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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第2章:最果ての地より君を思う!!」

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「強くなるための道筋!!」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~




 エーテル運法うんぽうの修行を終えると、アデルはすぐに「疲れた、休む」と言い残して俺の中に引っ込んだ。

 寝床に籠もるので、死んでも起こすなとのことだった。

 いやいや、おまえは俺の体のどこに寝床をしつらえてんだよ、こええよ。

 と思ったけど、「肝臓の裏」とか真顔で答えられても嫌なのでやめておいた。


「さて……」


 疲れたし、俺も寝るか……。


 なわけもなく。  

 俺はすぐさま日課の自主トレを始めた。

 

 右上段手刀──前進して右三戦(さんちんだ)ち──左中段逆突き、右中段追い突き──前進して左猫足立(ねこあしだ)ち──右掌底中段受け、左貫き手中段突き──前進して右猫足立ち──


 突然空手の型稽古かたげいこを始めた俺を、ジーンは驚いた表情で眺めていた。

 それは「休まないのかなタスクは」という驚きであり、「なんだろこの不思議な動きは」という驚きでもある。


 定められた手順で定められた技を繰り出す空手の型稽古は、約束ごとの決まったシャドーボクシングなんていう風に形容されることもあるが、実はまったく違うものだ。


 まず複数の敵との戦いを想定している。

 当然敵は前からだけでなく左右や背後からも来るし、刃物を持っていることだってある。こちらが懐手の時にだって襲って来る。

 身体操作や運足うんそくには、だから様々な配慮や試行錯誤が施されている。敵を突き飛ばしたり振り払ったり、わからない者が見たら首をかしげるような動作もある。

 

 当然、神秘的に見える。 

 日本人どころか地球人ですらないジーンにはなおさらだろう。

 

「ふぁー……」


 最初きょとんとしていたジーンの目は、徐々にキラキラ輝き出した。

 地面に体育座りして、わくわく顔で俺の動きを眺めてる。


 ……よーし、ここからはサービスだ。


『ナイファンチ』、『バッサイダイ』、『五十四歩ごじゅうしほ』を終えた俺は、そのまま次の型に移行することにした。


 両手を下方に下げ、竹刀を握るような形に構え直した。


 ジーンが俺の動きを見て「おっ?」という顔をした。

 種目自体が変わったのに気づいたか。


 そう、次にやるのは剣道だ。

 打太刀と仕太刀に分かれてやる日本剣道形。

 昇段審査や公開演武以外で目にすることはまずないだろうから、空手の型稽古よりかなりマイナー。


 俺は頭の中に仮想敵を思い描いた。

 ポニーテールの女剣士──御子神みこがみが竹刀を振り上げる姿を。


「キェアアアー!」


 相上段あいじょうだんからの面抜き面。

 相中段からの籠手抜き籠手。

 相下段の突き返し突き……。

 7つからなる太刀形をなぞり、陰陽五行の理合いを確かめていく。

 

 納刀すると、ジーンが「おおおおおー……っ」と手を叩いた。


 ようし……もひとつサービスだ。


 お次は古流武術だ。

 組み手乱取りの存在しない古流武術では、型稽古が練習の根幹となる。

 狭い屋内、対鎧武者、タイマンに他対一……。とにかく様々なシチュエーション様々な相手を想定しているのが特徴だ。

 

 俺はすっと腰を落とすと、前後に足を開いた。

 頭の中に仮想敵を思い描いた。

 闇の世界の殺し屋みたいな目をした女武術家──お袋が仕掛けて来る姿を。

 

 砕き(当て身)を躱し、引き倒しての腕固め。

 腕をとられた状態からのほどき(脱出法)と蹴上げ。

 太刀の振り下ろしを捕り、引き倒しての、首への足刀……。


「すごいすごい……っ、なんかわかんないけどとにかくすごいねっ! タスク!」


 残心ざんしんしながら呼吸を整える俺を、ジーンは盛んにたたえた。


「へへっ、そうだろ? こいつは型稽古ってんだ。昔の強ーい人たちが考えた練習形式さ。踊りみたいに見えるかもしんないけど、バカにすんなよ? 意外と実戦でも役に立つんだからな?」


「バカになんかするもんか。ねえねえっ、さっき言ってたのってこれ? 完璧なイメージを作り上げるってやつ」


「そのとーり。こーゆうのをさ、俺は何千回も何万回もやってきたんだ。頭の中でイメージを思い描いて実践するのは得意中の得意ってわけだ」

 

 いつもの俺ならここでえっへんと胸を張るところなんだが……。


「どしたのタスク? 真面目な顔して」

「いや……」


 型の中には強くなるための意志が詰め込まれてる。

 偉大な先人たちの血と汗が染み込んだ、武の結晶とも言うべきものだ。

 それを反復練習するということは、すなわち先人たちに近づくということでもあり……。


 ──だけどそうやって追いついた先にいるのはさ、ただの人間なんだよな。


 空手、剣道、古流武術。

 それぞれみんな達人かもしれないが、エーテル使いじゃない。

 人間には勝てるかもしれないが、それ以上の存在には勝てない。

 ましてやあの『闇』には……。


「……タスク?」


 薄ぼんやりとした記憶の向こうにあるあの光景──

 東北の山中、お袋と親父を呑み込んで消えた『闇』──


 グロットザインヴィガン

 三種を使いこなす俺には、もっと違う動きが出来るはずだ。

 だったらそれに応じた型があるべきだ。

 人間の枠を超えた極限の型が。


「……そうだ、俺は人間を超えなくちゃならないんだ」

「……タスク? どうしたの?」

「ようし……。物は試しだ、見てろよ? ジーン」


 俺は肩幅に足を開き、軽く膝を曲げた。

 両手を体側たいそくにだらりと下げた。

 全身から力を抜き、自然体で立った。


 ピンと、体の中に一本の芯が通った。

 呼吸が楽になり、気持ちが落ち着いた。

 

 目に意識を集中すると、ほわほわ青い光の玉が浮かんでいるのが見えた。


 20……30……。


「まずは張」


 空気と共にそれらを吸い込み、臍下丹田せいかたんでんへ降ろした。気を乗せ、経絡けいらくを通して全身へ送り出した。

 足の裏、膝、腰、背中、肩から手の先、頸椎けいついを通って眉間と頭頂へ。


 エーテルを漏らさず、力強く循環させた。

 やがてその流れはぐぐっと膨らみ、輝度を増して張り詰めた。

 俺の周囲に、半径1メートルほどの青い球を形作った。


「次に装」


 力を逃さず、青い球を凝縮させた。

 体の周り数センチのところに、明度の高いエーテルの壁として固着した。


「そして転──」


 仮想敵は3人。

 3対1か……うん、強すぎる奴はやめとこう。

 前方に名もなき剣道家、左右に名もなき空手家がふたり、っと。


 左猫足立ちで待ち構える俺に、剣道家が摺り足で近づいてくる。

 間合いに入った瞬間、竹刀を大上段に振り上げた。


「しっ……!」

 左前蹴り──蹴り足の先にエーテルを集中した。光り輝くつま先で、剣道家の腹を突き刺した。


 蹴り足を降ろしつつ、振り向きざまに右下段払い──前腕にエーテルを集中した。側面から仕掛けてきた空手家の蹴上げを、すねごと叩き折った。

 

「うわ……っ?」

 俺の手足が空を切る音のすさまじさに、ジーンは驚きの声を上げた。


「まだだぜジーン、驚くのはまだ早い」


 ──トン、と。

 なんの動作もなく、筋肉の収縮ひとつなく、俺の体がいきなり右へ30センチ移動した。


 後ろから仕掛けてきていた空手家は突然の俺の動きに対応できず、前蹴りを空振りさせた。 

 ──逃がさん。

 浮いた蹴り足を片手ですくい上げた。空手家はたまらず、その場に尻もちをついた。

 立ち上がろうとしたところへ足刀。首をへし折った。 



「タスク……今のってもしかして……。エーテルで飛んだの?」

 

 ジーンは、遅れていまの行動の意味に気がついた。

 

「そうだ。跳んだんじゃない、飛んだんだ(・ ・ ・ ・ ・)。筋肉の力じゃなく、エーテルで地面を叩くようにして自分の体を飛ばした」


「ふぇえええー……」


「炎をまといながら攻撃したり、手刀の先から真空波を飛ばしたりとかも考えたんだけどな。まだまだ思案段階だ。とりあえずは出来そうなことから組み込んでみた。強い蹴り、強い払い、相手の意表をつく動き。な、悪くないよな? ちょっと荒いかもしれんけど、初めてにしては上出来だろ?」


 武術革命とまで言うと大げさか? でもかなり、いい手ごたえがあった。


「俺の創った俺の型だ。言うならば、新堂流エーテル格闘術の第一歩ってところかな。そのうち道場でも開いて、多元世界中を教えて回るか。……あれ、ダメか。エーテル使いってそもそも希少なんだっけ? 生徒がいないんじゃあなあ……」


 ……まあでも、強力な武器には違いないよな。


 俺はぎゅっと拳を握った。

 心の中でつぶやいた。

 

 ──なあお袋。どうやら強くなるための道筋は見つかったみたいだぜ?

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