「ガールズ・アタック!!」
~~~御子神蛍~~~
宇宙港の争乱に気付いた私はキーラたちと一時停戦し、バギーに分乗して夜の道を走った。
到着してみると、ゲート付近の戦闘は亡霊部隊とやらが圧倒的優勢だった。
ガード側はすでに拠点であるガードタワーを失い、大破した装甲車の陰に数名がいて、細々と反撃を続けているだけだった。
だが私たちが加わることで、戦況は一変した。
まず挟撃であることが大きかった。
2勢力からの攻撃を腹背に受けた亡霊部隊は、明らかに浮き足立った。
次に射撃の正確性だ。
亡霊部隊のガトリングガンのような光線銃に対してピストルタイプのものしか持っていないキーラたちだったが、それぞれの狙いが驚くほどに正確で、一射するたびに相手の体のどこかが傷ついた。
慌てて装甲車を盾に守りを固め、ガードタワーとの連携を模索した亡霊部隊だったが、そこに登場したのが私だ。
私の扱う「神太刀」は射程こそ短いものの、任意の場所に炸裂させることが出来る。
装甲車の陰にいる連中を背後から叩いたり、装甲車の中にいる連中に直接叩きこんだりと、すさまじい柔軟性を発揮した。
「アンタのそれずるいねえ……」
算を乱して逃げ惑う連中をひとりずつ仕留めながら、キーラは呆れたように評した。
「壁越しに当てるとか、悪魔みたいな能力じゃないか」
「先祖伝来の奥義だからな」
ふふんと得意になる私だ。
「先祖伝来か……」
キーラはわずかに考えこむようなそぶりをした。
「アンタの世界には、アンタみたいなエーテル使いがいっぱいいるのかい?」
「多数派ではないな。私たちの世界は何せエーテルの薄い世界だったから」
ケルンピアに来てまず驚いたのは、そのエーテルの濃さだった。
地球にはわずかにしか存在していないエーテルが、こちらでは大気中に満ち満ちている。
エーテルというのはある種の生体エネルギーだ。武術でいうところの気に似ている。
体内に取り入れコントロールすることで、生命体としての真価を発揮出来るようになる。濃度が高ければ高いほど効果も上がる。
地球からケルンピアへの移動が、スポーツ選手の高度順応のような効果をもたらした。
エーテルのノリがいつもより良く、呼応して技のキレも増した。
試しにバトルスコアを計測してみたら、なんと200から1200まで上昇していた。
数字を鵜呑みにしているわけではないが、6倍というのは驚きだ。
ちなみに旦那様を測ったら、100から300に上がっただけだった。
もちろん数字を鵜呑みにしているわけではないがな?
ないのだぞ?
「ふうん……ま、こんな化け物だらけじゃたまったもんじゃないしな……」
ぶつぶつとよくわからぬことをつぶやくキーラ。
「御子神」
小山が後ろから声をかけてきた。
「とりあえずあそこ、落としてくんない?」
指差したのはガードタワーだった。
キーラたちの一斉射の直後、私は鳴神による高速移動でガードタワーの扉をぶち破るようにして突っ込んだ。
中には4名の亡霊部隊がいたが、皆私の出現に驚き戸惑い、まともに反抗も出来なかった。
遅れて入ってきた小山は倒れ伏した兵士たちの上を跨ぎ跨ぎ、メインコンソールに歩み寄った。
管制塔であるモデストタワーに情報を送る傍ら、何をするかと思ったら外部モニターをズームにした。
「これは……旦那様か?」
「うん、遠くでごちゃごちゃやってんのが見えたからな」
小山は食い入るようにモニターを見ている。
私たちが見守る中、旦那様は見事な手並みで亡霊部隊をかき乱し、一本のハンドグレネードでとどめを刺した。
「お見事、さすがは旦那様だ」
「ま、これぐらいはやるだろうよ」
言葉とは裏腹、小山は安心したように胸を撫で下ろした。
相変わらず心配性なやつだ。
旦那様がこの程度の奴らに負けるわけがなかろうに。
「へえ~、こいつがアンタらの旦那?」
キーラが興味津々といった風にのぞきこんでくる。
「なんだよ、よく見りゃただのガキじゃないか」
キーラは露骨にがっかりした表情になった。
「ジーンがご執心なんて珍しいと思ったら、なんてこたない、ガキとガキが遊んでるだけなんだ」
「貴様……それ以上旦那様を愚弄すると……」
「……待て、御子神」
キーラに竹刀を向けかけた私を、小山が制した。
「今、誰って言った? ジーン? 女か?」
「なんだよ、知らなかったのかい? そうだよ、アタイと同い年の女で……」
「──ご執心って?」
「そりゃあだって、ここ最近ずっと泊まりこんでるからさ。アタイはてっきり、あいつが悪い男に騙されてるもんだとばかり思ってて、今日は天誅を加えてやろうと思って来たんだけど……」
「──泊まり? どこに?」
「アンタらの船に決まってるじゃないか」
………………ほう。
「御子神」「小山」
私たちは互いにうなずき合った。




