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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第1章:俺とジーンと目覚めの儀式!!」

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「不治の病!?」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~




「『凝集赤光アグロガンマ!』」


 ジュザッ。 


 俺の両目の先から、超高温の赤光しゃっこうが放たれた。

 高出力のレーザー光線を思わせる光が地面を薙いだ。

 群れ成すオウカンサソリを斜めに払い、焼き尽くし、土砂を巻き上げながら吹き飛ばした。

 地面が三日月状に抉れ、白煙と土煙が舞った。


「……」


 半数は駆除しただろうか。

 残り半数は、火を避けようと慌てて遠ざかっていく。


「でき……た……?」


 肉や草が焼け焦げたような臭いの中、俺はその場に立ち尽くした。

 呆然と、我と我が身を見下ろした。


「マジかよ……?」


 自分のやったことなのに、なかなか信じられなかった。

 だが事実としてそれは起こった。

 俺は生身で魔法を唱えた。

 シロと合一化した時の比ではないが、俺の唱えた魔法がオウカンサソリのことごとくを薙ぎ払い、吹き飛ばし、焼き尽くした。


「俺が……魔法を……?」


 感動で声が震えた。

 

 多元世界を股にかける冒険者になりたいと思っていた。

 誰もが憧れるヒーローになりたいと思っていた。

 魔法が使えるのは、その条件のひとつだった。

 普通の人間には出来ないこと、常識という枠組みを超えた力の行使。

 それはまさしくヒーローの証明であるからだ。

 



(……察しはするがな。ぬしよ、浸ってる場合か?)


 さとすようなアデルの声で、はっと我に返った。

 

「──そうだ、ジーン……! ジーンは!?」


「タスク……いま……?」

 木の枝先にしがみついたままのジーンがこちらを見ていた。

「いまのって……エーテルなの? なんかすごいことになってたけど……」


 その周りにはもうオウカンサソリの姿はない。

 彼女の命の危機は去ったのだ。


「へへ……見てたか? 俺、目からビームが出せるようになっちまったよ」


「うん……うんっ。やったねっ」


 泣き笑いめいた顔のジーン──


 めりめりめりめりっ。

 木の枝の根本から、いやーな音がした。


「わ……わっ!? わああああっ!?」

「うおっ……危ねっ!?」


 悲鳴を上げて落っこちたジーンを、手を広げて受け止めた。


 ちょうどお姫様抱っこのような格好になった。

 至近距離で見つめ合った。 


「よう、お帰りジーン」

「う、うん。ただいま、タス……ク──!?」


 ジーンの顔が、火でもつけたように真っ赤になった。


「あ、あああああっ……あのっ、あのねっ? タスクにちょっと質問があるんだけど……」

「おう、なんだよ?」

「さっきの話さ………………聞こえてた? っていうのはさ、あの時けっこう大変な状況だったじゃない? 万が一、億が一にもタスクに聞こえてない可能性もあるかと思ったんだけど……。んでさ、もし仮に聞こえていたとしてもさ、あれはああいう状況だから出た言葉であって、正直ちょっと盛り過ぎた部分もあってさ。全部が全部本当のことではなくって……だからあまり真に受けられると……その……困るというか……」


 ジーンはちろりと上目遣いで俺を見た。


 ……ははーん、そういうことね。

 こいつ、ビビリやがったな?

 命がけの告白の重みに、いまさら耐えられなくなったんだな?

 だからいっそなかったことにしようと、なるほどなるほど……。


「はっ……」


 心底から笑いがこみ上げた。

 バカめ、苛烈な責めで知られたこの俺が、貴様のようなチキン野郎を見逃してやるもんかよ。 


「なあジーン」


 まっすぐにジーンの顔をのぞき込んだ。


「な、なに? タスク」 


 ジーンは俺の気配に怯えたように、びくっと肩を震わせた。

 

「実は俺も気になってたんだよ。たしかにあんな状況だったからさ、俺のほうも色々といっぱいいっぱいで混乱しててさ。正直、聞き間違えとかあるかもしれんし……」


「うん、うん、そうだよね?」

 ぱっと、ジーンの顔が明るくなった。

「しょうがないよ、しょうがない。混乱するもんね? したもんね? 聞き間違えだって普通にあると思う。だからここはさ、ふたりとも、あの時のことは綺麗に忘れて二度と思い出さないようにしてさ──」


「だから俺の聞いたことが合ってるかどうか、間違ってないか、聞いてもら(・ ・ ・ ・ ・)っていいか( ・ ・ ・ ・ ・)?」


「………………うん?」


 ジーンの笑顔が硬直した。

 俺は思い切り息を吸い込んだ。


 そして──あの時のジーンの告白を、大声で繰り返した。


「『タスクうううう! ごめんね!? ボク、黙ってたことがあるんだ!』」


「突然なにを……あ──?」


「『説明してなかったけど、あれは家族の儀式なんだ! 本当の家族になるための儀式なんだ! 男女が婚姻する時の儀式でもあって……つまり……ボクらはもう夫婦の関係になってるってことで……!』」


「うわあああああー!?」


 遅れて気づいたジーンは、頭を抱えて叫び声を上げた。


「『最初に説明しろよって思うだろ!? ボクもそう思う! 騙し討ちみたいにしてごめんね!? 説明して拒否されたら嫌だから黙ってたんだ! ボクは……ボクは……!』」


「やめて! やめて! やめて! よくないよ! そういうのよくないよ! 小学校の頃クラスの女の子がラブレターをみんなの前で読みあげられて泣いてたことがあったけど、その時くらいの衝撃だよ!」


 ジーンは半泣きになって俺に掴みかかってきたが……。


「『ボクはキミが好きなんだ!』」


「いやああああああああー!?」

 

 太陽を浴びた吸血鬼みたいに、全力で身悶えた。


「『キミが好きなんだ! 出会ってばかりでなんだって言うかもしれないよ!? おまえ頭がおかしいんじゃないのかって思うかもしれないよ!? だけどホントなんだ! 芯からまっすぐなボクの気持ちなんだ! この前キミが他の女の子たちの話をしてる時に気がついたんだ! ボクはそのコたちに負けたくない! キミをそのコたちのとこにやりたくない! 出来ればケルンピアへも戻らず、キミとずっと旅していたい! でもそれは無理だから……だったらこの旅の途中でキミをボクのものにしてしまおうって思って……!』」


「もうやめてよ! わざわざ繰り返さなくてもいいよ! もうわかったから! タスクが全部聞いてたのはわかったから! そうだよ! そう言ったよ! ボクはキミが好きだって! だってあれが最後だと思ったから! もう会えないと思ったから! だったら後悔しないようにって! だけどもう……だから……!」


「──嬉しかったよ」


「え……?」


 俺の言葉に、ジーンの動きがぴたりと止まった。

 目の端に、涙がちょっと浮いていた。


「聞かせてくれて嬉しかったよ。俺のことを思っててくれて嬉しかったよ。だからなかったことにしようとすんなよ」


「うん……うん、ごめん……なさい」


 ジーンは謝り、きゅっと唇を噛んだ。

 しゅんとしながら、俺の言葉を待った。


「その上で答えを返すぞ? 俺もおまえが好きだ」


「──!?」

 

 ジーンは「びくくぅっ」と肩を震わせ、目を丸くした。


「男の子みたいに短い金髪も、まだまだ発展途上な胸も尻も、どうかしてんじゃねえのかってぐらい向こう見ずな性格も、全部好きだ」


「ありが……ありが……あれ、全然褒められてない?」


 ジーンは小首を傾げた。


「いいところも悪いところも全部ひっくるめて全部好きだってこと。それじゃダメか?」


「あ……う……っ?」

 ジーンは「ぷしゅうううっ」と全身から湯気を上げた。

「ありがとう……すごく……嬉しい……っ」

 消え入りそうな声でつぶやいた。


「だけどひとつ問題があってさ」


「……問題?」

 

「うちにはたくさん嫁がいるわけよ。俺を愛してくれるコがたくさんいて、俺はそいつらを絶対に手放す気はないわけよ」


「う、うん……そうだね……そうだよね……」

 ジーンは「むむうっ」と唸った。

「テレビでやってたもん。最低最悪の女たらしだって」

 じろりと俺をにらんだ。

「……で、どうするの? ボクとのこと」

 

「初めに言っとく。最終的に誰かひとりを選ぶってことはない。最終的に誰も選ばないってこともない。俺は全員を選ぶ。全員を幸せにする」


 ジーンは一瞬、ぽかーんとした顔になった。


「……無茶苦茶なこと言ってる自覚はある?」

 疑念と呆れを言葉にこめて聞いてきた。

「体も心もひとつしかないのに、全員を均等に愛せるつもり?」


 その疑問は当然だ。

 法的にも倫理的にも物理的にも、俺の思想は破綻してる。


「愛するさ」


 あっさりとした俺の答えに、ジーンは小さくかぶりを振った。


「……病気だね」


 ため息をつきながら、そう評した。


 ……そうだな、これは俺の病気だ。

 

 女の子ひとりひとりにきちんと向き合い、絶対に適当には扱わない。 

 愛しちまったら愛し抜く。

 それが正しいと思っちまう心の病だ。

 

「でもさ……」

 ジーンはそっと、観念したように目を閉じた。

「治せない病気じゃないかもしれないもんね」

 微かに口元を緩めた。


「ん? それってどういう……」


 ジーンは戸惑う俺の首に手をかけ、顔を近づけた。

 燃えるように熱い唇が、頬に触れた。

 ぎゅっと押し付けるように触れて、離れた。

 離れ際に、熱っぽく囁いた。


「いつかボクだけしか見れないようにしてあげる、そういう意味さ……」



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