第十二話 ダンジョン Ⅳ
遅くなりました(ゝω・´★) 次回でダンジョンは終わりです…多分
薄暗い広い通路を五人で列になって走る。
走る先には陣形を組んだゴブリンが見える。前列にゴブリン・ナイト、後ろにゴブリン・メイジなどの後衛が控えている。流石に無視して行くことはできなさそうだ。
前衛のゴブリンの一体の足元にワイヤーナイフを刺し、巻き取りの力を利用して構えている盾に蹴りを放つ。若干の抵抗の後ゴブリンが吹き飛び、後ろのゴブリンを巻き込んで地面に転がる。前が空いたので中央に進みポーチから片手剣を取り出し詠唱中のゴブリンを切り倒す。
皆が抜けるまで牽制をして抑える。少しして皆が抜けたので、俺も直ぐに踵を返しワイヤーを天井に差し、巻き取りながら振り子の要領で一気に皆の前に飛ぶ。後ろから折ってくる音が聞こえるが、スズが上手く攻撃を防いでくれている。
広い通路を数分進むと、その頃には追ってきていた敵の姿は見えなかった。
通路の左右には木製の扉がある。その全てを片手間で開きながら進む。扉の中には何もなかったり、開けても壁だったりするが、全ての扉を開けることがこの先の扉を開ける鍵になっているのだ。
そのまま進むと大きな鉄製の扉が見えてきた。
「この扉の先に円形の広場があるから、皆は外周を回ってくれ。敵は俺が引き付けるから」
「結構な数が居るみたいだが、大丈夫か?」
コウが扉を見つめながら言う。どうやら何かのスキルか何かで敵の事を察知しているようだ。俺でもこの扉の先は音ぐらいしか分からないしな。まぁ、音から大体のことは察しがつくから困らないけどな。
扉の前で軽く休憩がてらポーション類を飲んで準備をする。
この疲労回復ポーションは結構便利だともう。なんせ体の疲れが結構取れるからな。まぁ、強いて言うならまずいことが問題だな。軍の『特製ドリンク』並に不味いからな…
「敵の方は問題ないと思うが、皆も気を付けろよ。いくらなんでも全部は引き付けられないだろうし」
「うん、皆は任せといてね。守って見せるから」
「アイ、回復と補助は、任せて」
「アリスはちゃんと運ぶから大丈夫!」
「うし、んじゃ行くか」
コウの掛け声で皆が扉の前で身構える。
皆の顔を見て、一拍おいてから扉を一気に開け放つ。
扉の中は半球状のドームのような構造で、天井も高くかなり広い構造だ。所々に設置され松明が淡く内部を照らしている。
所々に五、六体のゴブリンが焚き火を囲んで休んでいる。そんな焚き火がこの広い空間に等間隔に幾つもある。
俺達が扉を開けた音で、扉に近い所の焚き火のゴブリンが此方に気づいて顔を上げる。
「行くぞ」
そう言って広場の中央に向かいながら、道具屋で買っておいたかんしゃく玉を周囲に投げる。大きな破裂音に周囲の殆どのゴブリンが俺に注目した。
中央に着く頃には俺の周囲はゴブリンだらけになっていた。コウ達は最外周を近づいてきたゴブリンをいなしながら走っている。
アリス達が出口に着くまでには少し時間がかかりそうだ。
「さてと…少し相手をしてやりますか」
ポーチから木刀を二本取り出して構える。普通の武器だと不可抗力で倒してしまうかもしれないので、木工ギルドで作ってもらったのだ。
この木刀は攻撃力が無いので、力加減を間違えなければ殺すことはないと思う。しかもこの武器は打撃属性の武器なので、上手く使えば敵を吹き飛ばすことができる。
◆
「ヒール」
「サンキュ!…にしても、なるべく倒さないように進めとか…まぁ、倒さなくていいのは楽でいいけどな!」
「えっと、この先の仕掛けに敵が必要だからだよね?よく聞いてなかったけど」
「もぉ、シュリったら…」
アオが言うにはこの先の罠は感圧式の仕掛けらしく、一定以上の重さにより発動する罠らしい。その罠を発動するのにここのゴブリンが要るらしい。
にしても、ここのゴブリンのLVは20前後で二、三体なら楽に相手にできるが。流石に数が多いので避けて足止めぐらいが限界だ。
アオのステータスを見ると、やっぱりと言うか何と言うか…全くHPが減っていない。それどころかTPすら減っていない。スキル使ってないのか?…まぁ、アオだからって事で、納得できるぐらいには付き合いは長いからな。
それにしても、さっきからアオの方からゴブリンが吹き飛ぶのが見えるんだが。何やってるんだよあいつは…
◆
「ふむ…耐久度が低いのがネックだな。でも、結構使えるな」
手に持った柄だけになった木刀を捨てて、新しい木刀を新たに出す。周囲のゴブリンは既に半数近く吹き飛ばしておいたので、結構余裕がある。
そろそろコウ達が出口につ頃か。
周りの吹き飛ばしておいたゴブリンも起き上がってきている。
目の前の出口への直線上にいるゴブリンを見据える。数はそこまで多くないし、出口までもそこまで遠くない。
一番前にいるゴブリンの同鎧に木刀の柄で打撃を加える。ゴブリンはくの字になりながら後ろに吹き飛ぶ。俺はそのまま真っ直ぐに進み、目の前のゴブリンを木刀で吹き飛ばしながら出口に向かう。
時折弓や魔法が飛んでくるが、体を捻って避ける。
出口の扉は既に空いている。
『アオ、どうする?待ってるか?』
「いや、先に進んでくれ。角の扉の前で待っててくれ」
『了解』
扉の先に消えてくコウ達の背中を見ながら、周りの敵をなるべく引きつけて扉を出る。
先ほどの通路よりも一回り狭い通路を、敵との距離を保ちながら進む。
ぞろぞろと敵を引きつけて狭い通路を進んでいると、通路の突き当たりにコウ達がいるのが見える。その前の床に少し段差が付いている。この段差のある床が感圧式の罠だ。
多分敵を倒さずに逃げてきた場合の罠なのだろうが、今回は時間短縮のために使わせてもらおう。
コウ達に合流するのとほぼ同時に、後ろから「ガチャ」と音が聞こえた。その少し後に足元の地面が割れ、浮遊感に襲われる。
直ぐに魔法の「ライト」を唱えて光の玉を作り出し、穴の下に落とす。
穴はそこまで大きくないと思うが、人が五人一緒に落ちても少し余裕が有る。
下を見ると、多分十数秒で横穴を通るだろう。頃合を見て木刀を出す。
「よし、行くぞ」
「え、何を…て、うをぉ!?」
「フギャ?」
「キャッ!?」
コウ達を木刀で横穴に打ち込む。木刀は攻撃力が無いので、軽く振って当てた程度では前衛職にダメージは通らない。念の為にアリスは俺が抱っこして、ワイヤーナイフを使いそのまま横穴に入る。
スライダーのような穴を抜けると、少しの衝撃が体を襲ったがHPの減りから見て着地は成功だ。先に落ちていた三人の上に着地して、一番下になっているコウがめき声を出したが…まぁ、問題ないだろう。
落ちてきた場所は殆ど光がなく、ライトの魔法を使ってないと暗くてほとんど何も見えない。落ちた場所は少し広い広場になっていて、もう一箇所落ちてきた穴とは別の穴があるがそこは後回しだ。先に通路に向かう。
通路は人が一人通れるぐらいの狭さだ。俺は背が低…から問題ないが、コウは結構背が高いので若干しゃがんで移動する。
ライトの魔法で照らされた通路は、石がむき出しで少しじめっとしている。足元も水が足首ぐらいまである。ここでは雷属性の魔法は使わない方がいいだろう。まあ、アリスは火属性と風属性しか使ってないから問題ないだろうけど。
先を進むと少し開けた場所に出る。目の前には錆び付いた金属製の扉が見え、天井からは穴が空いており光が差している。この先が中ボス?の居る部屋だ。
さて、どうしますかね。
結構時間がやばいし、即効で終わらせるかな。