活動内容・野球部にて・・・
「また負けた〜!」
一人の少女が顔を手で覆い、上を向いて椅子から立ち上がって叫んだ。
体格は小柄だが、その声の大きさからは病弱や大人しいなどの単語とは無縁の性格だとわかる。
その横から、クスクスと笑い声が聞える。
「依実は顔に出やすいから」
まっすぐな黒髪を腰辺りまで伸ばし、日本人形のような整った顔立ちをしている少女が机に散らばったトランプを集めていた。
「そうそう。ばば抜きなんてしたら絶対お前が負けるのに、なんで何回も何回もしたがるかな」
同じようにトランプを集めていた少年が呆れたように言った。
こちらは、少しツリ気味な目が凛々しい美少年だ。
「むっ、だって負けてばっかりじゃ悔しいじゃん。それに、あたしそんなにわかりやすくないもん!普通だよ!千佳ちょと海都が無表情すぎるんだよ!」
「いや、お前がわかりやすすぎ」
「いいえ、依実がわかりやすすぎ」
二人同時に同じことを言われ、依実は反論することが出来なくなった。
この三人は、部活でここに集まっている。
小さいのが、部長の三浦依実。
美少年が、副部長の羽橋海都。
日本人形が、会計の村上千佳。
そしてまだ来ていない、書記の渡辺太郎。
この四人が『よろずや部』の全メンバーだ。
『よろずや部』の活動内容は、簡単に言えば何でも屋。
他の部活や委員会から依頼があればそれを手伝い、無ければゲームをしたりおしゃべりしたりと好きに過ごす。
そんな部活だ。
「そんなことより、太郎はどうしたんだ?」
「そんなこと!?」
「そうねぇ。HRが長びいてるのかしら?そろそろ来るんじゃ」
ガラッ!
「こんちはー!」
千佳の言葉を遮って現れたのは、噂の太郎だった。
「タロン遅かったね。何してたの?」
「・・・その前に、そいつ誰?」
海都は依実の質問を流して、この場には異質な存在について尋ねた。
太郎の後ろには、髪が短く日に焼けた肌が健康的な、まさにスポーツマンといった感じの少年が立っていたのだ。
「ふっふっふっ。こいつはオレの友達兼今回の依頼人だ〜!」
太郎は少年をアピールするように前に引っ張り出した。
「依頼人!?」
「そぉ、依頼人!オレ偉くない〜?」
「あら、久しぶりのお仕事ね」
「・・・おい、なんかそいつ困ってるぞ」
きゃっきゃっとはしゃいでいた三人は、海都の言葉で少年の方を向いた。
少年はカチコチに固まっていて、三人の視線にビクッと体を震わせた。
「・・・ゴホン。まぁ、とりあえず」
依実は、少年を中に招き入れるように体をずらし、微笑んだ。
「お話を伺いましょう」
「俺、野球部で矢原っていいます。・・あの・・・・野球部の宝。伝説のゴールデンボールを捜して欲しいんです!」
「「伝説のゴールデンボール?」」
依実と千佳の頭には疑問符が浮かんだ。
その疑問に答えたのは海都だ。
「確か、二十年前ぐらいに甲子園の決勝で逆転ホームラン打ったときのボールだ」
「そうそう〜。それを矢原が間違って使っちゃって失くしたんだって〜」
「ふ〜ん。それで、代わりのボールを置いてあるけど、いつバレるかわからないから部活休んで捜しているってところか」
「うっ・・・はい」
矢原は、あまりにもあっさりと図星を指されて少し戸惑ったようだ。
さらに追い討ちをかけるように依実と千佳が言った言葉は―――――
「バッカじゃないの」
「バカね」
「・・・・・・へ?」
矢原は口をあんぐり開けてポカーンとしている。
はっきり言って間抜け面だ。
そんな矢原に、海都は確認するように訊いた。
「野球部のモットーは『仲間を信じる』だったよな?」
矢原は、急に何を言い出すのかと首を傾げた。
「あなたは自分のしたことを隠して、仲間から逃げたのね」
「案外チームのみんなと捜したらあっさり見つかるかもね〜」
その言葉に、矢原はハッとして俯いてしまった。
依実はそれを見てニヤっと笑うと、人差し指を腕ごとビシっと上に向けて、
「よし!今回の依頼は、ヤハッチを野球部までお届けに変更!」
「えっ?「「「りょ〜かい」」」」
海都と太郎は、矢原の腕をがしっと掴んでドアの方へ引っ張っていく。
「えっ、ちょ、ちょっとまっ・・・」
「無駄よ。依実は、こうと決めたらなかなか引かないし、私たちもこれには賛成だから」
「まだ抵抗するなら、黙らせて連れて行く方法も・・・」
太郎は拳を力いっぱい握り締めながらにっこりと笑った。
首をおもいっきり左右に振った矢原は、それっきりしゃべらなかった。
「おい、あれ矢原じゃないか?」
バットを振っていた少年が校舎のほうを指差した。
「えっ?矢原!?」
「あ、本当だ」
「なんか引きずられてないか?」
不思議がっている野球部員たちに、依実たちはどんどん近づいていく。
「ど〜も、よろずや部で〜す♪ヤハッチをお届けにあがりました☆」
その言葉で、海都と太郎は矢原の腕を離す。
「お届けって・・・」
矢原の前に一人の野球部員が出てきた。野球部の主将だ。
矢原は目を泳がせて後ずさりしようとしたが、ぎゅっと目を瞑ると、意を決したように前を向き、
「実は、伝説のゴールデンボールを失くしてしまいました!すみません!!」
土下座しそうな勢いで謝った。
「?矢原、何を言っているんだ?ゴールデンボールなら校長室にあるぞ」
「へ?」
「校長の友人が是非見たいとおっしゃるらしいから、一ヶ月前ぐらいに貸したんだ」
「俺、一週間前くらいに校長室でボール見たぜ」
別の部員がその話が本当だということを証明した。
矢原がボールを失くしたのは五日前だ。
「じゃぁ、俺が失くしたのは・・・」
「普通のボールだろうな」
主将はあっさりと言った。
これで、矢原の五日間の苦労は無駄に終わったことになる。
「お前、それでずっと部活休んでいたのか?」
矢原は気まずげに頷く。
「バカか!そういうことは部活の問題だ。ちゃんと俺達に言えよ。みんな心配してたんだぞ」
周りから肯定している気配が伝わってきて、矢原の目に涙がうっすら滲む。
しかし、これ以上みっともないところを見せられないと思い、ぐっと堪え、「すみません」と呟いた。
「とにかく、俺達は仲間だ。辛いときや悩みがあるなら何でも相談に乗るから恐がらなくていい。もちろんお前達もだぞ!」
主将は、後ろで話を聞いていた部員達にも伝わるようにと目を向けた。
「さすが、強豪といわれてるチームをまとめてる主将さんだね〜。しっかりしてるぅ」
太郎が横にいた海都にコソッと言った。
「さぁ、練習始めるぞ!矢原は早く着替えて来い。今年こそ甲子園優勝するぞ!」
「はい!!!」
部員達は元気よく返事をすると、自分達の持ち場に走って行った。
主将も依実たちに軽く頭を下げてから部員達の後を追う。
「よろずや部のみなさん、本当にありがとうございました」
「いやいや、あたしたちはヤハッチを連れてきただけで、ほとんど何もしてないから」
「でも、連れてきてもらったおかげで助かりました。それに、大切なことも教わりました。だから、ありがとうございました!」
そう言うと、矢原も部活の方へ戻って行った。
依実はそれを見送り、海都、千佳、太郎へ満足そうな顔を向けた。
「今回の依頼はこれで終了ってことで・・・」
「「「「お疲れー」」」」
「あっ、ばば抜き!ばば抜きの続きしよ!」
依実が海都の腕にしがみ付く。絶対にするのだというように。
「どうせお前が負けるだろう」
「次は絶対勝つ!」
依実は勢いよく拳をあげた。
が、その拳が海都の顎に当たりこっぴどく怒られ、千佳と太郎がそれを温かく見守ったとか見守らなかったとか・・・・・。
すっごく薄っぺらい内容になってしまいました;
まだまだ修行が足りませんね(−−;)




