知らされる姫
御影の城の中を、千尋、悠、遙が足早に歩いている。
悠と遙はかなり目立つ容姿をしているが、それを気にする者はいない。御影家に仕える者は皆、彼らの本当の姿を知っているからだ。何を隠そう、二人は妖だ。かつて千尋が従えた。
普通、妖が城内をうろついていれば、物忌みだの穢れだの、いろいろ大変なものだ。しかし御影家の場合、妖と関わることなどしょっちゅうなので、誰も気にしない。
そんなわけで千尋は、お辞儀をしてくる者たちに軽く会釈しながら、焔の部屋の前まで来た。
焔の部屋はかなりの広さがある。
そして、彼は自分の部屋の中を、自分の趣味一色に飾っていた。はっきり言って、彼は趣味が悪い。おどろおどろしいというか、なんというか。甲冑の数はありえないほど多く、日本刀がそこかしこに飾ってある。極めつけは、こけし。何故かこけしが好きらしく、大小さまざまなこけしが飾ってある。
千尋は、正直この部屋が嫌いだ。怖い。
部屋の前に端座したまま逡巡している千尋を見かねて、悠が小声で話しかける。
「焔と栴桜に話しかけないのか?」
「・・・だって、この部屋怖いんだもん。」
「・・・・・・・・・。」
すがるような目で見られて、なにも言えなくなる悠。
そして、それを半眼で見ている遙。
「ロリコ・・・」
「黙れ。」
二人が無駄な問答をしている間に、千尋が意を決したらしい。姿勢をただし、焔と栴桜に話しかけた。
「父様、母様。千尋です。」
「おお、待っていたぞ。入りなさい。」
「はい。」
怖くない、怖くない、と念じつつ、彼女は部屋へ入る。
周りに飾ってあるものをなるべく見ないようにしながら、千尋は両親の前に端座する。彼女の後ろに悠と遙が座るのを待ち、焔が話し始めた。
「実は、随分前から決まっていたんだが・・・。」
いつもはっきりして、迫力のある父の妙に決まり悪そうな顔に、内心驚きながらも続きを待つ。
「一家も御影家にも子供は一人しかいない。だが、一家と同盟を結んだ先代たちの取り決めでな。裏切らないと言う意味合いもこめて、一と御影の子供を一人ずつ婿、または嫁としてそれぞれの家に嫁がせねばならぬのだ。」
それは知らなかったなぁ、と、千尋は人事のように思う。
焔の言葉を、栴桜が次ぐ。
「だから今代は、両家の長男、長女。つまり、千尋と聯君を結婚させることに決まっていたの。知らせるのが遅れて申し訳なかったわ。」
その説明に、おそらく誰もが抱くであろう疑問を持ち、千尋は口を開いた。
「では、家督はどうなるのですか?涼美が婿と言っていましたが・・・・・・。」
「婿というのは、形としてだけなのよ。今回は、特例としてこちらの家督も一家の家督も聯君が継ぐわ。形として・・・ね。実質、あなたと聯君の二人で、二つの家を動かしていくことになる。」
そう言って栴桜は、困ったように笑う。
「無理させちゃうと思うわ。ごめんなさい。よろしくお願いね。」
千尋は、それほど重く考えず、
「・・・はい。」
とうなずいた。
そこに、焔が口を挟む。
「顔合わせは明日だが、相続は一年後だ。まだ、心に余裕があってよいだろう。」
父の言葉にはい、と応え、千尋は部屋を後にした。
ホントに、読みにくくてもうしわけないです・・・。
どうしても入れなければいけない説明だったので・・・。
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