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永遠の契り、久遠の思ひ  作者: 焔涙
乱世の姫君
13/15

天狗と姫6

 約束を、した。

 約束を、したんだ。

 それは、たがうことのない誓いのはずで。

 それなのに・・・・・・。

「・・・嘘つき・・・裏切り者・・・・・・っ!」

 どれほど憎もうとも。

 どれほど蔑もうとも。

 どれほどうらもうとも。

 心に落ちた暖かな光だけは、どうしても。

 消えなかった。

 消せなかった。

「・・・大好きだったのに・・・・・・」

 大好きだったのに。

 大好きだったのに。

 まだ、大好きなのに。

 呟きは、むなしく虚空に消えて。











 「ここよ。」

そう言って千尋が指差したのは、一家の城下で最も大きな神社。の隣に、ついでのように建てられている稲荷だった。

 小さな狐の石像と、小さな賽銭箱。申し訳程度に建てられた粗末な社の前に、誰一人通れないであろう鳥居。

「ここを中心に異界が広がってるのか?」

たずねたのは悠だ。

「多分ね。神社の大小はあんまり関係ないし、ここであってるはずよ。」

 千尋の言葉に遙が反応する。

「妖なのに、神が宿る場所を中心に異界を形作るのね。」

 妖と神は対極に位置する存在だ。通常、それらは決して交わらない。

 たとえるなら、陰陽対極図の光と影のように。

「私は妖じゃないからよくわかんないけど、逆じゃないかと思うの。信仰心がないからこそ、なんの気兼ねもなく媒体として利用できるんじゃない?」

 千尋はそう言いながら、なにかをゴソゴソと取り出している。

 それは札だ。

 妖を退治するときとは違う種類の、札。

 千尋には妖と違って信仰心がある。

 祟られることへの恐怖だってある。

 礼は怠らない。

 札を稲荷の方へ向け、静かに唱え始める。

御食津神みけつかみ三狐神みけつかみ倉稲魂神うかのみたまのかみ。どうか非礼を許し給え。高天原たかまがはらにおわす伊邪那岐命いざなぎのみこと伊邪那美命いざなみのみことより生まれし、八百万やおよろずの神々よ。天照大神あまてらすおおみかみ月読命つくよみのみこと須佐之男命すさのおのみことが為に在る我がもとへ、僅かの間、僅かばかり、どうか力を授け給え。」

 札が仄蒼い炎に包まれ、数秒とたたず燃え尽きる。

 神は気まぐれだ。

 力を分け与えてくれるかは、運しだい。

 すると、千尋のもとへ、透き通っていて、それでいて威圧感をただよわせる霊力が集まってくるのを、感じる。

 千尋は知らず、口元に笑みを乗せていた。

 霊力の少ない者が受ければ死んでしまうような量と密度の霊力だが、彼女はそれをしっかり受け止めた。

「それじゃ行くわよ。」

 掛け声とともに、千尋は両の手を胸の前へと突き出す。

 彼女の一連のしぐさとほぼ同時、悠と遙が妖の姿に変化した。

「闘!!!」

 言霊に乗せ、稲荷に向けて放たれた莫大な霊力は、凄まじい突風を巻き起こし、砂を巻き上げ、少しの間三人の視界を奪う。

 突風がおさまり、稲荷の方を向くと、そこに稲荷は見当たらなかった。

 稲荷があった場所には、空間が一部分崩れ落ちたのではないかと思わせるような、闇よりも暗い色をした大穴が口を開けていて。

「ほんとにこじ開けやがった・・・・・・」

 悠が、あっけに取られた様子で、半ば独り言のように呟く。

「よくもまあ、あんな急ごしらえの祈祷で神の加護をえられたもんねぇ・・・。」

 遙は完全に呆れている。

 とうの千尋は、何でもないかのようにえへへと笑って、

「ほら、行こうよ。」

と言った。

「おう。」

「そうね。」

 そうして三人は、大きな闇へと、一歩を踏み出した。











 そこは、どこまで続くかわからない遥か地平線まで闇に包まれた、人の世とは隔絶された場所。

 「あら?」

女が、顔をあげた。

「・・・どうか、したんですか・・・・・・?」

「ん?」

答えが返ってくることを期待してはいなかったが、彼の、聯の質問に対し、彼女は答え始める。

「誰か・・・来たみたい。」

 彼女はそこで一度言葉を切り、辺りをうかがうように目を閉じる。

「・・・人間が一人と・・・妖が・・・二人・・・・・・。」

 それを聞いて、聯の頭をよぎったのは、一月ほど前に出会ったばかりの少女と、彼女に付き従う妖。

 自分より少し年上の少女は、臆病な自分と違って、強気で、頭がよくて、優しくて。おまけに、霊力も高いのだという。

「・・・多分・・・貴方と一緒にいた人たちじゃないかしら・・・。」

「!]

 聯の頭中を読み取ったかのような言葉に、彼はハッとして顔を上げる。そして、思いきり女の顔を凝視したまま固まってしまった。

 彼女が、聯の想像とあまりに違う表情をしていたから。

 今にも泣きそうな、とても悲しそうな。それでいて、少しだけ嬉しそうな。さまざまな感情がない交ぜになった、微笑。

 それは、まるで。

 まるで、優しすぎたしのびのようだと、聯は思った。

 いや、実際にそんな忍を見たことはないのだけれど。

 誰かを、殺したくなくて。仲間を、裏切りたくなくて。けれど、主君の命令は絶対で。

 そんなしがらみに縛られた忍は、こんな顔をするのではないかと、ふと思ったのだ。

 しかし実際の女の真意は、彼女にしかわからない。

 無駄な想像をするよりも、と、聯はその思考を頭の隅に追いやる。

 そして思い出すのは、自らの、許婚の顔だ。

 今、彼女が自分を助けに来ているのだという。本当は、助けるのは、男の仕事のはずなのに。千尋は、聯を、助けに来ているのだと。

 それは、素直に嬉しくて。

 少しだけ心配で。

 そして、少しだけ、悔しかった。

 

 

おそくなりました!!!!

やっぱり書くの難しいですね・・・・・・www


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