冬の舞踏会(アキちゃん)
アキちゃん…
同じクラスで、とても明るく男子にも女子にも人気がある。
但し、アキちゃんには、お母さんが居ない。
その上お父さんが体調を崩し、去年の暮れから病院に入院している。
しかし、アキちゃんは、そんな苦境など…
微塵も見せない。
アキちゃんにはお父さん以外に身寄りがなく。
小学五年生の彼女は施設から学校に通っていた。
施設には色んな事情で入所する子が居るらしい。
下は保育園の年少の子や
まだオムツの外せない程の子供も居るらしい。
『奇遇だね。
アキちゃんも、サンタから乗車券を貰ったの?』
『うん…サンタさんにお父さんの病気を治して一緒に暮らしたい!と、お願いしたの。
そしたら…その願いはサンタさんには叶えられないって言うの。』
『それは僕も言われた。
僕はお母さんの幸せを願ったんだ。
やはり、その願いはサンタさんには叶えられないって
その願いは、星の女神に頼みなさいって。』
『私も、サンタさんに、星の女神に頼みなさいって…そして…辛いだろうが
今まで通り、誰かの為に、みんなの為に心を尽くせば来年のクリスマスイブに、銀河特急が、迎えに来るって
車掌さんの話では、終着駅のポラリスで星の貴族を迎えて舞踏会が開かれるらしいの…
そこで、星の女神に謁見し願い事を伝えるらしいの。何でも星の女神は星々の中心らしいの』
『それで…最後尾に貴賓室があるんだ…
それにしても、特別室って絨毯はフカフカだし、ベッドやソファーなんかの調度品も豪華だよね?』
『私…普通の女の子なのに…少し怖いわ…』
僕は知っている。
クラスで笑顔を振り撒くアキちゃんの手には、痛々しいあかぎれがあることを…
『そんな事は無いよ!
みんな、アキちゃんの笑顔が好きだし、僕も癒されてる!』
さっと、アキちゃんの顔が赤くなる。
僕は今、とんでも無い告白をしたのか?
それに気づくと、僕もアキちゃん同様に顔から火が出るほどに熱くなり
二人でうつ向き、やるせない時間が過ぎようとしていた。
その時…
『只今より、月の周回軌道に入りスイングバイ航法に入ります。
皆さん車両が揺れる事がありますので、決して部屋から出ないで下さい。』と
放送があった。