活動内容・よろずや部にて…
桜が満開をむかえ、ひらひらと風に乗って落ち始める頃。
それを、教室の窓から静かに眺めている少女がいた。
さらさらの黒髪を腰ぐらいまで伸ばし、可愛いとも美人ともとれる、とても整った顔立ちをしている。
しばらくそのまま眺めていると、突然ガラッとドアが開いて一人の少年が入ってきた。
「こんちはー!って・・・あれ?千佳ちょ、一人〜?」
少年は、ちょっと語尾を延ばし気味で周りをキョロキョロと見回した。
「こんにちは、太郎君。今日は遅かったね」
少女、千佳ちょこと村上千佳はゆっくりと少年の方を向いて微笑み近くの椅子に座った。
少年、渡辺太郎も千佳の近くに行き、机の上に荷物を置いて椅子に座る。
「それがさぁ、数学の課題するの忘れてて、居残りさせられちゃったよ〜。この前のもしてなかったのが不味かったみたい」
と、言いながらケラケラ笑っているところを見ると、不味かったと言うわりに本人はまったく気にしてないようだ。
まぁ、それで落ち込んでいる太郎君も想像できないけど・・・。
千佳は、まだ笑っている太郎を見て苦笑した。
千佳にとっての彼は、元気で明るくて活発で、一言で言うなら小猿だ。いや、これは別の人の言葉だ・・・。しかも身近に、小猿といえる人物がもう一人いたりする。
話を戻すが、意外としっかりしていて頼もしい一面もある。それが、渡辺太郎の印象だ。
「ところで、部長達は〜?」
太郎は机に顎を乗せて首を傾げる。
「海都君は生徒会で遅れるらしいけど、依実は聞いてないの。どうしたのかしら?」
「依実も先生に捕まってたりして〜」
太郎がニヤニヤしながら言うと、千佳は考える風にして言った。
「でも、捕まるような事は特になかったと思うんだけど・・・」
「じゃぁ、今日は部活ありませんってオチだったらどうするぅ?」
太郎が、言い終わると同時に、ドアが開く音と「悪い、遅れた。」という声が聞こえた。
そこには、誰もが認めるであろう美少年が立っていた。
長身で、少しツリ気味の目はキツイ印象を与えるどころか、凛々しさが増し、彼の落ち着いた雰囲気にとてもよく合っていた。
「あっ、海都!生徒会の方は終わったの〜?」
太郎は顔を後ろに向け、歩いてきた彼、羽橋海都に訊いた。
「あぁ。とりあえずはな」
海都はため息をついて、太郎の前の席に座った。
「お疲れ〜♪生徒会ってただでさえ忙しそうなのに副会長だもんな〜。大変だろぉ?」
「あら、大変だからこそ私たちの部活が活躍するんでしょう?」
千佳がにっこり笑って言った。
今までの話でも分かるように、彼女たちは部活でこの教室に集まっているのだ。
ちなみに、書記・渡辺太郎、会計・村上千佳、副部長・羽橋海都。
そして―――――――
バンッ!!!
「部活勧誘〜!!」
「「「・・・はぁ?」」」
勢いよくドアを開けて、突然意味不明なことを言った、年のわりに小柄な彼女が、部長の三浦依実。そして、もう一人の小猿。
この四人がしている部活とは、『万屋部』いわいる『何でも屋』だ。
『暇ならみんなで楽しく過ごしましょう☆』ということで、お喋りをしたり、ゲームをしたり、他の部活や委員会の手伝いをしたりと、好きに過ごしているのがここの部活内容。
「だ〜か〜ら〜、部活勧誘だよ!春だよ!?春といえば新入生!勧誘しないでどうすんの!?」
依実は、腕を振り回しながら足をバタバタさせている。
千佳と太郎が、依実の急な発言に不思議がっていると、その横から、静かだが厳しさも混ざった声が聞こえてきた。海都だ。
「お前、生徒会室の横に立っている木に登ったな」
ビクッ!
その、質問というより確認のような声に、依実は顔を強張らせて動きを止めた。
「えっ!?生徒会室の横のって・・・すっごく高くなかった?」
「たけぇよ。三階にある生徒会室と同じくらいだからな」
海都は、口調をそのままで依実に近づいていく。
「大方、あの木に住み着いてる鳥に餌でもやろうとして登ったら、生徒会の話が聞えたんだろう。今日は、部活紹介会の話もしてたからな」
すると、依実はバッと顔を上げて海都を見上げた。
「すごい!海都、大当たりだよ!」
グィィ〜〜〜〜〜〜!
「お〜ま〜え〜は〜、あれほど危ないから登るなと言ったのに、何度言えば分かるんだ!!?」
「いひゃひゃひゃひゃ!」
海都が、依実の頬を左右におもいっきり引っ張ったのだ。
「さすが幼馴染〜、何でもお見通し〜」
太郎がケタケタ笑っていると、千佳が「何度も・・・」と、呟き依実に近づいて手を握った。
「依実、あの木は本当に危ないと思うの。何度も登っているから大丈夫と思っているのかもしれないけど、もし落ちてしまったらどうするの?そんなことになったら、私・・・」
真剣な目は、少し潤んでいる。
「わ、分かった。あたし、もうあの木に登らない!だから、心配しないで」
依実は、千佳の言葉に感動したようで、同じように瞳を潤ませて、手を握り返した。
「おぉ〜、さすが千佳ちょ〜。依実の扱いに慣れてきたなぁ」
「いや、あいつが単純すぎるんだろう」
後ろで、こんな会話があったことを依実と千佳は知らない。
「で、部活紹介どんなことする?やっぱり、インパクトがあるのがいいよね!」
友情を再確認した依実は、生き生きと話を戻した。
「えっと、そのことなんだけど」
千佳は言いにくそうに目を逸らした。
太郎も視線を上に向けて目を合わせない。
「?千佳ちょもタロンもどうしたの?」
「気まずいんだろ。お前が何も知らないで、無邪気に張り切っているから。」
「え?」
「部活紹介会は、もう三日前に終わってる」
海都の、なんともないという感じのあっさりとしたもの言いに、依実は、何を言われたのか理解するのに数十秒かかった。
やっと出た言葉が、
「・・・・うそぉん」
これだ。
「な、な、なんで言ってくれなかったの!?あたし達の部活、紹介してないじゃん!」
依実は机をバンバン叩き、喚きだした。
海都は、ため息をつくと依実の頭に手を置いて、落ち着かせるようにポンポンと叩いた。
「仕方ないだろ?紹介会があった頃は猫探しの依頼で忙しかったから、今年は止めたんだ。別に、紹介会でじゃなくたって勧誘の方法はいくらでもあるだろ?」
「うぅ〜。そぉだけどさぁ」
「まだ、不満なのか?折角、生徒会からの依頼持ってきたのに、断ってもいいのか?」
海都はニヤリと笑って言った。
「えっ?依頼!?やるやるやるやる!やるよ!!どんな依頼!?」
依実は、「依頼」と聞いて目をキラキラさせて飛び回った。
どうやら、紹介会のことは忘れたようだ。
「やっぱり、幼馴染なだけあって扱いはプロだな〜」
依頼内容を楽しそうに聞いている依実を見て、太郎が感心したように言う。
「違うわ。依実が単純だから、扱いやすいのよ」
千佳がニコニコしながら言った。
その表情は、本当に楽しそうだ。
太郎は、さっき似たようなことを言った奴の方を見てクスクス笑った。
この二人は似たもの同士なのか〜。
「お〜い。仕事行くよぉ。依頼場所は、第二会議室♪」
依実は、こっちに手を振りながら、うきうきとドアの方に歩いていく。
海都もその隣で二人を待っている。
千佳と太郎も二人に向かって歩き出した。
さぁ、暇なら私達と楽しく過ごしましょう!
☆天川学園高等部生☆
三浦 依実
『よろずや部』部長。2年A組在籍。2月17日生まれ。
身長144cmと年のわりに小柄だが、超元気で、超明るくて、超身軽な、考えるよりまず行動の超突進型。
天然なところもあり、幼馴染の海都によく世話をやかれる。
羽橋 海都
『よろずや部』副部長兼生徒会副会長。2年C組在籍。5月8日生まれ。
凛々しい顔立ちに落ち着いた雰囲気で、誰もが認めるであろう美少年。
そのうえ、スポーツ万能、成績優秀、クールだが優しい性格のモテモテ君だが、幼馴染の依実の保護者的存在でもある。
村上 千佳
『よろずや部』会計。2年C組在籍。9月29日生まれ。
腰辺りまで伸ばした長い黒髪と、可愛いとも美人ともいえる整った顔をしている。
しかし、そのせいでいろいろ大変な事もあったらしい。海都に似て、落ち着いていて、依実のことが何かと心配。
渡辺 太郎
『よろずや部』書記。2年E組在籍。10月26日生まれ。
元気で明るく、活発的。依実のいたずら仲間。
だが、結構しっかりしていて頼もしい一面もあり、女子からの人気も良い。語尾を少し延ばすのが癖。




