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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第6章:旅立つキミの!!」
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「舟の行き先」

 ~~~メレラ~~~




 タスクに何事かを告げたウルリカは、顔を拭うようにしながらその場を去った。

 宴席に向かって、まっしぐらに駆けていく。


 タスクはその後を追うことが出来ず、ただ立ち尽くしていた。

 胸の痛みに耐えるように、顔をしかめて。




「……」


 ふたりの別れを、メレラは遠くからじっと見守っていた。

 もうほとんど見えない目で、でもたしかに、目の前にある出来事のように感じ取っていた。


 エーテルのおかげ……というだけではない。

 ただ単純に、想像しやすかったのだ。

 だってそれは、遥か昔に一度、見たことのある光景だったから。


 星をつロキと、星に残ることを決めたマウラ。

 あの姿にそっくりだったからだ。




「追えない……ものなんだろうね」


「……」


「手を掴んで引き留めて、抱きしめてやればさ、それで済む話なんだろうにね」


「……ああ」


「無理して言わないでいいよ。あんたには荷が重いだろ?」


「……違いねえ」


 ロキはただガシガシと、頭をかいた。




「……なあ、メレラよ」


 杖をつきながら宴席に戻ろうとしたメレラに、ロキが声をかけた。


「今さらわしがどうこう言えた義理じゃねえのはわかってる。だがよう……なあ、後生だから、ひとつだけ教えちゃくれねえか?」


「なんだい、改まって」


 足を止め、メレラは振り返った。


「マウラは……シリカはよう。……幸せに、暮らせてたかい?」

 

「………………はっ。何を今さら」


 ロキの未練をメレラは鼻で笑い、再び歩き出した。


「おい、メレラ──」


「うるさいよ」


「なあ、頼むって──」


「いいから、離しなっ」


 追いすがるロキを振り払った。

 そしてなおも、前に進んだ。 


「なあ、ロキ。わかってんだろ?」


 振り返りすらしなかった。


「それを知る権利があるのはさ、きちんと帰って来た者だけだよ」


「ああ………………まあな」  


 痛烈な返しに、ロキは言葉を失った。


 自覚している通り、彼の帰還はあまりに遅すぎた。

 こうしてメレラにすげなく断られるだろうことも、わかっていたに違いない。


 だけどそれでも、知りたくなったのは……タスクとウルリカの姿に、昔の自分とマウラを重ねたせいだろう。

 もしあの時別れることなく共にいたなら、今ごろどんな生活をおくっていたのだろうかと、詮無きことを思ったのだ。

 ちょうどメレラがそうだったように。






 ぽつねんと立ち尽くすロキをその場に残して、メレラは歩き続けた。


「……バカだね、本当に」


 誰にも聞こえぬような、小さな声でつぶやいた。


「追いすがらないで掴めるものなんて、何も無いのにさ」


 そしてそっと、ため息をついた。


「はあ……それにしても。あのお人ならあるいはと、期待してたんだけどねえ……」


 失望と落胆は、老いさらばえた身にはことにこたえる。


 コツコツと杖を突きながら、メレラは──


 マウラのことを思った。

 シリカのことを思った。

 願いを叶えることの出来なかったふたりと、ウルリカのことを思った。 

 

「もう少しきちんと、発破をかけてやればよかったのかね? 背中を蹴飛ばしてやればよかったのかね? だけどまあ、それも……未練だわね?」


 答える者のいない問いを、繰り返した。


「舟の行き先を決めるのは、他の誰でもない自分自身だ。それがわかった上で、あんたらはそうしたんだものね?」


 繰り返しながら、歩き続けた。


 ゆっくりと。

 ゆっくりと。


 赤い月の照る中を。

 柔らかな夜風の中を。


 静かに。

 静かに。


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