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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第4章:俺とジーンの最後の冒険!!」

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「その名はウルリカ!!」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~




 全速力で飛ばしたおかげで、夜が明ける頃にはかなりの距離を稼げていた。


 だけどまともな休憩もなく走らせたせいか、馬は盛んに舌を出していた。

 毛並みはしとどに汗で濡れ、いかにも苦しそうだ。


「ドードードー……ごめんな、ちょっとキツすぎたか?」


 さすがに可哀想になって、速度を緩めた。

 ブルルル、といななくと、馬は不快げに首を振った。


「ねえタスク、そろそろこのコ、休ませてあげたら? 水を飲ませて、ひと息つかせてあげてさ」


 深酒からの復活を遂げていたジーンが、申し訳なさそうに馬の腹を撫でた。

 俺の背を叩き、「……ねえタスク?」と気づかわし気な声を出した。


「お姉さんたちのこと心配するのはわかるけど……」


「ああ……うん。だけどもう少し……もう少しのはずなんだよ……。座標的には、もう目的地周辺にいるはずなんだ」


 ジーンの言いたいことはわかってる。

 今の俺の余裕のなさも。

 だけどさ……。


 早くクルルカ族を見つけて、ロキに会って、ケルンピアに戻って……やるべきことはマジで山積みなんだよ。


「こんなとこで手間取ってるわけには……」

「──馬の扱いがなっていないな」


 俺の言葉に被せるように、誰かが発した。

 ジーンじゃなかった。

 アデルでもなかった。

 別の誰か。

 聞いたことのない女の子の声──


「誰だ!? どこにいる!?」


 辺りを見回したが、人の姿はなかった。

 目に見える範囲にあるのは、荒野、小高い岩山、荒野、荒野……。


「──ここだ。外なる者」


 小高い岩山の上に誰かいた。 

 馬に跨り、こちらを見下ろしていた。

 逆光で、姿かたちはよく見えなかった。


「ハイヤッ」


 馬の腹を蹴ると、そいつは一息に駆け下って来た。

 断崖絶壁みたいな斜面を、平地みたいに降りて来た。


「……お、女の子?」


 歳は俺と同じか、ちょっと上ぐらいだろうか。

 黒々とした髪を大きな三つ編みにした女の子だ。


 おそらくクルルカ族なのだろう。

 ざっくりした麻の民族衣装を着ている。

 むき出しの腕は赤銅色で、サソリの入れ墨がある。

 全体的に細身だけど、ほどよく筋肉がついて引き締まっている。

 重心も安定していて、いかにも強そう。

 小脇にかいこんだ長めの手槍、馬の腹に括り付けた弓矢、首から下げた何かの牙の首飾りなんかも、武の一族感を醸し出している。

 

 あ、もひとつ大事なこと、超絶美少女。

 いやホント、顔立ちがめっちゃ整ってる。

 眉毛がきりっと凛々しくて、アーモンド形の双眸は深い黒色を湛えていて、見てるとなんだかゾクゾクしてきちまう。


「何者だ。何をしに来た?」


「あ、えーっと……」


 ぽーっとなって反応出来ないでいる俺の顔をぐいと押しのけ、後ろからジーンがしゃしゃり出た。


「キミこそ、誰さ!」


 子犬が吠えるみたいに叫んだ。


「人に聞く前に、自分から名乗るのが礼儀だろ!? どこから来た何者で、なんでボクらの前に立ちはだかるのか! それをまず答えなよ!」


「ちょ、ジーン……」


「タスクは黙ってて!」


「あ、はい」


 女の子は大儀そうに首を横に振った。


「ウルリカだ」


 短く名乗った。


「クルルカの族長を任されている」


「族……長……?」

 

「……その若さで?」


 最初にジーンが、次に俺が驚いた。


「若い?」


 ウルリカは鼻で笑った。


「外なる者とは違う。強き者が一族を率いるが、クルルカのならわしだ。たしかにウルリカは若いが、誰も疑問を差し挟む者はいない。純粋に強いからだ」


 尚武しょうぶの一族ってのは世の中に多くある。

 だけど年齢も性別までも度外視して族長につけるってのは、かなり珍しいパターンだ。

 クルルカが特別なのか、ウルリカだけが例外的に強すぎるのか、それとも他に理由があるのか……。


 困惑しているうちに、ウルリカの背後の山から複数の馬が降りて来た。


 皆、大人の男だった。

 筋骨逞しい腕に、ウルリカ同様に槍をかいこみ、同様にサソリの入れ墨をしていた。

 

「どうした、ウルリカ?」

「その子供が、何か?」

「外なる者、殺すか?」


 口々に言う彼らを、ウルリカは後ろ手で制した。


「やめよ。クルルカは誇り高き一族だ。弱き者をいたぶるをとはしない」


「そうだな、ウルリカ」

「我ら、外なる者とは違う」

「命拾いしたな、子供」


 男たちはガハハと笑い合った。

 いかにも舐められてる感じ。まあ無理もないけど。


「この……っ、好き勝手言ってくれちゃってえー……」


 不満げなのはジーンだった。

 最近やたらとケンカっぱやくなったこのコは、「ゴゴゴゴ……」と怒りのオーラを立ち上らせていた。


「まあまあ、落ち着けってば」


 ジーンの太ももをさすってなだめると、俺は改めてウルリカに向き直った。 


「俺は地球から来た冒険者、シンドー・タスクだ。こっちはケルンピアのジーン・ソーンクロフト。故あって、ロキ・マグナスに会いに来た」


 俺の言葉に男たちがざわつき、ウルリカは片眉を跳ね上げた。


「警戒するのはわかる。いきなりで変な話だよな。だけど聞いてくれ、ジーンがロキの知り合いなんだ。すんげえ仲がよくて、爺ちゃんと孫娘みたいな関係なんだ。話さえ通せばわかってくれるはずだ。な、そうだよな? ジーン」


「……うん」


 まだ相手の態度を怒っているのか、ジーンはむくれたような声で答えた。


「……会えばわかるよ。早く会わせてよ」


「おいおい、そんな言い方……」


 言い方を改めさせようとしたが、ジーンは腕組みしてそっぽを向いてしまった。 


「………………孫娘、だと?」


 ウルリカの声が、わずかに震えた。

 

 どうしたんだろうと思って振り返ると、ウルリカは眉間に皺を寄せた、険しい表情をしていた。


「あの……種馬っ」


 ぎりっと、歯を食いしばるような音を発した。


 ん? あれ? なんか勘違いしてる?

 というか何? 種馬? このコのNGワードに触れちゃった感じ?


「待った、ウルリカ。ジーンは別に本当にロキの孫娘ってわけじゃなくて……」


「……ははーん。なるほどそういうことか。ねえキミ、だったらどうするつもりだい? ボクがロキの孫娘だったとしたら」


 ジーンが挑発的な態度で言った。


「待て待てジーン、おまえ何言ってん……」


「知れたこと……」


 ウルリカは頭上で槍をぶんと回すと、ピタリ穂先をジーンに向けた。


「──殺す」


「はああああああっ!?」


 何その急展開!?


「──やってみなよ。出来ないだろうけど」


「おまえはおまえで何言ってくれちゃってんのおぉー!?」


 俺の絶叫もむなしく、ふたりはガンを飛ばし合った。

 馬を降り、至近距離で向かい合った。

 

「落ち着いて落ち着いて落ち着いて! 意味がわかんねえよ! なんでケンカみたいになってんの!? おかしいだろ! 全然いがみ合う要素なかっただろ!?」


 俺は慌てて馬を降り、ふたりの間に割って入った。


「この人、タスクをバカにした。弱いって。ボクの……タスクを……っ」


「いいよおー! そんなことおー! 俺まったく気にしてないよおー!」


しき血……滅ぶべし……」


「だからそれは違うんだってばあー! ただジーンが煽っただけなんだよおー! 本当はふたりは血縁関係なんかじゃなくってえー!」


 俺は互いの行き違いを精いっぱい主張したが、すでにスイッチが入ってしまっているふたりは、まったく引こうとしなかった。

 

「いずれにしろ、貴様らの申し出を受けるわけにはいかない。縁もゆかりもない者を、一族の内部に踏み込ませるわけにはいかない」


「こっちだって後には退けないね。ロキぃに会わないまますごすご帰るなんてあり得ない」


「遮二無二進もうとするなら、殺すしかないな」


「出来るもんならやってみなって言ってるだろ? ボケてるの? おばさん?」


「おば……!? う、ウルリカはまだ15だぞ!?」


「へえー、じゃあやっぱりおばさんだー。なんせボクらはぴっちぴちの14歳だもーん」


「だぁぁぁかぁぁぁらぁぁぁー!」


 ふたりとも、俺の言葉にまったく耳を貸そうとしない。

 どうでも結着をつけようって態度だった。

 

「あのさあ、さっきからずいぶんと余裕ぶってるけど……キミ、負けたらどうするつもりだい?」


 ホルスターに納まっている光線銃ライトニング銃把じゅうはに手をかけながらジーン。


「知れたこと、クルルカの掟に従うのみだ」


 ウルリカは槍を構え腰を落とした。


「なんだよ掟って?」


「簡単だ。敗者は勝者のモノとなる。まああり得ない話だがな」


 止まらない煽り合いを、男の人たちはにやにや笑いながら見ている。

 それだけウルリカを信頼してるってことなんだろうけど……。


「だああああああぁーっ! しかたねえなあもう! このわからず屋どもめ!」


 俺は叫ぶと、ジーンの腕を掴んで遠くへ引き離した。

 

「俺だ! 俺がやるよ! 俺が相手だ!」


 代わりにウルリカと対峙した。


「ええー、なんでタスクが?」


 不満そうなジーンの額を、ぴしゃりと叩いた。


「女の子に戦わせて、男が黙って見てるわけにはいかないだろ!? それに、こういうのは俺のほうが向いてるんだよ!」


 ハッキリ言ってジーンは強い。

 きっちりエーテルを操れば、そうそう負けることはないだろう。


 だけど加減が出来るほどの技術はないんだ。

 ワンパンが強すぎる。

 怪我させるぐらいで済めばいいが、殺しちまったらそれこそ大変なことになる。ロキに会うどころじゃなくなる。

 その点、俺なら穏便に決着をつけられるし……ん? 今この人、変なこと言わなかった?


「……敗者は勝者のモノになるって言った?」


「その通りだ。強者が全てを手にする、それがクルルカの掟だ」


 ウルリカはどうでもよさげに首をこきこき鳴らした。


「ウルリカが勝てば、貴様はウルリカのモノとなる。ウルリカに勝てば、ウルリカは貴様のモノとなる。さすればウルリカは、貴様をあの男の元まで導くだろう。もっとも、出来はしないだろうがな」


 不敵に笑い、槍の穂先を俺に向けた。

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