表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

終わりは突然に

 俺の名前は溝内正隆みぞうちまさたか。大学受験に落ち、就職難の御時世の波に飲まれ、フリーターを続ける二十歳だ。

 趣味は漫画とゲーム。オタクと言う程詳しくもないが、最近ハマっているゲームがある。

 友人に勧められたアプリで、よくあるファンタジー物のRPGだ。冒険者となりクエストを熟しつつ、ダンジョンを攻略していく。気の合う仲間と出会えばパーティーを組み、連携したバトルが出来る。

 何処にでもあるゲームだが、定期的に起こるミッションと幅広いキャラクター層で、自分好みの分身が作れるのでユーザーは多いと思う。何よりグラフィックがとてつもなく綺麗なのだ。最初は本当に携帯ゲームか? と驚いたものだ。 時間の合間を見てはやり込んでいたある日、一周年イベントがあると告知がきた。これはやらなきゃダメだろと、夜八時から出来るイベントに向けて食料を調達しに家を出る。

 コンビニで夜食用の弁当とお菓子、ジュースをカゴに入れ雑誌を立ち読み。週刊雑誌の表紙に俺好みの可愛いアイドルの子が載っていた。こんな可愛い子が恋人になってくれたらな……無理だけど。

 画面越しだとペラペラと喋れる俺だけど、実際に会うとなると無言になってしまう。相手の顔色が気になってしまって声が出なくなるからだ。リア充出来る奴が羨ましい。

 しかし俺にだってゲームで知り合った可愛い子がいるんだぜ。エルフのゆりりん。実物は可愛いのかとか考えたら駄目だ。そのゆりりんと今度のイベントを一緒にやる約束をしているので、時間は厳守。コンビニの時計を見て足早に店を出た。

 近道しようと細道を出た所で、建設中の建物が目に入る。


「へー、今度この店が出るのか。他にも色々出るんだな、楽しみだ」


 都会にしかない店が地元に出店してくれるのは嬉しい。行きたくても遠すぎて行けないというのは、田舎に住んでいる人間なら1度は思うはずだ。

 この店に興味を持っていたダチに教えてやろうと携帯を取り出すと、足下の影が歪な形に歪む。


「え……」


 なんだと思い顔を上げれば、上空から鉄骨が。それはスローモーションのように、ゆっくり俺へと落ちてくる。


 は? なんだこれ。こんなもん俺の上に落ちてきたら即死だろ。動けよ俺の足。逃げろよ!


 どんなに体を動かそうとしてもピクリとも体は動かず、逃げる事が出来ないまま鉄骨は俺に直撃した。


「キャーッ!」

「人が下敷きになったぞ!」

「救急車、誰か救急車をっ!」


 遠くでサイレンの音がする。視界は真っ暗で身体中が熱い。ピクリとも動かせない体、薄れていく意識。

 嘘だろ、俺は此処で死んじまうのか? まだやりたいことがあるのに。就職だってしたい、彼女だって欲しい! それに今日はゆりりんとイベントをする約束なんだ。彼女と一緒に冒険をするだ!


 意識が完全に途切れるまで、俺の頭はゲームの事でいっぱいだった。









『先程入ってきたニュースです。本日午後7時過ぎ、建設中の建物の鉄骨が落ち、下敷きになった男性がその場で息を引き取りました。警察は建設会社を業務上過失知事と見て―――』




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ