C6.6 足場固め ― 6 ― 方々に犬を放つ
「予行演習・・・と言うには上出来過ぎ、だったかな。」
デスロード・シャドウナイト・クーシーズを前に満足気に独り言ちる。
「クーシー、足に覚えのある者達でいくつかの小隊を編成し、過去訪れた重要拠点と言えるべき場所まで走らせろ。」
「は!・・・えっと、何か運んだりするのでしょうか?」
「何も必要ない、ただ走っていけばそれで良い。」
「・・・???」
困惑顔のクーシーに、
「出来ないか?」
「あ!いえ!出来ます!承知致しました!
・・・到着後はどうすれば?」
「それもただ戻ってくればいい。」
「はぁ・・・。」
さっぱりわかりません、と態度にありありと出ているが、命令は命令、すぐさま遠吠えで一族を呼び編成を開始する。
「・・・主。」
「お前も訳を知りたいのだろうが、時には私の自由にさせてくれても良いだろう?
・・・あとこっそりつけてきたそこの偽メイドも。」
心底不満そうな顔であまり隠れる気もない偽メイドが寄って来る。
「ねーねーねーねーねーねーねーねーねーねーねえったら、ねええええええ?」
うわ、鬱陶しい。
くねくね身じろぎしながら私の周りを旋回する偽メイド。
口を横に目一杯広げて、いいいいいいって感じの顔のまま抗議する。
「おーしーえーてーよー。」
「断る。」
「酷いっ!身も心も捧げた僕にも教えてくれないなんてっ!?」
よよよ、と崩れおる偽メイドに冷たい視線が2つ突き刺さる。
そもそも頼んでもなければ捧げられた覚えもない。
「・・・にしても全く読めない子だね。
この子は一体何なの?
デスロード君はなんとなく知ってるっぽいけど。」
「それも秘密だ。」
「何でもかんでもそれじゃああん!
良いからおーしーえーてーよー!」
「あらー、こんな所に居たんですねぇー。」
余り抑揚のない間延びした声が聞こえる。
その声にびくっ!と体を震わせ、ぎ・ぎ・ぎ、と油の切れたからくりの様な動きでそちらを見る偽メイド。
そこに居たのは牛獣人のメイドだ。
「お・て・つ・だ・い、して下さいねー?」
牛獣人のメイドは、偽メイドの腕をむんずと掴むと、そのままどこかへ連れて行った。
「ちょっ!はなっ!離せ!離せってば!
ぎぃっ!?痛い!痛い痛い痛いってばあああ!
離・・・離してえええ!たーすけてー!!!」
「「・・・・・・」」
デスロードと二人、その光景をただ見送るのみであった。
「あの娘、偽メイドの天敵なのか?」
「それは存じ上げませんが、ミノタウロス弟が一目惚れしてアタックをかけた際、軽くのされたとは聞きました。」
「なんだそりゃ!?
・・・あれで結構強いはずなんだが、あの娘は更に強いのか。」
「狼獣人の娘によると、村の娘の中では最強だとか。」
そりゃそうなんだろうが、そもそも牛弟に勝てるなら村で一番じゃないのか?
「ちなみに兄は断念したそうです。」
「何で?」
「サイズ的に・・・。」
「・・・それ弟も無理だろう?」
「恐らく。
あと、勝手に弟が懸想した際には万一に備えて抑えるつもりだったとのこと。
杞憂に終わったようですが。」
知らない所で眷属達の意外な一面が見えるものだな。
まぁ、無茶をしてなくて良かったと思うべきか・・・処罰しなくて済んだ。




