C5.8 勢力拡大 ― 8 ― 獣人の村
明らかに高位のイモータルズであるデスロードを、顎で指図する私の事を怯えた面持ちで見つめる多くの目。
その中に居て物怖じせず、じっとこちらの目を見つめてくる者が居る。
長、もしくはそれに準じる者だろう。
「話をしたいんだが・・・お前が良いか?」
「私は村長の娘だ。
今戦士達は出払っている。
・・・我々の生殺与奪はお前の手の中だ。」
こうしている間にも哀れな ―等とは微塵も思わないが― 人間が命を吸われて絶叫している。
「煩い事だ・・・まぁあれはどうでも良いんだ。
戦士が出払っていると言ったな?」
「そうだ。
だから今我々の中で戦えるものは居ない。
お前の一存で全て決まる。」
その表情から何が起きても決して屈さない!と言う意思が感じ取れる。
勇ましいものだ。
「お前達にとって何が一番良いのか聞いておこうか?」
「・・・ただ立ち去ってくれるのが一番良い。」
「ふむ・・・容易い事よな。
だがこんな可能性は考えたりしないのか?
例えば帝国軍人らしき奴が帰ってこない・・・それに焦れた本隊が大群で押し寄せてくる可能性がまだある、とかな。」
「!!!」
そこで初めて不安の色を見せるが、私は気にせず言葉を続ける。
「デスロードの食事が終われば我々は出て行こう。
そもそもがただの通り道だったわけだからな。
私は人間にも獣人にも興味は無い。」
「・・・」
私の口にした“可能性”に色々考えを巡らせているのか視線が泳ぎまくっている。
やがて悲鳴も怨嗟の声も聞こえなくなってきていた。
「さぁ、用は済んだな?」
「はい、我が主。」
うわぁ、心底満足そう・・・な顔をこちらに向けるデスロード。
見ると先程の人間どもは完全に干上がっている。
「では行こうか。」
「ま、待って・・・待って下さい!」
「何だ?ただ通り過ぎるのが一番良いのだろう?」
「・・・今我々には戦える戦士が居ない。
もう一度、あれ以上の規模で来られたら・・・終わりだ。」
「で?」
「・・・我々に差し出せるものがあれば差し出す。
どうかご助力願いたい。」
そういった獣人の娘は平を上にして両手を差し出し、地に伏した。
従属の意思表示みたいなものか?
「デスロード。」
「はい、そうですね・・・別動しているクーシーケットシー混成部隊をこの周りにめぐらせましょうか。
イモータルズは地中に潜らせましょう。
目立ちますからね。」
「ではそう指示を出して置け。」
「は。」
さくさくと話が進んでいることに、両手を差し出したままの娘が目を白黒させる。
「あ・・・え?あの・・・対価・・・は?」
「長の娘とはいえ、お前が決めて良い問題ではないだろう。
縋るしかないなら縋る、そこまではお前の判断でも仕方ないとしても、だ。
帰りもこの道を通るからその時までに話を煮詰めて置け。」
そう言い残し、さっさと馬車へと戻る。
まったく・・・無駄な寄り道だ。
村長の娘は狼の獣人です。
主人公視点で話を綴ると、どうしても興味のあるもの以外の細部の情報が要らなくなってしまいます。
ここら辺は付録みたいな物で補完すべきでしょうか・・・。




