表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の契り、久遠の思ひ  作者: 焔涙
乱世の姫君
14/15

天狗と姫7

 「三人がここへたどり着くにはもう少しかかるだろうし・・・・・・」

「・・・え・・・・・・?」

 完全に自らの思考の海に沈んでいた聯は、女の言葉で現実に引き戻される。

 女の顔からは先ほどまでの表情は消え失せていて、今は感情の読めない笑みが浮かぶだけだ。

「・・・聞いてくれる?私の昔話。」

「・・・・・・昔話・・・?」

「ええ。・・・もう、随分時間がたってしまったわ・・・・・・。」

 そう言うと、彼女は懐から紅い勾玉を取り出した。よく見ると、それにはびっしりと文字が羅列されている。

「ここにはね・・・私の主の過去が詰まってる。主が、最も幸せだった時間が・・・・・・。私の主が狂ってしまった、すべての要因が・・・・・・。私が、あなたを含む、何人もの子供たちを攫った理由が・・・・・・」

 これは、約束の勾玉。

 あの日、光の中で。少年と妖が交わした、契りの証。

「それって、どういう・・・・・・?」

 そう尋ねたけれど、曖昧な問いかけに答える声はなく、この不可解な女天狗は、勾玉にふーっと息を吹きかけた。

 すると、勾玉が光を帯び始め、数秒の後、視界が真っ白に霞む。

「・・・・・・っ!?」

 聯はとっさに目を瞑って。

 次に目を開けたとき、眼前に広がっていたのは、先ほどまでとは全く違う光景だった。

 うっそうと生い茂る木々と、涼やかに重なる鳥たちの声。

 そこは、見紛うことなきただの森。少なくとも聯にはそう見える。

「これは・・・・・・?」

 事態が飲み込めず、半ば呆然と呟いた自分の声が、どこか遠いような気がした。

 そもそも、さっきまで近くにいたはずの女天狗はどこにいったのか。昔話とかなんとか言ってたくせに、と、客観的に見れば若干的外れな怒りがふつふつと湧き上がってくる。

 その、もう全く意味がわからない状況に、途方に暮れかけたその時、

開耶さくや様、牛若丸!」

 聞き覚えのある声にはっとして振り返った。

 やはりそうだ。

 女天狗がこちらに向かって走ってきている。ただ、先ほどよりも髪が短く、服装も違う。

 それに何より、表情が明るい。

 だが、そんなことを気にしている余裕は、残念ながら聯には無かった。

 彼女は少なくとも味方ではないはずなのだが、知っている顔があることにひどく安堵する。反面、自分は一体どれだけ臆病なのかと、自虐のため息を心の中でついた。

「あの、これは一体・・・・・・」

 緩みかけた口元を抑えながら、状況の説明を求めようとしたのだが、

--------------スッ、、、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 たっぷり数秒間の間をおいて、聯が間の抜けた声を出した。

 だが、それも仕方のないことだ。

 だって、女天狗が。彼の体をすり抜けたのだから。

 何の違和感もなく。

 僅かな痛みさえ感じさせずに。

「~~~~~っ!?」

 聯の背筋を、氷解がすべりおりる。

 どういうことだ。

 何だ今のは。

 え?何?は?叫んでもいいですか??

 聯は、もう何がなんだか完全にわからなくなってしまい、いっきに心細さがはね上がった。

 しかも、錯乱したために、女天狗が先ほどまでと違うということにまだ気づかない。

 彼は、半ば放心状態で女天狗が駆けて行った方向を見る。

「・・・・・・・・・・っ」

 そして声を失った。

 さっきから驚いてばかりだ。寿命の2、3年は縮んだのではないか。

 そこには、二人の人がいた。といっても、ただの人間なら、さすがの聯も驚かない。

 一人は少年だ。と思う。顔は少女にしか見えないのだが、男装(と言うのも変だが)をしているので、

おそらく少年だろう。

 問題はもう一人。先ほど女天狗に‘牛若丸’と呼ばれていたのがあの少年だとすると、‘開耶’と呼ばれていた人物だ。少しくせのある長い髪と服装、女天狗ほどではないが整った容貌から、女性であることは明白なのだが。その背中には、漆黒の翼がはえていた。

 まさかと思い目をこすってみるが、やはり何も変わらない。

「・・・・・・はぁ。」

 立て続けに理解不能な出来事が起こると、人間は恐怖することをやめてしまうらしい。

 突如、妙に冷静になり、彼女が妖だとしたら翼があっても不思議ではないじゃないか、と落ち着いてしまった。というか、開き直った。

 幸い、向こうにはこちらが見えないようだし、こうなったら暫くここにいてやろうという気になる。

 すると、まるでそうなるのを待っていたかのように、彼らが話し始めた。

「ああ、秋莢あきさや、おかえり。」

 牛若丸が言った。

 どうやら女天狗は秋莢という名らしい。

「ただいま。・・・ただいま帰りました、開耶様。」

 秋莢は、一度牛若丸に笑みかけた後、開耶に向かい仰々しく礼をとる。

「うん、おかえり、秋莢。・・・それで、どうだった?愛宕山あたごやまの様子。」

「はい。愛宕の大天狗殿も、お変わりなく。平和すぎてつまらないと仰っておりました。」

「ふふ、あの人らしいわね。もういい歳なんだし、平和すぎて困ることもないでしょうに。」

「いい歳って言っても・・・妖に寿命なんてないんだろう?姿も変わらないって聞いたし。それに、実年齢でいえば、開耶とそんなに変わらないとか秋莢が言ってたよ。」

「百歳違えば全然違うわよ!・・・まあ確かに、私が鞍馬の大天狗と呼ばれ始めてからの時間と比べたら、あんまり変わらないかもしれないけど・・・・・・」

 開耶の言葉に、聯は軽く目を見張る。

 彼女がかの有名な鞍馬の大天狗か。鞍馬の大天狗は女だったのか。というか、それではここは鞍馬山だとでもいうのか。

「開耶様は元々が人であられるので、普通の妖と年齢意識が違うのかもしれませんね。」

「俺がここにきて四年たつけど、二人ともなんにも変わんないねぇ。」

「まぁ、妖だからねぇ。」

 秋莢が何気なく答えた。

 その瞬間、

ザァァァァァァ---------------------------・・・。

 急に世界が暗転する。

「うゎっ!?」

 それと同時に、麻痺していた恐怖が戻ってきた。

 まったく今日は良い事がない。

 反射的に目をつぶって、けれど、周囲の空気が変わった事に敏感に反応する。

 そして目を開けると、そこは見覚えのある薄暗がりだった。

「どうだった?・・・って言っても、まだ途中だからわからないでしょうけど。」

 声に反応して顔を上げれば、そこには女天狗、秋莢がいる。

 ただ、彼女は景色が変わる前よりも髪がのび、表情に翳がある。

 聯はそこで初めて、あの森の中の風景が、何かの術で見せられた夢か幻だということに気づいた。

「今のは・・・・・・?」

 聯のいぶかしげな問いに、秋莢は淡く笑む。

「言ったでしょう?昔話って。・・・今のは、主が最も幸せだった頃の記憶。」

「貴女の主というのは、鞍馬の大天狗・・・・・・。」

「ええ、そうよ。私が仕えるのは、私の生涯でただ一人、あの方だけよ・・・・・・。」

 秋莢の口元に刻まれた笑みが、少しだけ哀しげに見えた。

「さて、まだもう少しあるわ。説明が足りてなかったと思って、一度戻したのよ。この勾玉が見せるのは、あくまでも幻。本当にその場にいるような感覚になるけれど、決して干渉はできない。」

 それだけ憶えておいて、と言いおいて、彼女は再び勾玉に息を吹きかける。

 仄暗くなっていた勾玉の光が、再び明るくなった。

 視界が再び、真っ白に霞んだ。

受験が終わるまで更新遅れます・・・多分・・・。

すんません・・・(_ _lll)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ