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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第2章:最果ての地より君を思う!!」

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「ママのやり方で!!」

 ~~~アデル~~~




 伝説の冒険者にして凄腕の精霊使い(エレメンタラー)、現役の『嫁』。

 優秀な政治家であり、家庭では陽気な母。

 世間一般がソニアに抱くイメージは、だいたいそんなものだろう。


 だがジーンにとっては違った。

 ある種の恐怖の象徴だった。


 格闘術と銃器の操作、エーテル運法うんぽう

 ジーンが小学校に上がった年、ソニアの個人授業は始まった。

 大統領官邸の広い中庭で、彼女は鬼のように振る舞った。

 乱暴な言葉を使い、時に暴力を振るった。

 出来ないと泣き叫ぶジーンを引き摺り回し投げ飛ばした。


 教えは身に着かなかった。

 激しくすればするほどにジーンは萎縮いしゅくした。

 ただ怯え、時間の経過のみを願うようになった。


 そのうち逃げるようになった。

 授業の時間になると行方をくらました。家の中で顔を合わせることすら避けた。

 外へ外へというジーンの志向は、そうして産まれたものだ。

 同じく伝説級の冒険者でありながら、ソニアではなくロキに憧れるのも、そういった理由からだ。


 そうして今、ジーンはここにいて……。





「ママと同じ……指導法だって……っ?」


 ひくひくと唇を震わせている。

 顔から血の気が引いている。


「殺される……っ!」


 踵を返し、慌てて逃げ出した──ところを捕まえた。


「うわああああ!? 地面から手があああああ!?」


 光を放つ無数の手が、地面すれすれからイソギンチャクみたいにごそっと生えた。

 暴れるジーンに絡みつき、あっさりと押さえ込んだ。


「ナンデ!? 手ガナンデ!?」


「……んふ、何を驚く? 我は生命の精霊ぞ。このぐらいの芸当は朝飯前よ」


「そりゃ驚くよ! 現在進行形で心臓バクバクだよ! うああああああっ!? にょろにょろ動いてて気持ち悪いぃぃぃいっ!」


「……我の手が気持ち悪いと?」


「わあああああっ!? ウソウソ! ウソです! お願いだから足を掴んで空中に持ち上げるのやめて! なんか地面が頭の下にあるから! 落ちたらけっこう痛そうな高さがあるから!」


「……では聞こうか。我の手は?」


「綺麗です! すべすべなめらか気持ちわ……いいです!」


「……まだ教育が足りんようだな」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! もっと高度を上げるのをやめてください! お願い許してええええええ!」


 アデルが解放すると、ジーンは自分を抱きしめ「うう……こんなところまで来て……っ」と、ぞっとしたような声を漏らした。


「そこまで怯えるほどのものでもなかろう。多少熱は入っているにしても」


 アデルは首を傾げた。 


「多少!? あれが多少!?」


 ジーンは涙目でくってかかってきた。


「出来ないものを出来ないって言ったら張り倒されて、痛くて泣いてたら蹴り飛ばされて! それが普通!?」


「生きるための努力としては、驚くほどのものでもあるまい」


「それって『嫁』として生きるための努力だろ!? 言ってるじゃないか! ボクは最初から『嫁』なんかになるつもりないんだって……!」


「──どうでもよい」


 アデルはせせら笑った。


「『嫁』になるかならぬか、今はそんなものどうでもよい。ただの事実として、ぬしが弱いのはぬしのせいだ。考えるべきは強くなるために何が出来るかであって、昔の恨みを母御あれにぶつけることではない。ましてや逃げ出すなどもっての他だ」


「う……ぐ……っ?」


 ジーンは言葉に詰まった。


 ジーンがもっと熱心にソニアの教えを受けていれば、少なくとも今よりは強かったはずだし、タスクにかける迷惑も小さかったはずだ。


「後悔は先に立たぬ。だがやり様によっては払拭することも出来よう。そのための壁はこうしてここに用意した。さあどうする? 今のぬし(・ ・ ・ ・)はどうしたい?」


「く……っ」


 ジーンは痛みの記憶に耐えるような顔をしている。

 足を震わせ、拳を震わせている。

 顔面は蒼白だ。

 

「……」


 アデルはただ黙ってジーンを見ていた。

 その決断を待っていた。


 何かとだだをこね、ぐずる子供。

 すぐに諦め、逃げ出す子供。


 見るたびやきもきした。

 老婆心をかき立てられた。

 変わって欲しいと思っていた。

 ずっと昔から。 


「ああもう……わかったよっ!」


 ジーンは大きく叫んだ。


「乗り越えてやるよ! それで強くなれるなら、やってやるよ!」


 音の出るほど拳を強く握った。


「そうさ、決めたんだ! ボクはもう逃げないって!」


 まっすぐにアデルを見た。


「だからアデル! 教えてよ! ボクに! ママのやり方で!」


 双眸に、強い光が宿っていた。


「……っ」


 一瞬だけ、アデルは唇を震わせた。


「小僧には感謝せねばならぬな……」


 聞かれぬよう、小さくつぶやいた。


「『──ジーン(・ ・ ・)』」


 ソニアそっくりの口調で、アデルは告げた。


「『あんたの問題の根底はな、その惰弱さだ。持って生まれた身体能力でも、頭脳才能でもない。ただ心の弱さと甘えだ』」


「ううううっ!? そっくりすぎて怖い!? っていうかなんでこのタイミングで!?」


 ジーンはわずかに怯んだ。


「……んふ。ちとからかってみたくなったのだ。ぬしがあまりに緊張しておるようだからの」


 アデルはコロコロと笑った。


「のう、ぬしよ。ひとつだけいいことを教えてやろう。今の台詞の後にな、あれはこう続けたのだ。ぬしには聞こえぬ声でな、『そこさえ克服出来ればひょっとしたら、あたいの足元ぐらいには近寄れるようになるかもな』と」


「ボクが……ママの……?」


「意味は自分で考えよ」


 きょとんとするジーンに向けて、アデルはひらひらと手を振った。

 

 ジーン、ソニア、祖母に曾祖母と、アデルはソーンクロフト一族の女性に連綿と受け継がれてきた守護精霊だ。

 血脈と共にあらゆる事件や出来事に遭遇してきた。


 だからジーンの知らないソニアを知っている。

 なぜソニアが苛烈に振る舞わねばならないのかも。

 いつかそのことにジーンが気づいてくれるのを願いながら──


「……んふ」


 アデルはわずかに、照れて笑った。


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