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Rise Doll Online  作者:
第一章 Play Game!
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第六話 桜

 夕方、部活動などに入っていない俺は夕飯の買い物をして帰路に着く。


 何時も通りに料理をして、妹ズの帰りを待ってから晩御飯にする。

 三人とも、何時もより急いで食事をとっている。

 きっとRDOを早くやりたいのだろう。


 後片付を終え、翌日の課題を軽くやる。

 朱里はちゃんとやっているのか。少し…いや、かなり心配だ。

 

 課題を終えパイプを吹かす。肺にハーブのすっきりとした煙が入ってくる、その空気をゆっくりと吐きだす。

 初めは半信半疑だった、このパイプだが。効果があるのかは分からないが、結構気に入った。吸った後は心が落ち着くのだ。



 ログインし、ゆっくりと目を開けると森の中に居た。

 木々の間から光が差している。昨日ログアウトした場所だ。

 体を起こすと、関節の節々が少し軋む。まぁ、こんな硬い地面に寝てれば痛くもなるだろう。

 軽く体を解して、現在地確認のためにマッピングメモを取り出す。

 

 地図を取り出し、マッピングメモを地図の上にかぶせる。

 すると、地図が淡く光り、メモが吸い込まれていく。

 地図を見ると、メモに書かれていたルートが新しく書きこまれている。


 この地図は魔道具で、マッピングメモを読み込ませることで、新しく地図にルートが書き込まれるものだ。まったく、めんどいな。


 今持っている地図はキリアの町周辺の地図だ。

 北の森のルートが半分ほど新たに書き込まれている。他のエリアの西東南はまだ何も書き込まれてはいない。


 地図をポーチに戻す。

 一旦町に戻ろうかどうしようか迷う。

 特にアイテムなどで困ってないので、もう少し散策することに。


 マッピングをしながら、適当に北に進んでいく。

 大きな木の根を乗り越えた時「ぐにゅ」と、何かを踏んだ感触と共に「はうぅ」と変な声が聞こえた。


 足元を見ると、何か変な物体…いや、よく見たら人間が足の下に居た。


「……趣味?」

「…いや、違います。出来れば退いてもらいたいのです」


 言われた通り、お尻に乗っかっている足を退ける。

 倒れてた人が、のっそりと起き上がる。どうやら女の子のようだ。

   

 女の子は桜のようなピンクのショートカットに黒い目、笑顔の似合いそうな明るい感じの女の子だ。

 白いシャツに茶色い皮の胸当を装備し、白と茶色のチェックのスカートに黒のロングブーツだ。


「…大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です」

「えっと、何やってたのかな?」

「それはですねぇ…話せば長くなりますけど…」


 女の子の話によると。

 

 β版の時に調合師をやっていて、この森の薬草の質が良かったので採りに来た。

 薬草採りに夢中で、マッピングを忘れていたために迷子になった。

 森の中を彷徨っているうちに、大きな魔物に出会って逃げるうちに力尽きた。

 

「それで、倒れてる所を俺が踏んだと…」

「そうです。本当にダメかと思いましたです」

「そうか…んで、その魔物ってどんなやつなんだ?」

「そうですね…黒くて大きなクマさんですよ」

「…そいつみたいな?」


 少女の後ろに指をさす、少女はぎこちない動作で振り向く。

 少女の真後ろに、大きな影影が立っていた。


 黒い毛に覆われている熊は女の子の3倍の大きさはありそうだ。真っ赤な目が光り、獰猛な牙がむき出しになっている。 

 

『LV13 ジャイアント・ベアー』


 なんだ、ただのデカいクマじゃないか。

 このゲームには魔物と魔獣が居る。魔物はゴブリンやオークなどの、空想上の生き物を基準としたもので、魔獣はクマや狼などの現実に存在する獣を基準としたものだ。

 基本的には分けるのがめんどくさいから、呼ぶときは総じて魔物と言うらしい。


 この魔獣は、基本的にそのエリアの魔物よりも弱い設定になってるらしい。

 ちなみに、素材は魔獣からしかドロップしない。


「……そうです、死んだふりです!さぁ、死んだふりをしましょう!!」


 そう言って、その場に倒れて死んだふりをする。

 女の子にずんずんと歩み寄っていくクマ。


「あのさぁ、残念だけどそれ迷信だから。しかも、ゲームの中で通用するの?」

「……助けてください」


 クマか…よく見ると可愛いなぁ。

 つぶらな瞳にもこもこの体、大きな肉球。

 クマに一歩近づく、クマが威嚇をして唸り声を上げる。

 

 クマが足元で倒れている女の子にちょっかいをかける。

 鋭く伸びた爪のある大きな手でガスガスとちょっかいを出している。

 傍から見ると、遊ばれているが、女の子のHPがどんどん減っていっている。


 流石に見て見ぬふりはできないので、しょうがなく助けることに。

 一歩踏み込むと、クマがこちらに注目する。軽く跳躍してクマの顎に膝蹴りをお見舞いする。

 傾いた巨体の足を掴み後方に投げ飛ばす。

 クマは大きな木の幹に頭からぶつかり動かなくなる。恐らく状態異常の気絶になったのだろう。

 

 気絶したクマに近寄り、大きな肉球を触る。

 お腹辺りの毛をふさふさと撫でる。


「おぉ…プニプニだぁ。毛ももふもふ……うし、堪能したし行くか」

「よ、余裕ですね」 

「じゃあ、行きますか」


 女の子の手を取り、起き上がらせる。

 女の子は少し薄汚れているが、笑顔を浮かべてお礼を言ってくる。


「助かりました、ありがとうございますです」 

「どういたしまして。俺はアオだ。よろしく」

「私はサクラです。こちらこそよろしくです」


 二人で並んで、森の中を町に向けて歩いていく。 

 

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