C5.14 勢力拡大 ― 14 ― 帰路にて
「・・・・・・」「・・・・・・」
お互い何も喋らない。
心なしか、来る時より馬車は揺れている気がする。
・・・ふう。
このままだんまりで居るのも気が滅入る。
「デスロード。」
「・・・・・・」
デスロードはピクリと体を震わせ、ゆっくりこちらに顔を向ける。
「対談中もまるで喋らなかったな。
古竜魔王の真の実力が知れてからか?」
「・・・主は・・・“アレ”を・・・あんな者を前に・・・良く平気でしたな。」
答えとも質問とも取れる言葉が返ってくる。
私も一応魔物のあるのだから、巨大すぎる力が目の前に現れたら竦みもする。
自ら頭を垂れてしまおうとさえ、淡く頭をよぎったのも確かだ。
「平気では無かったよ。
ただ、現時点ではどうしようもない存在だと言うだけだ。」
デスロードが軽く仰け反り、おもむろに身を乗り出す。
「では・・・では!
主はいつか“アレ”を超える自信がおありだと!?」
「デスロード、情報をくれた相手を“アレ”呼ばわりは不遜が過ぎるぞ。」
デスロードの言葉に気分を害し、少々語気も強めにたしなめる。
「あ・・・も・・・申し訳ありません・・・。」
「あの方は今の所味方ではないが、親しくは接してくれる先輩と言える。
その方に対して不遜な態度や物言いは看過できんぞ。」
「肝に銘じておきます・・・。」
まぁこいつの狼狽は理解に易いので深くは追い込まない。
「超える自信があるかどうかだったな?
一言で言えば、今の彼なら超える自信がある。」
「本当ですか!?」
「ただし、全盛期の彼は考えるべくもない。
恐らくあの5~6倍、いやそれ以上かも知れないからな。」
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
デスロードは顎が外れんばかりに口を開けて驚いている。
「私の知る古竜の実力であるならそれ位は当然だろう。
千年を生きるドラゴンはマナだけで量れる存在でもない。」
「エンシェントドラゴン・・・。
これがハイエンシェントドラゴンやオリジンズともなるとどうなるのでしょうね。」
「眉唾だが、ハイエンシェントドラゴンは大陸並、オリジンズは月にも勝る巨体だと聞く。
月がどの様な大きさかは分からんが、大陸以上の巨大さであると思えば間違いないだろう。」
「もはや想像などできる世界ではありませんな。」
「そんなものと喧嘩した奴がいるなんていうのはもっと想像がつかん。」
「もう大魔法学院の噂話レベルですね。」
「あれで歴史はしっかり辿れるのだから、本当であっても驚かないよ。
関わるのはごめんだけどな。」
「・・・・・・」
話は無駄にでかくなったが、話をしたからか許容を超えたからなのか、デスロードは落ち着きを取り戻した。
そしてそこからは、会いに行った時と同じように、馬車の揺れは殆ど無くなった。




