表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第2章:最果ての地より君を思う!!」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/465

「循環変転と対抗変転」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~




ヴィガンとは、グロットザインという基本を身に着けた者が行使するエーテル運法うんぽうの応用形であり、より実践的なエーテルのぎょし方の技術である。身にり、身をよそおったエーテルをてんずる。つまり、ぬしらの現在その状態から行う術なのだ」


「……この状態から?」

「へえー……」

 俺とジーンは、毒液まみれの互いの体を見合った。


「まずは身を守っているエーテル装。その外側に意識を集中せよ。小僧、ぬしがこの間やっていた体の使い方と同じだ。ミートの瞬間拳の周りに力を一点集中させたように、体の外面、外部との境界線に集中せよ。毒液を吹き飛ばすつもりで勢いよくだ」


「外部との境界に勢いよく──」


 俺は両手を体側たいそくに垂らして自然体の構えで立ち、ジーンは直立して雨を掌で感じるような動きを見せた。

 互いに最も集中出来る姿勢で、エーテル装と外気の境に意識を集中した。


「吹き飛ばすつもりで──」


 ぐっと気合いを入れると、エーテル装の外側が明度を増し、全体的に数ミリほど広がった……だけだった。

 毒液にはなんの影響もない。


「ダメだぁ~、全然動かな~い」 

 ジーンに関してはピクリとも動いていない。


「弱音を吐くのは早いぞ。さ、もう一度だ」


 パンパンと手を叩くアデルに従い、俺たちは何度も同じことを繰り返した。


 外部との境界に勢いよく、吹き飛ばすつもりで気合いを入れる。

 外部との境界に勢いよく、吹き飛ばすつもりで気合いを入れる。

 

 しかし全然上手くいかなかった。

 エーテル装の動く幅も、一定以上からは伸びなくなった。


 ジーンに至ってはもっと深刻だ。

 最初から微動だにしない無風状態。

「ほっ」

「やっ」

「はっ」

「よっ」

「ちょあさーっ」

 無駄に掛け声のバリエーションだけが増えていった。 


 

「ふぅむ……いきなりは難しいか……」

 アデルは眉間に皺を寄せた。

「……面倒だが、いちから説明してやるか」

 

 なるべく簡単に頼みます。


「最初に言った通り、転は応用形だ。張・装という基本から始まる。概念的な基本応用ではなく、中継点としてそこを必ず経由する必要がある」


 張・装を行っていなければ転は行えない。

 転ずる、という言葉の意味合い通りというわけだ。


「ふむふむ……」


 大人しく話を聞いていた俺に、突然アデルが振ってきた。


「質問だ。今ぬしの張っているエーテル装。それは一体どういう性質を持っている? 敵の攻撃を遮断した。液体の侵入を防いだ。なら空気はどうなっている? 光は熱は水は音は重力は? 臭いはどうなっている? すべてをシャットアウトしているか?」

「どういう性質って言われると難しいけど……そんなことしたら大変な目に遭うってことだけはわかるよ。だから答えはNOだ」


 空気を通さないんだったらすぐに窒息だ。

 光を通さないんだったら何も見えない。

 熱を通さないんだったら凍死、脱水症。

 水分を通さないんだったら、音を通さないんだったら、重力を通さないんだったら……とにかく色々大変だ。


「全部をシャットアウトしてるわけじゃない。通すべきものを通して、通すべきでないものを防いでる……ああそっか。マスクみたいなもんなのか……? 塵や埃や、細菌を伴う分泌物を通さず、空気みたいに必要なもののみ通す……。通す通さないの基準は……そうか、フィルターだ。エーテルにはフィルターのような性質がある。大っきくてゴテゴテしたのが張で、小さいけど高性能なのが装だ」


 アデルは鷹揚にうなずいた。


「その通りだ。フィルターの名は循環変転(リィ・ラーフキ)対抗変転(ムエール・ラーフキ)という。前者は外界から取り入れたものを活用する機能。後者は外界の異物を排除する機能だ」

「リフ……ラフ……?」

「名前はこの際どうでもよい」


 アデルは肩を竦めた。


「普段は無意識下で制御されている機能だ。呼吸や歩行に特別意識を払わぬように、ぬしらは考えることなくそれらの機能を使っている」


「そうなのか、けっこう俺たちすごいことしてたんだなあ……」

「あんまり実感わかないけどねえー」


 顔を見合わせる俺とジーン。


「ちなみに」

 アデルは得意げに口元を歪めた。

「老廃物などの、人体にとって不必要なものを排出分解したりもしている」

「お……お師匠様……それじゃあ……っ?」

 ジーンの声が驚愕に震えた。

「そうだ。水浴びせずとも臭わない」

「おおおおおおー……っ! すごい! すごいよお師匠様! それって全世界の女子の夢じゃないかっ!」

「……んふ、ようやく凄さがわかったか」


 盛り上がる女子ふたり。


「ともあれ、構造は理解出来たようだな」

 アデルはコホンと咳払いして、脱線から戻ってきた。

「最後に手本を見せよう。自分にとって害となるものを無意識下で排除してくれる対抗変転。これを意識的に活用するのだ。焼き尽くす、吹き飛ばす。そういった強烈な意をこめるのだ。呪いにも似た気持ちで思うのだ。水底すれすれに潜航するように、意識の糸を深く垂らせ──」


 アデルは服の袖をまくって白い腕を外気に晒した。

 細く優美な指先を地面に向けた。

 その先には、毒液が水溜りのようになっている一角があるのだが……。


「お、おいアデル……?」

「──お師匠様!?」


 アデルの指先が毒液に触れた──瞬間。


 シュボワッ!


 超高温の青白い炎に包まれたアデルの手が、瞬く間に毒液を蒸発させた。

 あとにはなんの変哲もない窪みだけが残った。

 

「すっげえ……!」


 俺は思わず息を呑んだ。

 熱波が風を生み、地面の上を這うように拡散していく。

 土中の水分が蒸発したのか、白い蒸気のようなものが風になびいている。

 装のおかげで熱は感じないが、おそらく素の状態なら耐え難いほどの熱量だったはずだ。


「お師匠様……手はなんともないのっ?」


 ジーンが心配して駆け寄るが、アデルは「……んふ」と気持ちよさげに目を細め、これ見よがしに腕をくるくる回した。


「炎をまとい、同時に炎を拒絶した。2つ同じ割合ならば怪我は負わぬ。それだけのことよ」


 アデルは俺に目を向けた。


「オウカンサソリの群生地で、ぬしも同じことをしたはずだ。目の先から超高温のレーザー光線を放ち、同時にそれを防ぐ壁をも生み出した」

「そうか、あの時俺がやったのは……」


 火裂東吾ひざきとうごの魔法を使ってオウカンサソリの群れを焼き払った──のではなく、慣れ親しんだ術式でイメージを補強し、転を行ったんだ。

 似てるようで、でも全然違うことをしてたんだ。


「意識する……深く細かく想像する……」

「……どうしたのタスク? 急にぶつぶつつぶやき出して」

「言葉、動き、自然現象……あらゆるものをつきつめて考える。武術家がけいを練るように、魔法使いがまじないを学ぶように。考えることが、繰り返すことが、装を強くする。それはやがて転となる……」

「タスク……?」


 俺は掌を上に向けた。

 半眼になり、意識を集中した。

 いつだったか、妙子が言っていたことを思い出した。


「……炎を作り出すには三つの要素が必要だ。可燃物・酸素・点火源。可燃物をエーテルとする。酸素をエーテルでかき集める。エーテル粒子を高速で擦り合わせて点火源とする──」


 ポッ……


 掌の上に、小さな炎が生まれた。

 青くちろちろと揺らめく、鬼火のような炎の塊。


「うわあああーっ!? 出来てるっ、タスク! 出来てるよ!」

 ジーンは大声を上げて驚いた。

「なんで!? なんでいきなり!? タスクなんで!?」


「ほお……」

 アデルは感心したように息を漏らした。


「わかったぜ。お師匠様の言う通りだ。より具体的に、細部まで徹底的にイメージするのがポイントだ。勁を練るって武術では言うんだけどさ。それと同じだ。殴る蹴るの動きを追求する。重心の位置、筋肉の締め具合、呼吸に歩法、発勁のタイミングに至るまで、完璧なイメージを作り上げる。俺は今まで何千回も何万回もそういうことを繰り返してきた。だから出来る。そしてさ……」


 炎が俺の全身に燃え移った。

 熱くはなかった。高揚感と共に燃え盛った。  

 迫り来る宵闇を追い払うように煌々と光を放ち、毒液を焼き尽くした。


「だからこそわかるんだ。こいつは武術の革命になる──」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ