「亡霊部隊襲来!!」
~~~大佐~~~
深夜、シンと静まり返った宇宙港への道路を、3台の車両が走っている。
一見するとマイクロバスのように見えるが、それにしては重心が低く車重も重い。外装は堅牢で、窓ガラスはほとんどない。タイヤも分厚い装甲板で守られていて、まるで軍事利用を想定して設計された装甲車のように見えた。
いや事実その通りで、3台はマイクロバスを偽装した装甲車だった。
中には全部で61名の兵士たちが満載されている。
各車20名、先頭の車両だけは指揮官含めた21名。
「……諸君、心せよ」
指揮官の声が、スピーカーを通して3台の車両に共有される。
その声は低く静かで、ある種のカリスマ性を帯び、聞く者の胸を打つ。
彼は軍属だった当時の役職から、『大佐』と呼ばれている。
「此度の標的は強大なり。ただ一隻にてこの世の平穏を打ち砕くものなり」
長椅子に腰を降ろした完全武装の兵士たちは、咳ひとつ上げず、指揮官の演説に聴き入っている。
「次元の壁を破壊するということは、すなわちこの世のどこにでも軍隊を送れるということだ。この世のすべてが戦場になるということだ。諸君らの故郷が軍靴で踏みにじられるということだ」
全員、砂色を基調としたマルチカムの迷彩パターンの軍服に身を包んでいる。
皺ひとつ汚れひとつ、そこには見られない。
「諸君は覚えているか? パリューカ星系の戦い、シンガトリン殲滅戦。圧制者の暴挙のもとに、数多くの無辜の民の命が奪われたことを」
海賊討伐で名を馳せた、辺境軍の精鋭部隊。
彼らは死んだはずだった。
二重惑星サンゼリオンで、海賊と通じた味方の将軍の罠に落ち、全滅したはずだった。
だが生きていた。
重囲を食い破り帰還し、将軍への復讐を遂げた。
ダークサイドに堕ちた彼らは、すべての指揮系統から逸脱した化け物となった。
彼らはこう呼ばれている。すべての権威権力に抗う『亡霊部隊』と。
「権力者は悪である。暗愚な豚である。美食に肥え太ることしか考えぬ。民から搾取することしか考えぬ。豚に武器を持たせるを是とする者はいるだろうか? 私を撃つ銃を差し上げますという者はいるだろうか? 答えは否だ」
メインウエポンはSMGタイプの光線銃LOP-357──銃身を6本束ね、連射速度を上げている──と、サブウエポンとしての火薬式のピストル、ハンドグレネード等を所持している。
対戦車ミサイルを携えている者もいる。弾頭に青いマーキングをしてあるものはEMP弾だ。電磁パルスを発生させ、電子機器を無効化する目的がある。
「豚が歯向かって来たらどうするだろうか? 答えはひとつ、殺すのだ。過去幾多の戦場において、等しく我らがそうしてきたように」
大佐の言葉が続く。
スピーカーを見上げる兵士たちの目には、神を崇める信徒のような光がある。
彼らは何も疑わない。自分たちの象徴を信じている。
撃てと言われれば撃つし、死ねと言われれば──再び死ぬ。
「此度も変わらぬ、いつものように我らは来て、いつものように勝利する。傾聴せよ──」
ごくりと、誰かが息を呑んだ。
ある者は目を瞑り、ある者は胸に手を当てた。
「この理想は善である。胸に燃えるは正義である。双眸は平和を見つめる。たとえ我が手我が身が血に汚れようとも、信念だけは揺るがない。諸君……」
大佐は厳かに告げた。
「今こそ立て、ただちに起きよ。標的はガリオン号。乗組員もろとも、欠片も残さず破砕せよ。豚どもの手に、何一つ渡すな」
割れんばかりの喚声が上がった。
軍靴が地響きのような音をたてた。
タイヤが唸りを上げ、3台の装甲車は全速力で宇宙港のゲートをぶち破った。




