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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第1部第6章:世界を流離うネコ!!」

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「その名はコクリコ!!」

 ~~~カヤ・メルヒ~~~




 階段を駆け上がるようにしていった妙子さんを見送ると、わたしは居間を通り抜けて縁側に出た。

 缶ビールを手に、その場に腰を降ろした。

 

 深夜になっていた。

 曇天で、星も月もすっかり隠れていた。

 家の中から漏れる光が、わずかに庭の闇を薄めていた。

 

 ちりちりと、こめかみに微弱な電流のようなものが走った。

 

 ──ルヒ……。

 ──カヤ……メルヒ……。


 若い男性の声が鼓膜を叩く。


「……あら、ご指示ですか?」


 ──我が名は情報……統制……官アリ・ジェンナ。

 ──12諸侯……会議の講評を申し……伝える。


 クロスアリアからの念話だ。

 王族・士族の有力者たちによって構成される12諸侯会議の講評を、専属の情報統制官であるアリ・ジェンナが伝えてきたのだ。


 念話の術の明度は、術者の練度によって違いが生じる。

 言葉の端々にノイズがかっているのは、単純にアリ・ジェンナの術が未熟だからだ。

 最高レベルの術者であるわたしがかければ、それこそ被術者の像まで結ぶことが可能だが、家格と世渡りだけが取り柄の士族のお坊っちゃまでは、まあこんなものだろう。


「拝聴させていただきます」


 わたしは内心せせら笑いながら返事をした。



 曰く。


 ──9……連勝は喜ぶべ……き結果だが、望……外のものではない。

 ──歴代の……クロスアリアの姫……巫女たちの努力の結晶と呼べるものだ。

 ──努々(ゆめゆめ)、己ひと…りの力と慢心することのないよう……に。

 ──さ……らに数多くの試合を重ね、術を磨け。

 ──格下の相手ばか……りではなく、格……上の存在を相手に戦い、もって……クロスアリアの威信と矜持を示すのだ。


 ……要約すると、調子に乗るな、もっと稼いでこいってことね?

 馬車馬のように働いて死ねってことね?

 12諸侯会議に集うジジババたちの姿を思い出して、わたしは心底イライラした。


「誠に汗顔の至りです」


 プルタブを開けると、プシュッと小気味よい音がした。

 

 ──今……何……か音がしましたか?


 アリ・ジェンナが怪訝そうな声を出す。


「そうですか? わたしには何も聞こえませんでしたが……ああ、もしかしたら、こちらの虫の音かもしれませんね。ええ、こっちの虫は複雑な声で鳴くのですよ。プシュッ、カシュッ、トットット……」


 お酌のしぐさ付きで、わたしは適当な返事を返した。


 ──そ、そうか……なるほど。


 アリ・ジェンナは気を取り直すように咳払いした。


 その後も、お小言は続いた。

 ちくちくと、ぐちぐちと、延々と。


 勝ったのに褒めてくれない。

 労を労う言葉すらない。

 そのくせ、負ければ盛大に罵られるのだ。

 すべてが己のせいであるかのように責められるのだ。


 安全なところで指図するだけの連中が……っ。


 死ね。

 今すぐ死ね。

 わたしの目の届かないところで、ゴミ虫のように死ね。



「あ……」


 ぼたぼたと、ビールが膝にこぼれた。


「あららら……。あーあーあ……」


 力が余って、アルミ缶を握り潰してしまった。


「あーあ、もったいない……え? ああいや、こっちのことです。アクシデントがあったので、申し訳ないですけど念話切らせていただきます。いずれにしろ、ご講評は承りました。皆様にはこうお伝えください。女衆頭にょしゅうがしらカヤ・メルヒ。女官の長として、また姫巫女の筆頭目付として、粉骨砕身誠心誠意、力の限りを尽くしますと」





「さて、と……」


 念話を打ち切ると、わたしは庭の暗がりに向けて空き缶を放った。

 それは地面に落ちることなく、空中でピタリと制止した。

 

「──いいかげんに出てきたらどうなんです?」

 

 植え込みの脇の闇に溶け込むように、そいつは潜んでいた。

 ずっと、念話の始まる前から。


「……どこの勢力の者かは知りませんがね。わたしは今、機嫌が悪いんです。誰でもいいから八つ当たりしたい気分なんです。出てくるなら今のうちですよ?」


「……おや、お気づきでしたかにゃ?」

 かえってきたのは年若い少女の声だった。


 ……にゃ?

 

 語尾に疑問を抱いていると、その人物は暗がりからするりと滑り出てきた。


「けっこう上手く隠れたつもりだったんですけどにゃー。さすがはカヤ・メルヒ。慧眼ですにゃ」


 ヒューマノイドタイプの多元世界人。

 身長は160くらい。

 細く引き締まった体を、顔まですっぽりと覆う黒装束に包んでいた。

 声の感じからすると、歳は二十歳を超えてはいまい。

 だが足運びや重心には、並々ならぬ落ち着きがある。

 武術家の気配……といったら近いだろうか。タスクさんや御子神さんに通じるものがある。


「ま、どっちでもいいんですけど……」


 わたしは掌を天にかざした。


「こっちとしては、全力で黒焦げにするだけですから」


 五指の間にバチバチと紫電が弾ける。


「にゃー!? 出てくれば許してやるって言ったのに、騙したのかにゃ!?」


 少女はぱっと後ろへ飛び退いた。

 両手をぶんぶか振って、必死に害意のないことをアピールしている。


「許すなんて言ってないでしょう。いきなり雷に撃たれるか、覚悟を決めてから撃たれるか選ばせてあげただけです」


「さっきからなんで全力でケンカ腰なのにゃ!? もっと平和的にいこうにゃ!」


「だからさっきから言ってるでしょうが! すこぶる機嫌が悪いから! 誰でもいいからひねり潰したい気分なんですって!」


「なんでちょいちょい表現過激にするにゃ! ずるいにゃ! さっきはそこまで言ってなかったにゃ!」


「人様の庭先にそんな格好して潜んでるようなやつに、ずるいなんて言われる筋合いはないんですー!」


「口尖らすんじゃないにゃ! 子供か! ──ああもうわかったにゃ! 今すぐ脱ぐから、それでいいにゃ!?」


 少女は素早く黒装束を脱ぎ捨てた。


「これでいいにゃ!?」


 天パがかったフワフワの短髪、くりくり大きな目。どちらも黄金を丸めたような金色だった。

 赤いフリフリのミニスカートと黒いチューブトップという派手な格好が、赤銅色の肌によく映えている。

 そして最大の特徴──短髪の間から大きな耳が、お尻からぴょこんと尻尾が、それぞれ突き出ている。

 

「これはこれは……」


 素直に驚いた。


「珍しい。ノーマのネコ族じゃないですか……」


 放浪世界ノーマ。

 一カ所に定住せず、全員が巨大な母船に乗って多元世界を渡り歩く、漂泊の世界の名だ。

 総人口が1万人ぐらい。

 主たる人種はネコ族。

 何十年か前に母船がペトラ・ガリンスゥに襲われたという話だったが……。

 

「ゾラン家のコクリコ。今は縁あって、略奪世界ペトラ・ガリンスゥの外務長がいむちょうを務めてるにゃ」


「……ペトラ・ガリンスゥの外務の長ってわけですか」


「そうゆーことにゃ。お偉いさんなのにゃ」

 ふふんと胸を張るコクリコ。


 

 ……そう言えば、思い当たる節がある。


 少し前のこと。

 わたしとタスクさんは、御子神さんのお母さんの家に呼ばれた。 

 トンテンカンテンと家の改修工事の槌音が響く中、ペトラ・ガリンスゥとの因縁を聞かされた。

 娘を嫁にやる約束を反故にし、惣領そうりょうであるハイデンをその場で殺害したこと。

 仇討ちの手が、こちらにも及ぶかもしれないこと。


「なるほどつまりは……」


 バヂバヂバヂバヂッ。


「にゃー!?」


 電撃を浴びせると、コクリコは悲鳴を上げてのたうち回った。


「なんで!? なんでにゃ!? なんでビリビリするにゃ!? 言われたままに服も脱いで、従順そのものだったのに、なんでこんなことするにゃ!?」


「だって、仇討ちにしにきたんですよね? ハイデンさんの」


「違うにゃ! 誤解にゃ! そんなつもり毛頭ないにゃ!」


 電撃を止めると、コクリコは「死ぬかと思ったにゃ……! 死ぬかと思ったにゃ……!」と声を震わせながら自らを抱きしめた。


「……本当に、仇討ちしに来たんじゃないんですか?」


 再確認すると、コクリコはがばりと顔を上げた。


「本当に違うにゃ! 信じてくれにゃ! もうビリビリしないで欲しいにゃ! その指をわきわきさせるしぐさも怖いからやめて欲しいにゃ! トラウマになるにゃ!」


 必死の形相だった。


「ハイデンさんが死んで、ライデンさんが重傷で、一気に力関係が変わったにゃ! ぶっちゃけクーデターが起こったにゃ! みゃーは新しい惣領の部下で! だから仇討ちなんて滅相もないにゃ!」


「……なるほど」


 力がすべて、みたいなお国柄みたいだったし、あるいはそういうこともあるのだろうか。


「や……やっと納得してもらえたようだにゃ……」


 肩を竦めて了解の意を伝えると、コクリコはほうと胸を撫でおろした。


「しかし……さすがはカヤ・メルヒにゃ。残忍にして冷酷。聞きしに勝るとはこのことにゃ」


 ……ほう。


「……そういえばあなたさっき、わたしの名を呼ぶ時、さすがは(・ ・ ・ ・)とか言ってましたけど、それはどういう意味合いのさすが(・ ・ ・)なんです?」


「なんだそんなことかにゃ。簡単にゃ。交渉相手のことだからいろいろ調べたにゃ。クロスアリアの女衆頭カヤ・メルヒ。カムザの村の小作人の娘。文武の才に恵まれ、齢二十歳にして王族士族を除いた文官の頂点に立った生きる伝説。頭もキレるが、もっとヤバいのはその雷法らいほう……。ケルンピアの星穹舞踏会せいきゅうぶとうかいで酔っぱらって絡んできた龍族の武官をドラゴンステーキにした武勇伝は有名ですにゃあ」


 ……ほう。


「他にも色々知ってるにゃ。掃除も片付けも出来ない系女子で、部屋は床が見えない有り様。ちゃんと作れる数少ない料理は目玉焼きだけ、しかもちょいちょい卵の殻が入ってる。極めて酒癖が悪く、ほとんどの居酒屋から出禁をくらっていて、ついたあだ名がカミナリ……」


 バリバリバリバリッ。


「にゃー!? 死ぬ! 死ぬ! 死ぬにゃ! 許してくれにゃ! みゃーが悪かったにゃー!」


 ゴロンゴロンと地面の上をのたうち回るコクリコ。


「調子に乗って悪かったにゃ! すっかりしっかり反省してるにゃ! こんがりじっくり焼ける前に助けてにゃ!」


 ブスブスと何かが焦げる臭いが辺りに立ち込める。


「……それ以上言ったら殺しますよ?」


「もうすぐ死ぬとこにゃ! お願いだから助けてにゃー!?」


「しょうがないですねえ。じゃあ、これからはわたしのことを神様と呼びなさい。もしくはご主人様と」


「どんだけ上から目線なのにゃ!?」


「麗しく美しいカヤ様、でもいいですよ?」


「それ、ちょっとでも譲歩したつもりなのかにゃ!?」


「まあ嫌だというならそれまでの話です。あなたの命もそれまでですが」


「言うにゃ! 言うから許してにゃ! ネコの丸焼きにはなりたくないにゃ!」


「じゃあはいどうぞ。麗しく美しい至高の御方、カヤ様よ?」


「なんか増えてるにゃー!?」




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― 新着の感想 ―
[一言] シロの故郷の偉い奴イキリすぎだなー 勝つためには主人公の協力必須なのにそんな態度だといつか終わるな、、、 あらすじにもある 最後はウルトラハッピーエンドです。 ってのがあるから安心して読め…
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