C4.5 第3の魔本の魔導師 ― 5 ― 手紙と方針と
―私の送った手紙
拝啓、お師匠様、毎日いかがお過ごしでしょうか?
積もる話は色々御座いますが、私この度魔王になりました。
敬具
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「やれやれ・・・あの子ったらとても信じられない凄い事を、たったこれだけの文章で寄こしてくるんだから。」
たっぷり長い髭を蓄えた好々爺然とした魔導師が、先程届いた手紙を読んで嬉しそうに目を細める。
「これは手紙とは言わないよ、報告らしき何かだよね。」
そう愚痴りながらもニコニコと当時を懐かしむように目を閉じる。
「ご子弟からの手紙かね?」
「ええ、ええ、そうですよ。」
一緒に居た人物が声をかけ、魔王の師はそれを肯定する。
「とても優秀な子でしたが、気難しくてね。
私は未来を憂慮しておりましたが・・・元気にやっているようです。」
「そうかね。」
「さて、私の方も手紙を返してあげないとね。」
そう言って筆を手に取るのだった。
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―師匠からの返事
やあやあ久しぶりだね。
堅い堅いねぇ、手紙位軽めに書いておくれよ。
それより何だい?魔王になったって?
積もる話を書いてくれないと、たったこれっぽっちじゃ分からないよ。
何にせよ、分かれる時に『互いに驚きをもって』とは言ったけど、一方的に驚かされてしまったよ。
何があってそうなったかは知らないけれど、元気でやってるならそれで良い。
また何かあったら ―私の力で何とかなるとは思えないけど― 連絡を寄こしなさい。
何ができるか私なりに一生懸命考えるから。
―君の良き友人より
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私の手紙とは違い、読む文章からお師様の暖かさが滲み出てくるように感じる。
それにしても“師匠より”ではなく、“君の良き友人より”とは・・・。
嬉しくもあり寂しくもある。
お師様にはお師様のままで居て欲しいと思うのは欲張りだろうか。
そう言えば・・・お師様の近況については書かれていないな。
大事なことが抜けているのは、お互い似た者師弟と言う事だろうか。
少し寂しさが和らぎ、また暖かくなる。
・・・まだ人間ぽさが抜け切れていないからそう感じるのだろうか?
それとも人間の根幹部分は残り続けるのだろうか?
あの誘いに乗って何も考えずに魔王となったが、私は今どういう立ち居地なのだろうか?
人?魔物?魔王?何もが中途半端なような気もする。
お師様は別れ際『自分自身を見つめ直す』と仰られていた。
私も自分自身を見つめ直し、把握し直す必要があるのではないか?
私の事、魔本の事、魔導の事。
こと魔導に至っては、かなり長く研究から離れている。
有用な部下もいる事だしここらで少し取り組んでも良いかもしれない。
ただ・・・目の前の案件を、魔本の魔導師を片付けるのが先だな。
待っているが良い・・・。




