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永遠の契り、久遠の思ひ  作者: 焔涙
乱世の姫君
11/15

天狗と姫4

 「それでは、こちらでお待ち下さい。」

そう言って平伏し、ふすまを閉めた女中に笑顔をむけると、千尋はそのまま思考の海に沈む。

 なぜ聯は消えたのか。それも、あの場にいた三人の誰にも気づかれず、一瞬で。

 おそらくあれが神隠しだ。原因がわからないはずである。ほとんど間違いなく、人の仕業しわざではないだろう。

 千尋には、ひとつ気になっていることがあった。

 彼女だけではない。多分、悠も遙も思っていること。

 聯が消える直前に感じた、微かな妖気。状況からかんがみても、神隠しに関係のある可能性は高い。本当に微弱な妖気だったが、悠や遙ほど力のある妖ならば、妖気を隠すこともできる。

 しかし、もしも本当にそれほど力のある妖ならば。

「そんなのを相手にするのはちょっと・・・」

「きついわよねぇ。」

「・・・・・・」

「・・・息ピッタリだったぞ?」

 一瞬、なんともいえぬ雰囲気を漂わせたが、悠の一言で三人同時に吹き出す。

「・・・っはは。まさか、全員同じこと考えてるとはねぇ。」

「全くだな。珍しく遙が静かだと思ったら。」

「一言余計よ?悠。」

「でも、そりゃあまあ、み~んな同じこと考える気持ちもわかるけどね。」

「まさか全員気づかないとはなぁ・・・神隠し。」

「この遠江とおとうみ遙人生最大の不覚だわ・・・。」

 そういえば遙って何歳なんだろう、という全く関係ない疑問が浮かんだが、それはまた今度聞くことにして、千尋はスッと表情を引き締める。

「・・・ねえ、あのね、悠、遙。私さっき・・・女の人とすれ違ったんだけど・・・。」

 そこでいったん言葉をとめ、二人の顔色を窺うようなしぐさをとった。だが、悠と遙が無言で続きを促してくるので、何も言わずに再び話し始める。

「その時は、少し違和感を感じたくらいで、よくわかんなかった。でも、今思うと、女天狗じゃなかったかと思うの。」

 透き通るような、妖しい雰囲気を秘めた美貌も。まとっていた衣も。文献にあるような女天狗のそれと一致する。

 美しい黒髪を膝まで伸ばし、綺麗に化粧をしていた。そして、緋色の袴、小袖五ツ衣、薄絹という出で立ち。その道に少し詳しい者ならば、誰もが一度は聞いたことがある。

 神隠しの犯人が天狗ならば、妖気のことも説明がつく。

 彼女の説明に、悠がひとつうなずき、口を開いた。

「俺は気づかなかったが・・・お前が言うなら間違いないんだろう。」

彼の言葉を、今度は遙が継いだ。

「少なくとも、これから調べていくうえでは、犯人は女天狗ということを前提にしたら?」

「そうね。」

 ちょうどまとまったとき、襖が開いて、栴蘭と閻禾が姿をあらわした。

 千尋の表情が、ほんの少しだけ強ばる。

「あ、あの・・・申し訳ありません。聯が・・・神隠しに・・・・・・」

僅かに目を伏せている彼女の不安を知ってか知らずか、栴蘭は、前に会ったときと何も変わらぬ笑顔を浮かべる。

「いやいや、預けると言ったのはこちらなんだ。そんなに謝ることではないよ。」

その言葉に、千尋がハッとして顔をあげると、栴蘭と思いきり目があった。

「・・・・・・!」

そして、彼の表情を見て、思わず目を見開いてしまう。

 彼の瞳は、何の不安も映していなくて。

 ただまっすぐ千尋を見つめ、微笑んでいた。

 彼女を信頼しきっていると、そう言わんばかりの凛とした表情で。

「解決できるのだろう?」

ただ一言、そう尋ねた。

 尋ねるというより、確認に近かったかもしれない。

「・・・・・・。」

 千尋は正直、ものすごく怒られるんじゃないかと思っていた。だってきっと、親というのは、子供を何よりも大切に思っているものだから。自分にはまだ、よくわからないけれど。

 随分前に、祗園の九尾が言っていた言葉を思い出す。

----------親なんてのは、単純な生き物でねぇ。子供のためなら、命を簡単に捨てちまうようなやつらばかりさ。

 きっとそれは、本当なのだろう。

 もしかしたら、栴蘭だって、すごく不安なのかもしれない。

 けれど、それを全く顔に出さず、千尋に任せてくれていることが、ただ単純に嬉しかった。

 だから。

 彼女も、栴蘭の瞳をまっすぐに見つめる。

 一点の曇りもない、自信にみちた瞳で。

 自信にみちた表情で。

 口元に、僅かな笑みさえ浮かべて。

「はい。必ず。」

はっきりと、そう言った。

 彼女の言葉を聞いた栴蘭は、数度瞬まばたきをしたあと、悪戯っぽく笑んで大仰に嘆息する。

「だめだぞー?千尋ちゃん。そんな簡単に断言しちゃあ。もしそれで失敗したら、できるって言ったじゃなーい!ってことになりかねないだろ?・・・ま、失敗しなけりゃいいんだけどな!」

「最後までカッコイイ雰囲気で終われないんですか?あなたは・・・。」

 先ほどまで、後ろで黙って端座していた閻禾が、肩をすくめて苦笑する。

 そして、千尋の方に向き直り、

「そこまで言うんだもの。もう、策はあるのよね。ウチのもやしっ子をよろしくお願いします。」

と笑った。

 千尋たちは、それから半刻とたたないうちに城を発った。
















 「・・・かっこよかったですよ。」

閻禾のいたわるような声音に栴蘭は、なんとも言い表せぬ曖昧な苦笑を浮かべる。

「そうかぁ?・・・なら、いいんだが・・・。頼むぜー、千尋ちゃん。もしものことがあったら、俺は・・・俺たちは・・・。君を、許せなくなっちまう。」

 千尋は何も悪くない。けれど、親とは、そういうものだ。

「・・・本当に、応援してあげたくなる子だわ。」

閻禾の言葉に、栴蘭も心からうなずく。

「ああ。強くて、優しくて、聡明で。とてもいい子だ。」





















 ずっと、昔の話。

「必ず、もう一度、貴女あなたに会いにくるよ。」

「約束よ?・・・牛若・・・。」

必ず、もう一度。

この場所で、逢おう。

 

二週間であげる予定だったのに・・・。

テストとかぶるなんてええええええええええっっ!!

・・・というかんじな今回でした☆


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