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冬の舞踏会  作者: カモメ
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銀河特急

僕はお父さんが大嫌いだ。そして…

お母さんが大好きだ。


お父さんはリストラされるまでは、優しく…頼もしいお父さんだった。


親子三人で小さなアパートながら…

いつも笑顔で暮らしてた。

僕が大好きなお母さんは栗毛の髪の毛を後ろに結わえながら、いつも僕にこう言った。


『和夫…幸せって失って初めて、ああ…あれが幸せだったのね…って気付く物なのよ…』って言っていた。


それが現実になろうとは、僕は母と共に理解はしてなかったみたいだった。


父さんは、リストラされてから職を探すも見つからず…

昼間からお酒を飲むようになった。

お酒を呑んだお父さんは、お母さんに何かにつけて当たり散らし、遂には手をあげるようになった。


僕が小学三年生のある夏の夜…

お父さんは何時もの様に呑んだくれ…

お母さんを叩き始めた。


僕の大好きなお母さんに手を挙げるのは許せない。


僕は…お母さんを護るべく両手を広げ…

お父さんの前に立ちはだかった。


すると…今までいくらのんだくれても、僕にだけは手を挙げなかったお父さんは『邪魔だ!!どけぇ!!』と足蹴にした。


お母さんは、吹き飛んだ僕を庇う様に覆い被さり

お父さんの暴力を受け続けた。

お母さんは、自分が暴力を受け続ける事は我慢が出来たが


僕にまで手を挙げる様になると、もう…我慢の限界なのか?

お父さんに離婚を切り出した。



離婚を切り出されたお父さんは、遂にこの日が来たのか?と言う表情で座り込み酔いも一気に醒めたようだった。


程無くお父さんは荷物をまとめ…

と言っても大した荷物など無く。

ほぼ…手ぶらで家を後にした。


お母さんは、家計を担いパートを掛け持ちするようになった。


僕が出来る事と言えば…

アパートの掃除やお母さんに頼まれた買い物等をこなして行った。


そして僕は四年生になった。


お母さんの栗毛色の髪は褪せ…少し老けたかも知れない。

手のあかぎれが、苦労を物語る。


僕はお母さんの幸せを願い続けた。


お母さんは、パートの掛け持ちで疲れている。

僕の出来る事は肩叩き位だ。


でも…僕は幸せだった。

何物にも変えがたいお母さんの側で暮らせる事が…


そして…

その年のクリスマス…

ケーキもプレゼントも無いイブを迎えた。


『和夫…ごめんなさいね…プレゼントもケーキも無くて…』


『そんな物は、いらない。僕にはお母さんの笑顔が一番のプレゼントだよ。』


お母さんはクシャクシャの泣き笑いの顔になり…

『家計の事は気にしなくて良いのよ…

欲しい物があったら、遠慮なく言ってね。』


少しキツイくらいに抱き締められながら


『ううん…お母さんの笑顔だけがあれば良い…』

何時までもお母さんは僕を抱き締めていた。



草木木も眠る丑三つ時…

僕の枕元に気配を感じたが…

僕は眼を開かずにいた。


気配の主は

『不思議だ…この子の望みが解らない。』と呟く…


僕は薄目を開けて気配の主を覗いた。


気配の主も僕を覗き込んでいた。



それは…

赤い服に白い髭を沢山蓄えた



サンタクロースだった。



『僕は飛び起きサンタクロースに言った。


『願いならあるよ。』

すると…サンタクロースは『ほう…』と軽く驚き。


『ならば願い事を言いなさい。』と優しく言った。


僕は間を置かずに、

『お母さんを幸せにして欲しい!!』

と願い事を伝えた。


サンタクロースは少し戸惑いを見せ…


『その願いは私には叶えられない。』と断られた。


『サンタクロースって、何でも願いを叶えてくれるんじゃ無いの?』


『ワシは良い子が喜び良い子であり続ける事を願う聖人なんじゃ…


和男君…君の願いはワシでは無く。

星の女神に伝えると良い…』

と…

一枚の乗車券を手渡した。

サンタクロースは

『それは…銀河特急…特別室の乗車券じゃ…

但し…

来年のクリスマスイブの乗車券じゃ…

今年は、もう…満員でのう

来年良い子で居れば、迎えに来る。


と、にこやかに語り…

ソリに乗って行ってしまった。


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