表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第6部第3章:SweetRefrain」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

441/465

「多重攻撃!!」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~




「っしゃあああ! 次はあんたの番だぜ!? 風!」


 大蜘蛛の右後方、最も後ろの足に外掛けを掛けて崩したところで、ちょうど逆側にいるフウに声をかけた。


「……小僧、我を誰だと心得る」


 言われるまでもないとばかりに吐き捨てると、風は走り出した。

 体操選手のような動きで二転、三転と倒立前方回転を繰り返した。

 そして天高く跳躍。

 くるくると回転すると、そのまま大地を揺るがすような勢いで着地した。

 着地したのは大蜘蛛の左後方、最も後ろの足の裏側、人間で言うなら膝の裏。


「──噴!!」


 気合い一声。

 足の裏から発した閃光のようなエーテル光が渦巻のように旋回しつつ、股関節を通して丹田へ、丹田を経由して胸へ、肩へ、肘を通過し、即座に拳へと到達した。

 心技体の合一した、無駄の無い直突き。

 インパクトの瞬間に最大量のエーテルを集約させた完璧な一撃が、ドンと凄まじい轟音を立てつつ大蜘蛛の膝裏を直撃した。

 50メートル超の巨体を、ぐらり大きくかしがせた。


 ──ギャアアアアアッ!?


 左右の足をほぼ同時に崩された大蜘蛛は、腹ばいになるような形でその場に伏した。

 機動総覧武会マグナロック会場の地面に伏した──隙が、出来た。


「今だ! ジーン! 龍花ロンファ!」

「放て! 娘ども!」


 俺と風の発声は同時。

 遠く離れた位置にいるジーンと龍花に、時の到来を告げた。








 ~~~ジーン・ソーンクロフト~~~



 

「へっへー、言われるまでもないってねー!」

 

 王虎ワンフーに肩車をされた格好で、ジーンはニヤリと笑った。

 笑いながら、精霊銃エレメンタル・ガンプをスチャリ構えた。


土台役(・ ・ ・)は任せろ! ジーン殿!」


 叫びながら、王虎は腰を落とした、

 デカい両足の外装がガチャリと外れ、中から支持脚アウトリガーが飛び出し、深く地面に突き刺さった。 


「おっけー! 頼りにしてるよ!」


 ジーンは深く息を吸い込むと、呪文の詠唱に入った。


「『リ・リ・ヴァルビュート・アライラム! 我、汝と共に在り! 古き嵐の精霊(タイクーン)よ! 汝の牙は我の牙なり! 汝の爪は我の爪なり!』」 


 精晶石の奥底に、ポツリと青白い光が灯った。

 それはぐんぐんと輝度を増し、やがて恒星のような閃光となった。

 ジーンそして王虎の体そのものを覆い隠すかのように、まばゆく光った。


 足元から風が生じた。

 それは徐々に風速を上げ、やがて竜巻のような暴風となった。

 ジーンそして王虎の体を取り巻くように吹きすさんだ。


「『怒りも嘆きも、死ですらも共に分かち合わんことをここに誓う! 聞け、我と一身いっしんなる者よ! 見よ、我と一心いっしんなる者よ! 眼前なるは、我と汝の仇敵なるぞ! 切り裂け! 穿うがて! 復讐の雄叫びを上げろ!』」 


 猛る精霊の偉大な力そのものとなったジーンは、銃口をまっすぐに大蜘蛛に向けた。


「さあ、思い知らせてやろうじゃないか古き嵐の精霊(タイクーン)! 相手は人と機械人マシネンの敵! 命を塵とすら思わない巨悪なんて、キミの最も嫌いとするタイプだろ!?」


 ジャンゴ以来の相棒を鼓舞すると、カチリ引き金を引いた。


 



 

 

 ~~~龍花ロンファ~~~




「ううううう~……」


 龍花は観客席の椅子の背もたれに隠れるようにしていた。

 逃げ遅れた観客の悲鳴と苦痛の呻き、怒号が飛び交う中、身を震わせていた。


「ううううう~……」


 自分が何をしなければいけないかはわかっている。

 風の言う通り、タイミングを合わせて劫砲ごうほうを放つ、ただそれだけ。


 それだけなのだけど、今の彼女にとっては難事業だ。

 怖くて、恐ろしくて、出来ることならこの場にずっと隠れていたかった。

 すべてが終わって、脅威が無くなってからゆっくりと顔を上げたかった。

 出来ればタスクに、優しく手を引いて欲しかった。


 でも、そんなわけにはいかない。

 風の指示はタスクの指示であり、龍花はそれを受け入れた。

 つまりタスクと直接約束を交わしたようなものだ。


 約束を破れば、タスクはきっとがっかりするだろう。

 怒って、手を上げるぐらいのことはするかもしれない。

 あるいは失望して、相手にしてくれなくなるかもしれない。

 もう二度と、あの笑顔を向けてくれなくなるかもしれない。

 もう二度と、あんなに優しい言葉をかけてくれなくなるかもしれない。


 そんなのは嫌だ。

 それだけは、絶対に。 

 

「ううううう~……」


 龍花は背もたれに手をかけると、おそるおそる顔を上げた。

 タスクと風が目まぐるしく動き、飛び回り、大蜘蛛の後ろ足に技を仕掛け──倒した。


「あ……っ」

 

 今だ、と思った。

 これ以上ない絶好機。

 体勢を崩した大蜘蛛は、おそらく劫砲をかわせない。

 どてっ腹に一撃、それは致命的な傷となるはずで……。


 ──今だ! ジーン! 龍花!


 タスクが大声を上げ、こちらを見た。

 自ら光を発するような強い目を、こちらに向けた。

 シロという少女の中から、自分に──


「くっ……うっ……あっ……!」


 その瞬間、龍花の体は自然と動いた。

 それが当然であるとでもいうかのように、シームレスに。


 プラスチック製の椅子をバリンと踏み割ると、両手両足でアスファルトを砕くように掴んだ。

 支持脚のように尻尾を地面につけ、その身を固定した。


「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あー…………っ!!!!」


 恐れを振り切るかのように強く高く叫ぶと、そのまま深く息を吸い込み、火袋へと引き入れた。

 燃素と酸素が混合してガスを生じ、それはぶくり急速に膨らんだ。 


 キュボゥッ。


 空気が一点に収束して破裂するような音と共に、劫砲は放たれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ