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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第1部第6章:世界を流離うネコ!!」

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「フラストレーション大爆発!!」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~




 9連勝のお祝いのあと。

 寝ぼけるシロを担いで、寝室に連れてった。


「おーい、シロ。寝床に着いたぞー?」

「ふぁううーい。ううみゅうー」

「ありがとう、おやすみ? オッケーオッケー気にすんな」

「ああういむーん、まんがらん」

「明日の朝食は満漢全席? おまえはどこの王様なんだよ」

「ひんむぬううーん、こりんばらやん」

「姫巫女だって? 高貴なんだって? あいあいそーですねー」

「ううみゅうー」

「あいよ、おやすみ、また明日な」


 シロが幸せそうに寝息をたて始めるのを待って、それから俺は部屋を出た。


 部屋の外には御子神がいた。

 傍らに竹刀を置いて、正座している。


「……ずいぶんと仲がいいのだな」


 ぶすっとした顔で腕組みしている。


「あんな寝言を造作もなく解析して……」


「あれ……御子神、怒ってる?」


「……怒ってない」


「いや怒ってるじゃん。ぷんぷんじゃん」


「怒ってない!」


 スパアンッ!

 凄い勢いで、竹刀が床を打った。


「ひょえー……」


 竹刀の先端が掠めたのか、俺の前髪が数本、宙に舞った。


「そりゃあ、シロと旦那様の仲がいいのはいいことだと思うぞ? シロの場合は事情が事情だし。私も妙子も、協力するにやぶさかではない。だけどな……」


 御子神はわずかに顔を赤らめ、もにょもにょ何事かをつぶやいた。


「……っと……て……くれてもいいじゃないか」


「え? なんて言った?」


「うるさい! にやにやするな! もっと構ってくれてもいいじゃないかと言ったんだ!」


 バシバシバシ!

 続けざまに数発、竹刀が床を打った。

 俺はその分だけ飛び退いた。


「事情はわかっているけれど! だがしかし! 私だって女だぞ!? 未来の嫁なんだぞ!? なのに旦那様はずっとシロのことばかり構ってて! 朝起きてから寝るまでかかりっきりで! すごく! 私は……!」


 バシンッ!

 ひと際強く、竹刀が壁を打った。


 しゃがむようにして躱した俺を、御子神は上から見下ろして──


「………………寂し……かったんだ」


 思わずといった調子でつぶやいて──すぐに耳まで真っ赤にして──バリバリ頭をかきむしった。


「あああああああああ! 違う! 違う! 違う! 今のは無しだ! 忘れろ! こんなか弱い私のことは、記憶から消せ!」


「忘れろったって……」


「忘れられないなら忘れさせてやる!」


「やめろ! 殴って都合のいい記憶だけ飛ぶのは漫画の中だけだ!」


 鬼の形相で竹刀を振りかぶる御子神から、俺は必死に逃げ惑った。


 夜中だってのに家中を追いかけっこして、肩で息をするまで走り回って……やがて、どちらからともなくへたり込んだ。

 

「まったく、ほんと極端なやつだよ、おまえは……」


「……ふん。しかたないだろう。私はこういう女なんだ。選んで受け入れた旦那様が愚かだったということだ」


 御子神はふて腐れたようにそっぽを向いた。


「愚かな選択だとは思ってねえよ」


「いいや愚かだ」


「愚かじゃねえ」


「だって私は……!」


 御子神は、ぎゅっと唇を噛んだ。

 まなざしをキツくした。


「こんなにも無力で……!」


「全然無力じゃねえよ! 今まさに殺されかけた俺が言うんだから間違いねえよ!」


「そういうことじゃない! わかってるくせに! 現状私には、何も出来てないんだぞ!?」


「……」


 ちぇ、誤魔化せないか。

 俺は頭をかいた。


 合一化する際、姫巫女は被術者の気持ちに添うように己の心を制御される(・ ・ ・ ・ ・)

 何かを好きだって気持ちや嫌いだって気持ち。

 そういったパーソナルな感情を、強制的に操作される。

 まるでもとからの自分の考えであったかのように書き換えられる。

 自我の危機が過剰に積み重なると、姫巫女は高熱を発して苦しむ。

 それをクロスアリアではハリョと呼び、御子神の悩みもそこに起因する。


 つい3ヶ月前のことだ。

 シロはハリョの病に倒れた。

 御子神、妙子、俺。

 短期間で複数の人間と合一化したせいだった。


 以来、シロも含めた彼女ら3人の中には、少女協定とでもいうべき暗黙の了解が出来た。

 意識的に仲良くなるように努めること。

 風呂も食事もお出かけも、寝る時だって一緒に寝ること。

 姉妹みたいになれるまで、三者合一はお預け。戦いはシロと俺とに任せる。


「シロとの仲は前よりずっとよくなってる! だけど遅々としすぎてる! 小山こやまは頭がいいから、他に出来ることがあるけれど……! だけど私には……戦う以外に何もないから! ずっとこうして、ただ飯喰らいをしてるだけで……! それがもう……もどかしくてもどかしくてしかたがないんだ!」


 御子神はフラストレーションばりばりで叫んだ。


「何も出来てないわけじゃねえよ。おまえはこうしてシロの護衛をしてくれてんじゃん。それだって立派な役目だろ。おまえがいるおかげで、俺は枕を高くして眠れ……」


 言いかけてやめた。


「……ごめん、今の無し」


 かぶりを振った。


 俺はまた、御子神を誤魔化そうとした。

 体のいい言葉で丸め込もうとした。


 知ってるんだ。

 こいつが望んでるのは、そんな言葉じゃない。

 見せかけだけの優しさじゃない。


「そうだな。おまえは弱い」


「……っ」


 御子神は、はっと何かに打たれたような顔をした。


「自他共に認めるバトルマシーンが、戦う場を失って番犬に甘んじてる。ざまあねえ」


「ぬ……ぐ……っ」


 ぎりぎりと歯ぎしりした。


「そのくせこんな風に暴れて、当たり散らして、みっともねえったらありゃしねえ」


「ぐ……に……に……っ」


 竹刀を握る手が、小刻みに震えている。


「おうおう、鼻息荒いねえ。でもそれだけか? 怒ってるだけか? 悔しがってるだけか?」


「……違う」


「御子神蛍とは、その程度の女なのか?」


「違う!」


 御子神は憤然と立ち上がった。


「私は御子神一刀の娘だ! 古き血を引く、誇り高い剣士だ!」


「おうおうたいしたもんじゃねえか! だったらどうするよ剣士様! プライドにかけて、おまえが今しなきゃならないことはいったいなんなんだよ!」


「子供を産む!」


「そう! その通り! 俺と一緒に修行を……ん?」


 ……今なんて言った? こいつ。


「自らが戦えないのなら、次代に受け継ぐ! より強い血に託す!」


「え、や、ちょっ……」


「もともとそのつもりだったんだ! 母上も! 御子神も! 一族の総意として、ITである旦那様に身を捧げよと言われてきた! Incompleteness transformer! 不完全性変容体! 人類を滅ぼす災禍さいかにも、人類を救う救世主にもなり得る最強の遺伝子を我らが血に混ぜよと!」


「え……えぇー、本気で言ってんの?」


 御子神の目はぐるぐる回ってる。

 頭から盛んに湯気をたててる。

 ……いかん、煽り過ぎた。

 こいつ、完全に錯乱してるじゃないか。


「……ま、まあ落ち着け御子神。そうじゃないんだ。俺が言いたいのはさ、もっと修行して強くなろうってことでさ。俺と一緒にさ。そしたらなんちゅーか、構ってやれるわけじゃん? 寂しくないわけじゃん? 俺の修行にもなるし、それこそまさにウィンウィンの関係だなって……」


「……優しいのだな、旦那様。いつだって私のことを気遣ってくれて……」


 慈愛に満ちた瞳で、御子神は俺を見た。


「おおっ、わかってくれたか御子神っ」


「でも大丈夫だ。家を出た時から覚悟は決まってるんだ。私は今宵、旦那様にこの身を捧げる」


「全然わかってない!?」


 逃げようと身を翻した瞬間、後から首と腰に腕を回された。

 すかさず足を払われ、変形の裏投げを決められた。


「いぃい……っ!? うええ……っ!?」


 戸惑う俺に、御子神は容赦なかった。

 あっという間に組み伏せられた。

 うつ伏せに寝かされ、腰のあたりに御子神が座った。


「いやいやいや、おかしいだろおかしいだろ! なんだこの展開! なんだこの展開!」


「大丈夫だ旦那様。優しくするから、な?」


「な? とか優しく言ってもダメだからな!? 投げ飛ばして組み伏せてる時点で全っ然優しくねえから! ふあああああ!? こら、愛おしげに背中を撫でるな! く……首筋に息を吹きかけるなああああああ!」


「ふふふふふ……まあそう怖がるな。まったく、可愛いやつめ」


「ちくしょう、言葉がまったく通じねえ! シロの寝言よりもわからねえ!」


「そう言うな。……すぐにわかるようにしてやるから」



「なんだその台詞! めっちゃ怖えよ! わかるようにってどういうことだよ! どんな風にされちゃうんだよ俺は!」


 答えの代わりとでも言うかのように、肩口を剥かれた。

 肌が直接空気に触れた。

 

「いやああああああああああ!? 犯されるううううううううう!」


「はっはっは、元気がいいなあ。旦那様は」


「その爽やかな笑いがめっちゃ怖えよ俺は!」


 御子神の極めはキツく、いくら暴れてもまったく緩まない。

 さすが武道家……って感心してる場合じゃない。

 なんとか逃げる方法を考えないと。


「……そう言えば」


 御子神が思い出したようにつぶやいた。


「父上は、私が小さい頃に亡くなったんだがな。一度、門弟が噂してたのを聞いたことがあるんだ。楪さん、激しい人だったからなって。彼らはそう言って微妙な笑いを浮かべてた。その時はまったく意味がわからなかったんだがな。今はなぜだろう、わかるような気がするんだ」


「俺もわかった! なぜだかわかんねえけど超わかった! あの人ならやりそう!」


 絶対Sだもんあの人!


「……死ぬなよ? 旦那様」


「たぁすけてえええええええええええええ!」


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