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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第4章:俺とジーンの最後の冒険!!」
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「槍合わせ!!」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~




 日本古流ってのは、言うまでもなく戦場武術だ。

 合戦のさ中の組討ちに使うのが本義。

 刀や槍に対する方法も、それを奪って使うことまで視野に入れてる。

 だから俺はすべての武器を扱える。良いところも悪いところも、その特質まで頭に入れてる。


 その上で言わせてもらおう。

 素手、刀、槍。

 この中で最も強い攻撃手段は槍だ。

 刀は素手に強く、槍は刀に強く、そして槍には槍でしか勝てない。  


 リーチの長さは百難隠す。

 どんなに鋭い拳も刃も、相手に届かなければ意味がない。


 だから俺は槍を選んだ。

 最も強く、最も速い攻撃手段を。  





「死ぃねえええええええっ!」


 大音声と共に、ウルリカが仕掛けてきた。

 中段の構えから駆け出し、全体重を乗せるようにして踏み込んできた。


 ウルリカの使う手槍の長さは約5尺(150センチ)、穂先は3寸(15センチ)。

 俺のものよりも幾分短い。


 俺を突くためには、当然、中段に構えた槍が邪魔になる。


「しゅっ……!」


 鋭い呼気と共に、ウルリカの槍の穂先が一瞬上に跳ね上がった。

 俺の槍の穂先を叩き、そのまま胴を突こうという狙いだ。

 

「……まあ悪くないんだけどね、勢いあるし」


 ウルリカの槍の穂先が跳ねると同時、俺はあらかじめ前目に構えていた槍を、所定の位置(・ ・ ・ ・ ・)まで戻した。

 

「な……っ!?」


 ウルリカの目が、驚愕に見開かれた。

 あるべきはずの位置に、俺の槍の穂がなかったからだ。


「三条流──虚返うつろがえし!」


 空ぶった穂先が浮上しようとするのを上から叩き、そのまま肩口を突いた。


 しかし──


 ガイン、金属同士がぶつかるような音がした。

 肘の先まで、じぃんと痺れたような感覚が広がった。


 ウルリカのザインを、俺の槍は貫けなかった。

 

「な……っ、な……っ、な……っ!?」


 ウルリカは慌てて後退し。


「うへえ、固てえなあーっ。エーテルの性質は性根を表すってか?」


 腕を振りながら、俺はぼやいた。


 なかなかに堅固な装だ。

 なるべく濃度の薄い──防御の脆い──ところを狙ってこれだからなあ……。

 万全だったらと思うとぞっとするぜ。


 だけどそんな気持ちはおくびにも出してやらない。

 弾かれるのも計算のうち、みたいににやにや笑いながら、中段に構え直した。

 

「ま、それぐらいガードが固いほうが楽しめるってもんだけどさ」


「くっ……この!」

 

 ウルリカはめげずに攻撃を繰り出してきた。

 上からの叩き、横からの薙ぎ、正面からの突き。


 どれもこれも強烈で、目にも止まらぬような一撃だったが、なんなく対処出来た。

 叩きは横に払い、薙ぎは叩き落とし、突きにはやはり──すかして返した。


「もういっちょう!」


 ガィィィン……!


 さっきと同じ位置をさっきよりも強く突いたが、ウルリカの装はなおも固く、傷をつけることはかなわなかった。


「ちぇ……まぁだ甘いってのか? どんだけだよ……」


 ぼやきながら槍を手の中で弄んでいると……。


「なんだ……っ? 貴様のその槍……っ?」


 突かれた肩を手で押さえたウルリカの顔に、驚愕の表情が浮かんでいる。


「いったいなんなんだっ? 伸びたり縮んだり……動きが変だっ。そんなの見たことないぞっ?」

 

 なぜか非難めいた口調だが、それほど混乱してるってことだろう。


「あー……うん、やっぱそうだよな。そんな気はしてた。あんたの攻めが単調なのは、性格もあるんだろうけど、たぶんそれ以上にあんたらの(・ ・ ・ ・ ・)()が未熟なんだ」


「未熟……?」


 おそらく思ってもみなかったであろう単語に、ウルリカはきょとんとした顔になった。


「歴史の差、といったらわかるかな?」


「歴史の……差……?」


「わかんねえか。……うーんとさ、俺、ジャンゴに来るのは初めてなんだよ。初めてなんだけど、相棒がこういうの好きで、寝物語に聞かされ続けたもんでね。データ的にはかなり詳しいとこまで知ってんだ。地表の7割がこんな荒野で、寒暖の差が激しい。年間降雨量は200ミリにも満たないが、降る時はまとめて降る。雨のせいで滅んだ一族もいるってな」


「……」


「支配階層は、あんたらみたいなカンティラ人種だ。肌浅黒く、髪の毛は黒、目も黒。過酷な自然環境の中で鍛えられているから体は頑健、精強無比。住む地域によって、クルルカ族・ゴロッカ族・センテ族・ギド族・モド族の5部族に分かれている。それぞれ細かな違いはあるが、どの部族にも共通しているのは長柄の武器を得意とすること。馬で移動する機会が多いから、馬上での戦闘に長けていること。尚武の風があり、強者は一族の垣根を通り越して尊ばれること」


「……」


 ウルリカは実に嫌そうな顔をしている。

 よその人間が自分の星や一族のことで、知った風な口を叩いてるのが気にくわないんだろう。


 ま、そう思わせるのも狙いなんで、別にいいんだけどさ。


「なあ、一応聞いとくぜ? この星でメインの戦争っていったら部族間抗争なんだろうけど、あんたらあまり、そういうのしてこなかっただろ?」


「何を言ってる? 地の5部族は互いに仲が悪く、水場争いで今までに何度も……」


「あーあー、はいはい、いいんだよそういうの」


 俺は掌を突き出し、ウルリカの言葉を遮った。


「どうせ何年前にどこの部族とやり合った。そのさらに何年か前はどこの部族とやり合った。なんていう気の長いスパンの話をする気だろ? 規模だって、10数人対10数人ぐらいの話だろ?」


「む……ま、まあそうだが……っ」


「その何十倍何百倍、時には何千倍って規模の数の戦争なんて、想像も出来ねえだろ?」


「何……千……!?」


 ウルリカは目を丸くした。


「俺の星はさ、あんたんとこよりももっと多くの人種がいて、もっとたくさんの部族に分かれてんだ。何億、十何億って単位の部族がごろごろいるわけ」


 さすがに十何億ってとこは限られてるけども。


「……億? ……億?」


 ウルリカは思わず二度繰り返した。


「とくに槍はさ、人類最古の武器なんても呼ばれてるわけ。何千年って歴史の中で、何億何十億って人たちが使ってきたわけ。たくさんの人達の肉を貫き、骨を砕いてきたわけ。当然、技術も磨かれるわな。我が子へ、またその子へと継承し、濃度を濃くしていくわな。なあ、わかるか? その最終形態が、他ならぬこの俺なんだ。数多の先人たちの、血と汗の結晶なんだ」


 俺は口元を緩めた。


「あんたの攻撃はさ、たしかに速いし重いよ。だがそれだけだ。力任せ、身体能力頼み。エーテルの後押しがあるから多少は見栄えがするけどさ。俺から言わせりゃあ──」


 馬鹿にするように、目をすがめた。


児戯に(・ ・ ・)等しい(・ ・ ・)


「──!?」


 ゾクリと、ウルリカは背筋を震わせた。

 明らかにひるみを見せた。


「……あらあら、びびっちゃった?」


 俺は半歩、足を踏み出した。


「じゃあそろそろ、こっちから行くぜ?」


「ぐ……ぐ……ぐ……っ? な、なっ、舐めるなああああー!」


 俺の言葉に触発されたのか、ウルリカが必死の形相で攻めてきた。

 未熟と侮られたのを気にしてか、下段、中段、上段と、様々に散らして突いて来た。

 フェイントらしきものまで混ぜてくるようになった。


「おーおー、いいよいいよー、今度は工夫してきたなあー?」


 そのことごとくを、俺は笑いながら躱した。


「だけどまだまだだな。そんなんじゃ当たってやれねえぞ?」


 なんなく払い、受け流した。


「おおおおおおああーっ!」


 ウルリカの攻めはさらに激しさを増すが……。


 そのうち、槍の穂先が俺の身に届くことすらもなくなった。


 一連の攻防で、俺は完全に見切ったのだ。


 伸びてくるウルリカの槍の穂先を、その都度上から叩き、横に払い、巻いて落とした。

 専門用語で頭を押さえるとか、枕を押さえるなんていうやつだ。

 槍の技術の根本で圧倒した。

 制空権を掌握した。



「うう……ぐううっ……っ?」


 突きも、薙ぎも、叩きも。

 己の技のすべてが通じない。

 そもそも届かない。


 どうしていいかわからなくなったウルリカは、やむを得ず俺から距離をとり、呼吸を整えた。

 といって、他の手段も思いつかないのだろう。

 槍を握りしめたまま、呆然と立ち尽くしている。



「ウルリカ! 戦え!」

「そのような子供におくれをとるな!」

「クルルカの誇りを示せ!」


 男たちの声援がむなしく響く。



(……確認するが、もったいぶっておるわけではないのだな?)


 アデルの問いに対し、俺は小声で返した。


「当ったり前だろ? 誰が真剣勝負の最中にそんな舐めプするかい。殺しちゃまずいから、落としどころを探りながらやってるんだよ。つうかさ、勘違いしてるのかもしんないけど、古流の槍術ってのは崩しや拍子を重視するから、自分から突くなんてこと滅多にしないんだよ」


(槍術なのに突かないと……?)


「自分から攻めるってことは隙が出来るってことだろ? だから熟達者であればあるほど相手の攻めを待つ。せんをとって、一撃で決めたがるものなんだよ」


(なるほどのう……ただのサディストかと思っておったが)


「失敬な……いやまあ、そういう感情がないとは言わんけどさ。動揺してる女の子って可愛いし」


 でも、慎重に戦ってるってのは本当だ。

 

「あの装の硬さを見てもわかる通り、ウルリカのエーテルキャップは相当なもんだろ。ヴィガンを見てもさほど驚かなかったし、運法うんぽうに関しても、ひょっとしたら俺より上のステージにいる可能性がある。正直、エーテルでは争いたくないんだ。あくまで武術で雌雄を決していると思い込ませたい。このまま追い込んで、心をぽっきり折って降伏させるのがベスト」


(……なるほどのう。だがもし、あまりにも追い込み過ぎて、武術では勝てないからエーテルで……という流れになったらどうする?)


「はっ、それこそチャンスだろ」


(……ふむ?)


「今言ったろ? 熟達者であればあるほど後の先をとりたがるって。後の先、つまりは──」


 カウンターだ。



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