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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第3部第2章:最果ての地より君を思う!!」

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「今日のジーンは一味違う!!」

 ~~~新堂助しんどうたすく~~~




 俺が目覚めるとジーンはすでに起きていて、せっせと朝食の準備をしていた。

 レーションセットの固形スープをお湯の沸いた鍋に入れ、お玉でかき回していた。


「おはよう。どうしたんだジーン、いつもは起こそうとしてもぐずって寝床から出て来ないおまえが、今日はどういう風の吹き回しだ?」


「ああ、おはよ……タスク……」


 振り向いた顔を見てぎょっとした。

 ぼさぼさの髪の毛、目の下には隈。

 パイロットスーツもあちこち泥だらけだった。


「お、おまえ昨夜何してたんだよ……っ?」


「何……何をしてたって……? あはははは……はあ……」


 ジーンは疲れ果てたような目で俺を見て……ため息をつくようにうつむくと、そのまま寝息を立て始めた。

 

「お、おいジーン……?」


「今夜……教えるから……今は……寝かせ……ぐう……」


 お玉を握りしめながら、いきなり寝落ちした。

 午後になるまで目覚めなかった。

 







 夜になって、いつものように特訓を開始しようとした俺を、ジーンが制止した。


「待ってタスク。今日はエーテル運法うんぽうの修行をしよう」


「うん?」


「いつもやってるだろ、タスク。早朝にひとりでさ」


「ああ……見てたのか」


「時々ね。今までは見てるだけだったんだけど、今日からはボクも混ぜてもらおうと思ってさ」


「おまえが?」


「うん」


「だっておまえ制御が出来ないって……や、だからこそ修行するんだろうけどさ。しかしあの威力のをもう一度ぶっ放されでもしたら、さすがに今度は止められないぞ……?」


「あのね。精霊銃エレメンタル・ガンプを撃つだけが修行じゃないからね? それにそんなの段階的には遥か先の話だよ。とにかくボクの場合は基礎が出来てないんだ、精霊銃を撃つための土台が出来てないんだよ。だから大出力に振り回されてあんな風になっちゃうんだよ」


「お、おう……なんだか優等生的というアスリート的というか……とにかくらしくない発言だな」


「うん、ボクは変わったんだタスク」


「え?」


 俺を見るジーンの目つきには、いつにない強い光がある。


「基礎練習をやろう、ふたりで一緒に。そのほうが教えるほうも楽なんだって」


「……楽? ……教える?」


「ホントはボクだけ鍛えればそれでいいかと思ったんだけど、あんまりにもドジでセンスが無くて発作的に殺したくなるから、抑止力としてひとり混ぜようって」


「誰だよそんな猟奇殺人者みたいなこと言うの……」


「お師匠様」


「だから誰だよそれ……」


「……んふ」

 

 聞き慣れた声が、体の内側でなく外側から聞こえた。

 振り向くと、綺麗な女の人がふわふわ宙に浮いていた。

 







 古風な喋り。

 ひらひら裾の長い服と、大人の女性の色香漂う豊満な肢体。

 俺が抱いていたアデルのイメージはほぼ当たっていたが、ひとつだけ予想を裏切られたことがあった。

 意外や意外、彼女はスパルタ教師だったのだ。


「まずは基本からだ。小僧、ぬしはエーテルを吸い込みまとえ」


 言われた通りにした。

 自然体の構えをとって大気中に存在するエーテルを体内に吸い込み、臍下丹田せいかたんでんを通して全身へ送り出した。


「そのまま、張り詰めろ」

 

 エーテルを漏らさず、力強く循環させた。

 やがてその流れはぐぐっと膨らみ、輝度を増して張り詰めた。

 俺の周囲に、半径1メートルほどの球を成した。


「よかろう」


 アデルはしかつめらしい顔でうなずくと、続いてジーンに目を向けた。


「次だ。小娘、ぬしは感じて浴びろ」


「はい、お師匠様」

 

 ジーンは素直にうなずくと、直立した。

 雨でも感じるように両の掌を空に向け、半眼になった。


 変化は次の瞬間に起こった。

 ジーンの全身から光が放たれた。

 身体の内側から外側へ、風を伴い噴き出した。

 俺のものとは違う、俺のものより出力のでかい、黄金色のまばゆい閃光だった。

 

「……御せよ。散じず溜め込め」


 低い声で、アデルが指示した。


「はい、お師匠様」


 ジーンは「くっ……」とわずかに顔をしかめ、エーテルを制御しようと試みた。

 数瞬の後、エーテルは輝度を減衰させ、ジーンの体の半径1メートルぐらいの球状で安定した。

 同時に風がやんだ。


「よかろう」


 アデルの雰囲気は固いままだ。

 労うでもなく、褒めるでもない。


「よいか? これが『グロット』だ。原点にして基本だ。あらゆる技と魔法はここから始まると心得よ」


「俺とジーンじゃずいぶんやり方が違ったような気がするけど……」


「それはそのままエーテルに対するイメージの違いだ。小僧は光を吸い込むと感じ、小娘は光を浴びると感じる。どちらでも構わん。おのがイメージしやすいようにすればよい」


「そんなもんかね……」


 俺たちの状態が完全に安定したのを見てとると、アデルは次の指示を出した。


「ふたりとも、球を縮めてみろ。もっと小さく、体の周り数センチの範囲にまで凝縮しろ」


「うう……っ」


「マジかよ難しいな……」


「凝縮だぞ? 凝縮。エーテルを散じることなく、そのままの濃度で縮めるのだ」


「ううう……っ?」


「なんちゅう難しい注文を……!」

 

 俺は数分もしたら出来たが、ジーンはなかなか出来なかった。

 出来たかと思った瞬間も何度かあったが、安定せずに弾け霧散した。

 そうこうしてるうちに、体力の限界に達してへたりこんだ。


「はあ……はあ……っ」 


 地面に手をつき、全身で息をしている。

 顎を伝った汗が、地面に落ちる。


「……っ」


 その光景に、俺はちょっと感動した。

 結果的には出来なかったけど、あの甘えんぼのジーンがここまでしただけでも偉い。

 本気で偉大な一歩だよと、そう思った。


「偉いぞジーン、もう休んでな」


 頭を撫でてやろうと、『張』を解いて手を伸ばした。


「……おい」


 アデルが鋭い声を出した。


「誰が『張』を解いてよいと言った?」


 マジな怒り顔を俺に向けた。


「もう一度だ。今すぐやれ」


「え……え……?」


「今すぐだ」


「あ、はい」


 有無を言わせぬ口調に俺は慌てて手をひっこめ、『張』を行った。

 今度はさっきより早く凝縮出来た。

 だけどジーンは……。


「いつまで座り込んでいるつもりだ? おい小娘──くびり殺すぞ?」


 脅し文句と同時、光を放つ無数の手が、ジーンの周りの地面から生えるように現れた。


「ひいいいいいっ?」


 ジーンは慌てて立ち上がった。

 必死になって張を行った。

 慣れてきたのか脅しのせいか、さっきより早い。


「んー……」


 俺は首をひねった。


 高圧的に脅し、出来るまでやらせる。

 泣き言を言う暇も与えず、ひたすら成功体験を積み上げることに集中させる。

 こういう指導法があるのは知ってるし、それが間違ってるとも思わない。


 だけど正直、向き不向きがあると思う。

 お袋やら御子神家の道場やらでしごかれ慣れてる俺ならともかく、こんなの普通の人がやられたら泣いちゃうよ。

 まして相手はあのジーンだぞ?  

 小さい頃から努力ということをしてこなくて、みんなに甘やかされて育ったジーンなんだぞ?

 こんなの耐えられるわけがない。

 いつか絶対崩壊する時がくる。


「なあアデル……」


「──待って、タスク」 


 アデルに物申そうとした俺を、ジーンが手で制した。


「……大丈夫。大丈夫だからさ、タスク。見ててよね? ボクの強くなるとこ」


 ジーンは弱々しく──だけどたしかに微笑んだ。


 なぜだかわからないけど、今日のジーンは一味違う。

 そこからさらに数分かかりはしたものの、自力で『張』を凝縮することに成功した。

 今度はすぐに弾けたりせず、足を震わせながらもすんでのところで維持している。


「……よかろう」


 アデルは変わらず冷たい表情で、


「その状態を『ザイン』という。身体をガードし、攻防の力を高めた状態のことだ」


「そういや大佐が使ってたなあ……」


 ケルンピアの宇宙港で戦った大佐は、『装』の状態で俺と戦っていた。

 俺の突き蹴りや、レーザー光線すら防いでた。


「しかし……この状態であんな激しい動きが出来るもんか?」


 大リーグボール養成ギプスを着けてるようなもんじゃないか。

 こんな状態であの体術……。

 すげえな大佐、あんた化け物だわ。


 ぞっとしている俺の気持ちを見透かしたかのようにアデルは、「そのまま走ってみろ」と指示してきた。


「マジすか……」


「冗談を言ってるように見えるか?」


「いえまったく見えません」


『装』してるだけでもめっちゃしんどいのに、このまま走る?

 しかも俺だけじゃなく、ジーンまでも?


「ぎぎぎぎぎ……っ」


 驚いたことにジーンは、俺よりも先に歩き出した。

 ものすごい筋肉痛の人みたいな動きで、だけど一歩一歩、確実に前に進んでいる。


「ジーン、おい……?」


「だだだだ……だい、じょう、ぶだよっ? こんんんなの、へーき、へっちゃらさっ」


 ジーンは俺に向かってにっこり強がってみせた。


「──寝るまでに1キロランニング。それが今日の課題だ」


「……げえっ!?」


「……っ!?」


 畳みかけるようなアデルの鬼の指導。

 しかし驚くべきことに、ジーンはそれすらも果たしてのけたのだ。


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