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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第1章:俺とジーンと目覚めの儀式!!」

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Interlude:Someone's past.

 ~~~ショコラ~~~




 当時、私は中学生だった。

 士族の長の娘として恥ずかしくない学歴をとの親の判断から、ケルンピア首都星の歴史ある女学校の寄宿舎に入れられた。


 素朴な田舎と比べ、背の高い建物ばかりのケルンピアの街は、冷たく無機質に見えた。

 見上げた空はどこもいびつな矩形くけいに切り取られ、息が詰まるような気持ちになった。


 天気の悪さも災いした。

 ケルンピアは年間通して晴れの日が少なく、いつも曇天か、あるいは雨が降っている。

 鷲頭人グリファの羽根は、湿気が多いとじめじめ重くなるのだ。

 構造上、羽根の下に隠れている耳の聞こえも悪くなり、それが余計に気持ちを萎えさせた。

 



 学校には様々な決まり事があった。

 大きな声を出してはいけない。

 常に淑女らしく振る舞い、服装や生活の乱れなんてもってのほか。


 寄宿舎は輪をかけて厳しかった。

 下校時はどこにも寄らずにまっすぐ戻らねばならず、私的な外出は、厳しい審査の上で半年に一度だけ。

 テレビもラジオも禁止。本だって、漫画本なんて考えられない。 

 電話も親元以外へはダメ。田舎の友達に連絡することすら出来ず、私はまさしく籠に入れられた鳥のような気分になった。


 そんな中、唯一の息抜きと言えるのが、月に二度ある奉仕活動の日だった。

 街の孤児院の子供たちにお菓子を作ってあげたり、歌や踊りを見せてあげたりして一日過ごす。

 その時だけは、先生たちの監視の目がわずかに緩んだ。


 私たちはグループを組み、変わりばんこに抜け出した。

 あるグループが街へ行っている間は他のグループが先生たちの注意を引きつける、といった具合にだ。


 そのたび、私たちは大いに刺激を受けた。

 自由都市ケルンピアの本質を、幼い目にまざまざと焼き付けた。

 

 ある日のことだった。

 グループで街を散策してる時に、私はその人に出会った。

 小さな食堂の片隅に座っていた同種族の男性。

 足にギプスをつけていた。



 

「……それが旦那さん?」


 妙子さんの質問に、私はこくりとうなずいた。


「最初はただ、『ああ、同じ種族の人だなー』って思ったんです。私たちは少数民族なので、首都星でもなかなか同種族の人はいなかったので」 


「お互い懐かしかったから、すぐに打ち解けたって感じ?」


 私は首を横に振った。


「最初は全然。声をかけても無視。ずっと、死んだような目でテーブルを見てました」


 一緒に星間交易商スタートレーダーをしていた仲間を海賊の襲撃で失って間もない頃で、だから彼は、人生のどん底にいた。 


「私なんか眼中にないんですよ。ずっとテーブルばかり見て、ぶつぶつつぶやいてて……」


「なにをつぶやいてたの?」


「……自責の念」

 私はぽつりとつぶやいた。


 自分がいればあんな危険な航路は使わなかった。

 自分がいれば船はもっと万全な状態だった。

 自分がいれば自分がいれば……。

 

「テーブルの中にお仲間さんが入ってるみたいに、彼はずっとテーブルばかり見てました。だけどそれじゃダメだと思って……」


 私は彼の手を引いた。

 ぐいと引っ張り、店の外に連れ出した。

 肉親以外の男性とそうして触れ合うことは初めてだったけど、不思議と照れはなかった。

 使命感みたいなものに衝き動かされていた。


「彼は驚いた顔をして、初めて私の顔を見ました。初めて見てくれました」


 今だ、と思い、私は彼を連れ回した。

 ニコニコ笑って語り掛けながら、街の中を散策した。

 露店を冷やかし、雑貨屋や衣料品店を見て回り、オープンエアーのお店でお茶をして……。


「人生って楽しい。人生は素晴らしい。そんなことをうざったくなるぐらい話かけてました。自分自身に言い聞かせるみたいに。寄宿舎に閉じ込められたみたいに感じてた自分の人生も、いつかはきっと楽しく素晴らしいものになるんだって信じて」


「……ちゃんと奉仕活動の時間内に戻れた?」


「全然」

 肩を竦めておどけると、妙子さんは目を細めて笑ってくれた。


「彼とのことはバレなかったけど、まあ大目玉ですよ。勝手に抜け出して街を散策してた不良娘めって。3時間にわたるお説教、反省文20枚。外出禁止、両親への連絡禁止。奉仕活動への参加不許可……」


「……旦那さんとはその後は?」


 私は首を横に振った。

 

「卒業するまで一度も」


「ありゃまあ……」


「でもですね。彼、卒業式を見にきてくれたんです。女学校の制服着た鷲頭人の女の子なんて他にいないし、すぐに身元はわかったみたいで。探してくれてたんですって」


 女学校の卒業式は、一般の方が学内に──校庭だけだけど──立ち入れる唯一の日だ。

  

「彼、警察官の制服着てました。『宮仕えだけど、オレ、やり直すことにしたわ。てめえのおかげみてえなところもあるからよ、一応』って。あの口調で、ぶっきらぼうに」


「ふぅん……」


「その照れるしぐさがですね、もう可愛いんですよっ。そっぽなんか向いちゃってね。その瞬間ね、私はもうもうもうっ、胸にキューンってきちゃってっ」


「あらあら……」


「ずっとこの人と一緒にいようって決めました。結婚までは考えてなかったんですけど、とにかくこの人には私がいなきゃダメだからって。一生面倒見てあげようって」


「ほうー……」


「だから私、今はとても幸せです。彼がいて、私がいて、ふたりで家族で……ってあれ? 私、何言ってるんだろ?」


「途中から明らかにテンション変わってたね……」

 妙子さんは大儀そうに肩を揉んでいる。

「いやー……不意打ちでノロケ聞かされんのきついっすわー」


「あれ? ちょ、ごめんなさいっ?」

 私は慌てて謝った。

「違うんですっ。ただ妙子さんに元気になって欲しくてっ。男の人なんて、なんやかやで無事にしてるもんだよって言いたくてっ。共感覚とかなくてもってっ」


「はいはいはーい。言い訳乙ー」


 妙子さんはひらひらと、どうでもよさげに手を振った。


「ちょっとおー! 妙子さあーん!?」


 私は妙子さんの肩を涙目で掴んだ。

 シャワーを浴び終えた御子神さんやキーラさんがなんだなんだと覗きに来た。

 シロさんを捕まえたセリさんも、不思議そうな顔をして様子を見に来た。

 私はさらに恥ずかしくなって、大いに騒いだ。

 寄宿舎では考えられないような大声で。


 そんな風にして待っていた。

 彼らが帰って来るのを。

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