C6.21 足場固め ― 21 ― 非エルフの言い分
「お前、天魔王とはどういう関係だ?」
「まぁ、大した関係でもないけどね。
でもだーりん、僕らはさ、仲良くしてるけどプライベートまで曝け出し合う程の仲じゃないよね。
僕の事は信用できる?愛せる?」
「どさくさに紛れて難度を軽く上げるんじゃない。
・・・そうだな、信用し合える程の仲ではないな。」
「ふふっ、でしょう?
だって古竜魔王との対話に僕を呼ばなかったのは、何かしら隠したい意図があったはずだよね?」
・・・こいつ、さらっと核心を突いてくる。
うちにはほぼ居ないタイプだな。
「それに・・・さ。」
偽メイドは前傾姿勢に体を揺らすと、ふっ、と消えてしまう。
「こんなエルフの秘儀、だーりんは知らないんだもんね。」
いつの間にか真横で私の首に腕を回す偽メイド。
幹部たちが警戒態勢を取るが、仮にこいつに敵意があれば遅すぎるとしか言えない。
黒エルフに視線を送ると、渋い顔でうなずく。
成程、確かにエルフの秘儀の様だ。
「で?それがどう関係するんだ?」
「んー、ここまでしても手の内を見せてくれないなんて、いつも通り意地悪なだーりんだねぇ・・・ま、いっか。
つまりね、僕達にしか出来ない撒き方ってのがあるのさ。
むしろだーりんの眷属には、奴らと事を構えないように傍観の姿勢を取って欲しいかな。」
「天魔王とはそれ程の者か?」
「だーりんは古竜魔王と戦って勝てる自信がある?
もちろん、本来の実力の方で、だよ。」
・・・古竜魔王と同等?
じっと偽メイドを見つめると、じっと見つめ返してくる。
いつものおふざけも無い、本当の本気の様だ。
古竜魔王の本来の実力と同等。
加えてエルフの秘儀とやらももちろん絡んでくる。
更に魔導にも造詣が深い。
・・・お手上げだな。
「良いだろう、お前の言う通りにしよう。」
「ふふっ、いい子だねだーりん「ただし」・・・ただし?」
「対エルフ戦闘訓練を実施する。」
「・・・はい?」
「客人を危険に晒す?
それは私の器の底が知れる問題だ。
だからお前の言うことを通させる代わりに、対エルフ戦闘の指導を行ってもらう。」
「・・・はいぃ??」
「本当は実力行使は性に合わなかったんだが、余りにもはっきり相手にならんと言われたのでな。
そんな奴が敵に回った時の事を考えておくべきだろう?」
「・・・え?えええ??本気で???
てか、言ってること無茶苦茶だよお!?」
「お前には暫く付き合ってもらうからな、覚悟しておけ。」
あんぐりと口を開けた偽メイドは、ぎぎぎと音を立てそうなぎこちない動きで黒エルフのほうに振り返る。
すっと視線を逸らす黒エルフ。
「なんだい!この裏切り者お!口元が笑ってるじゃんかあ!」
「わぷ・・・笑って・・・なひ・・・ぷっ。」
「むきー!だーりん!だーりん!あいつも!巻き込もう!」
「だがあの者には相手にならないとは言われていないぞ?」
「んがっ!・・・じゃあ聞いてみなよ!」
「私は天魔王とは面識ありませんので、憶測では言明致しかねます。」
「・・・がー!卑怯者ー!!」
諦めろ偽メイド。
こうして偽メイド主導の訓練が開始されるのだった。




