々にして横柄なものだ。俺のような流れ者が頼み込んでも聞いてすらもらえないということもあるだろう。
だからとりわけて落胆したわけではなかった。そりゃ少しはがっかりとしたが。
「わかりました。じゃあ他に捜し物の魔法が出来るような人を知りませんか?」
二人は同時に首を振った。
「そういう魔法を使えるのは王族だけだ。――少なくともこの国では」
随分過激な発言だなと内心笑った。
王族は特別な人間ではない、とクリードは言ってるのだ。ただ血に恵まれただけに過ぎないと。
「――わかりました」
「どうするつもりですか?」
「少しはここに滞在させてもらって、出て行こうと思います」
用意するものはいくらでもある。まずこの道着姿は目立つから着替えを用意したい。
そして何よりも大切なもの。魔法を一切使えないであろう俺にとっての生命線。
「――この街の大工、木の加工を専門としている人を紹介してくれませんか?」