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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第1部第7章:ケルンピアへ!!」

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Interlude:Welcome to My House.

 ~~~古城一郎こじょういちろう~~~




 東北の片田舎、奥羽山脈の内懐に抱かれたその山は、斜面に巨大な鬼が手をついたような跡があることから、手形山と呼ばれていた。

 だが、一連のカラミティ戦乱における日本最大の激戦区となったことにより、以後まったく違う名称で呼ばれることになった。

 手形山クレーター、あるいは単にクレーター。

 

 直径400メートルにも及ぶすり鉢状の大穴は、今や平和な新生日本のシンボルとされていた。

 立派な道路や、クレーターを見下ろすための観光施設まで整備されている。


 かつての戦場を見下ろしながら楽しげに語らい、双眼鏡を覗き込みながら串焼きを頬張る。

 それはなんとも悪趣味で、皮肉な光景だと、古城は思う。 


「まあ、人の生き死にを食いちにしてるオレらのいうこっちゃねえんだが……」


「ちょっと先輩! ぶつぶつ言ってないで、ちょっとは手伝ってくださいよー!」


「うるせえ! てめえの荷物の世話ぐらいてめえでしろ!」


「えぇー、先輩優しくなーい、優しくなーい!」


「2泊3日の取材旅行に、なんでてめえはそんなどでかいスーツケース持って来てんだ! 記者なら記者らしく、軽荷軽装を心掛けろ!」


「女の子には女の子なりの準備があるんですー!」


 ぎゃあぎゃあと騒ぐ奈々を無視すると、古城はさっさと歩きだした。


 奥羽本線の中ほどにある石神いしがみ駅──クレーターの最寄り駅は、いかにも東北の片田舎らしい、ひなびた駅だった。

 小さな駅舎にホームがふたつ。土産物屋が2軒、観光案内所が1軒。食堂が2軒。書店兼雑貨屋が1軒。

 タクシープールにタクシーが2台。

 石神温泉郷の最寄り駅なので、それでも他と比べれば発展しているほうではあるものの、東京生まれ東京育ちの古城には、最果て感がぬぐえない。 


 少ない人口、限られた職種、毎日の通勤通学にさえ多大な時間を割かなければなならない環境。

 寂しいホームにぽつんとたたずむセーラー服姿の奈々を想像したが、失敗した。


「……おまえ、よくこんなところで暮らしてられたな」


「ええぇー!? なんすかもうー! 田舎だと思ってバカにしてー! いいところじゃないっすかー!」


「たまに来るにはいいところ、ではあるけどな」


 地団駄踏んで悔しがる奈々をからかっていると、やがて1台のロールスロイスが目の前に止まった。


「おまえ……うちの者が迎えに来るってこれ……」


「そうっすよ! うちの番頭の田上たがみっす!」


 運転席から降りて来たのは、50がらみの恰幅のいい男性だった。

 黒々とした髪をオールバックにしている。目つき鋭く、頬に刀傷のようなものが走っている。

 旅館の屋号──たかなし──を染め抜いた藍染半纏あいぞめはんてんを着ていなければ、その筋の人にしか見えない。


「おかえりなさいお嬢。……こちらの方が、例の?」


「そうっすよ! 奈々の先輩の古城さんっす!」


 奈々の説明を聞いた田上は古城のほうをちらりと見ると、深々と頭を下げた。


「お初にお目にかかりやす。あっしの名は田上。たかなしの番頭を務めさせていただいておりやす。古城さんとおっしゃるそうですね。遠路はるばるこんな田舎までご足労いただきまして、誠にありがとうごぜえやす」


「あ、いや……」


「お嬢の世話も大変でしょう。まず今日のところは、ゆっくり汗を流していただいて。てえしたもんじゃございやせんが、地元の酒肴も用意させておりやすんで、呑んで食って、日ごろの憂さを晴らしておくんなせえ」


「あ、はい。よろしくお願いします……」 

 

 仁義をきるような田上の挨拶に鼻白んでいる間に、奈々はさっさと後部座席に乗り込んでいた。

 自分のスーツケースは路上に放置したまま。

 あとは全部田上がやるということなのだろう。ナチュラルな労使関係が成立している。


「お嬢だお嬢だとは思ってたけど、こいつほんとにお嬢だったんだなあ……」


 複雑な感慨に浸っている古城の耳元に、田上が口を寄せた。


「……おいてめえ」

「ひぇっ?」


 さきほどまでのへりくだった態度とは180度異なるドスの利いた口調に、古城は思わず背筋を震わせた。


「古城とかいったな。お嬢のお気に入りだからって調子に乗るんじゃねえぞ?」


「や、オレは別に……」


「……調子に乗るんじゃねえぞ?」


「あ、はい」




「先輩いま、田上となに話してたんすか?」

 

 やつれた表情で車に乗り込んだ古城に体をくっ付けるようにして、隣の席の奈々が声をかけてきた。


「なんでもないですお嬢」


「なんで敬語なんすか!? いったいなにを話してたんすか!?」


 がん、と何かに打たれたような表情をする奈々。

 ただの世間話だよと言葉を濁しながら、古城は流れゆく車窓の風景を眺めた。




 戦国時代よりも昔から使われていた湯治場だったという「たかなし」は、立派な温泉旅館だった。

 歴史を感じさせる構え、造り。

 従業員のしぐさや格好にいたるまで、しっとりと落ち着いたものだった。


 年増の仲居さんに部屋へ案内される道すがら、古城は奈々に聞いた。


「なあ奈々……ここの人たちって、みんな武道でもやってんのか?」


「えぇー? なんでっすかー?」


「や、だってさ。さっきの田上さんもそうだけど……従業員の人たち全員、変な迫力があるというか……」


 仲居さんですら、まったく隙が無い。

 後ろから襲いかかっても即座に投げ飛ばされそうな雰囲気がある。


「えぇー? そんなことないと思うっすけどねー?」


「建物自体も変に堅牢でさ、深い掘割に石垣に高い塀に……見方によってはなんというか、豪族の屋敷みたいな……。防衛機構が整ってるみたいな……」


「うちは昔からこの辺一帯を取り仕切る豪族でしたからね。そういう名残りがあるんすかね?」


「なるほど……」


 奈々はいまいちぴんと来ないという表情だが、古城はその一言で納得いった。

 小鳥遊家といえばいまや世界に名だたる一大コンツェルンだが、元は東北の田舎豪族だった。

 敵対勢力としのぎを削りながら生き延びて来た古い家系には、そういった名残りがあるところが多い。  

 襲撃を警戒しての防衛機構、伝統しての武道の習熟。

 奈々がそれらを知らないのは……まあ奈々だからだろう。


「のちほど女将が挨拶に伺いますので、それまでどうぞ、ごゆるりと」


 ふたりを案内すると、年増の仲居は微妙な笑みを残して立ち去った。


「おおー、けっこう広い部屋だなー」


 通されたのは20畳ほどの和室だった。

 庭園に面したデッキテラスがあり、ヒノキ製の露天風呂がついている。


「この大きさをひとりで使うとは贅沢な話だなあ」


 しみじみつぶやいていると、奈々がきょとんとした表情で古城を見た。


「ひとり?」


「ん?」


「奈々もここ使うっすよ?」


「ん? ……え? おまえとふたりで……ひとつの部屋で……?」


 色々とあらぬ想像をしてしまった古城は、思わずごくりと唾を呑みこんだ。

 

「いや、それは色々まずいだろ……」


 倫理的な問題を指摘しようとした古城の耳に、部屋の戸が開く音が飛び込んできた。


「あらお帰りなさい、奈々ちゃん! まーまーまー! こちらが未来のお婿さんの古城さん? まーまーまーまー! 苦味走ったいーい男じゃないのー!」


 えらくハイテンションの女将が、古城を見るなり歓声を上げた……。


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