C6.2 足場固め ― 2 ― メイド達の憂鬱
「魔王様!」
次の日、珍しくメイドから声をかけられた。
ナ行の怪しい、元気印の小っちゃい猫メイドだ。
・・・何やら怒っている様な雰囲気だが・・・。
「どうした?何かあったか?・・・それとも私が何かしたか?」
「あ、いえ・・・大きな声で御呼び止めして申し訳ありません。
ですが・・・あの闇エルフの人!どうにかしてください!」
あー・・・そう言えばこの間メイドにちょっかいをかけていたんだったな。
聞くのを忘れていた。
「何をしでかした?」
「うー・・・とにかく!来て下さい!」
そう叫ぶように言うと、私の手を掴んで有無を言わさずどこかへと連れて行く。
・・・
・・
・
「ん~何が困るんだ~い?」
「貴方は、メイドにはなれません。」
静かに強く、姉猫メイドがぴしゃりと言い切る。
「いやいや、別にメイドになりたいわけじゃないんだよ。
彼のそばに居たいだけなんだよね・・・って、ああー!
なんで手をつないで来てんのさ!」
闇エルフの言葉で今の状況を把握したのか、ちび猫メイドがぱっ!と手を離す。
そして・・・少し離れた所に移り、真っ赤になって縮こまってしまった。
「ちょっと!君、女の子にあんまり興味無さそうだったじゃないか!
なのになんで手をつないでやってきてんの!?」
「その前に・・・何だお前その格好。」
「話を逸らそうったって・・・ってああコレ?
どぉ?似合ってる?」
メイド服に見えない、非常に丈の短いスカートをひらひらさせながら一回転してみせる。
とどめにウィンクと投げキッスの大盤振る舞いだ。
「お前・・・男・・・だったよな?」
「今は女の子だよ?見る?」
「見せんで良い・・・って言うか、そんなぽんぽん性別が変えられるのか?」
「うちの巫女に頼んで僕を産み直してもらったのさー!凄いだろー!」
頭を抱えてよろめく・・・。
ふっ・・・想像の枠を軽く粉砕してきやがった・・・。
何そのでたらめな能力。
唸っていると「ほらこれがお母さん。」と、自分を産んだ娘を紹介する。
え?産まれて10時間程?なんなのその成長速度。
「でね、メイドの仕事はしないけど、メイドのように近くに居ても良いかなぁ?
僕、これで一団の中では多くの魔導に長けているよ~?」
確かにこいつの持つマナのそれは、他の者達とは比べ物にならない位大きい。
異質・高純度・膨大・・・上げればキリが無い。
「僕はさぁ、僕の一団は僕の勝手で解散だなーって思ってたんだけど、女の子になってもついてきてくれるんだって。
だから僕を受け入れてくれれば、彼らは君の眷属も同じになるんだよ?」
確かにそういわれると魅力的な提案だが・・・。
メイド達一同の表情は険しい。
確実にノーだと言っている・・・が、
「分かった。
ただしお前がからかって遊ぶのは私だけにして置け。
他のメイド達を煩わせるのは禁止だ。」
「いやんっ♪『私だけ』だなんて、思いの他独占欲が強いんだからっ♪」
くねくねしている闇エルフ長をため息交じりに見つめる。
★闇エルフ長の偽メイドを手に入れた!
★メイド一同の魔王への好感度が幾分下がった!
・・・はぁ。




